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上流階級の白人の娘が、突然黒人の青年を連れてきて、結婚すると言い出します。アメリカ映画『招かれざる客』、Guess, Who's Coming to Dinner の一場面です。両親は驚きます。父親はリベラル派を標榜している新聞社の社長です。総論賛成、各論反対を絵に描いたようなお話です。悲痛な表情で、“They don't have a dog's chance.” と父親は自分の書斎で独白します。長い熟考の中、この短いせりふは、効果的であり印象的です。
否定形でしか使わない慣用句です。「お先真っ暗、未来はない」に当たります。 「犬のチャンスはない」ということは、犬はしょせん犬で、いかなる幸運に恵まれても人間を超えることはありません。最大限うまくいっても、たかが知れている犬の幸運、それさえもない。お先真っ暗、将来はない、未来なし、というわけです。
似た表現に “treat someone like a dog”があります。「ひどい扱いをする」という意味です。記憶にある方もいるでしょうが、曽我ひとみさんのご主人 Jenkins さんが、佐渡で記者会見の時 “I was treated like a dog.”と話していました。なるほど、犬はすべて主人の命ずるまま行動をしなくてはなりません。選択権はないのです。行くところも、食べるものも、住むところも、結婚相手もご主人の許可が必要です。いかに厚遇されても、自らの意思で決定し、行動することはできません。人間としての尊厳は認められないのです。主人の顔色をうかがいつつ暮らさねばなりません。 しかし、“I was treated like a dog.”と言った Jenkins さんのコメントを言葉通り、「犬のように扱われた」と日本語にすると、何かニュアンスが違うような気がします。そもそも彼がこの表現を使ったとき、頭の中に犬は存在していなかったはずです。なぜなら、これも慣用句だからです。
LDELC は、“to treat someone like a dog”を“to treat someone very badly”、『アドバンスト・フェイバリット英和辞典』では、「〈人を〉ひどく扱う、じゃけんにする」、『ウィズダム英和辞典』では、「人を粗末に扱う」としています。
参考資料
1 Longman Dictionary of English Language and Culture ,1998, Longman
2『アドバンスト・フェイバリット英和辞典』2003、東京書籍
3『ウィズダム英和辞典』2003、三省堂
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