コミュニケーションを図る楽しさを味わわせる授業づくり

東京都八王子市立鑓水小学校 吉田 裕介

1はじめに

本校では平成30年度,3,4年生が年間15時間,5,6年生が年間50時間,外国語活動の授業を実施している。ALTが,3,4年生には全時間T2として入り,Let’s Try!1&2を,5,6年生には35時間分 T2として入り,Hi,friends!1&2を行っている。We Can!1&2は,学級担任1人で15時間分を行っている。3つの教材とも,デジタル教材が使用できるよう市内全校で整備され,指導で活用している。

授業において,私は外国語を使ってコミュニケーションを図ろうとする意欲を児童にもたせるために,コミュニケーションを図る楽しさを,授業の中で味わわせたいと考えている。本単元を実践した際の5年生は,新しく始まった外国語活動の授業に対して意欲的に取り組んでおり,勝敗のつくゲームや,ALTとのやりとりを楽しんでいる様子が見られていた。しかし,インタビュー活動等では,恥ずかしさから同性の友達とばかり聞き合い,あまり積極的でないのが課題であった。他教科の様子からも,自己表現が苦手な児童が多かったので,自分の考えをしっかりともち,相手の考えにも興味をもって,男女が関わり合える活動を取り入れていきたいと考えた。

2授業実践例

(1)単元名

“What do you like?”「友だちにインタビューしよう」 Hi, friends!1 Lesson 5

※“What do you like?”「何がすき?」(Let’s Try!1 Unit5)にも対応すると思われる。

(2)単元の目標

  1. ①好きなものについて,積極的に尋ねたり答えたりしようとする。【コミュニケーションへの関心・意欲・態度】
  2. ②色や形,好きなものは何かを尋ねる表現に慣れ親しむ。【外国語への慣れ親しみ】
  3. ③日本語と英語の音の違いに気付く。【言語や文化に関する気付き】

(3)単元の評価規準

ア コミュニケーションへの
関心・意欲・態度
イ 外国語への慣れ親しみウ 言語や文化に関する気付き
  1. ①積極的にゲームやアクティビティに取り組んでいる。
  2. ②好きな色や形について,話したり聞いたりしている。
  1. ①色や形の言い方等,本単元で扱う言葉や表現を使おうとしている。
  1. ①日本語の中の外来語と,元の英語との音の違いに気付いている。

(4)単元の指導計画と評価計画

ねらい主な学習活動評価規準
1日本語と英語の音の違いに気付き,色や形の言い方を知る。 ・色や形の言い方を知る。
・チャンツ
・キーワードゲーム
・Let’s Listen
ア①

2色や形の言い方に慣れ親しみ,好きなものは何かを尋ねる表現を知る。 ・好きなものは何かを尋ねる表現を知る。
・チャンツ
・キーワードゲーム
(宿題)オリジナルTシャツ描き
ア①②
3色や形の言い方や,好きなものは何かを尋ねる表現に慣れ親しむ。・チャンツ
・キーワードゲーム
・Tシャツインタビュー(前半)
(宿題)好きなものアンケート記入
ア①②
4好きなものについて,積極的に尋ねたり答えたりしようとする・チャンツ
・Tシャツインタビュー(後半)
・クラスランキング
ア①②

本単元では,自分や相手の好きなものについて,尋ねたり答えたりすることをねらいとしている。このねらいを達成するために,Hi, friends! 1では,前単元でI like ~.の言い方を学習し,本単元でWhat do you like?の表現を学習するという段取りになっている。これは新学習指導要領対応小学校外国語活動教材Let’s Try!1でも,同様の流れになっている。

色や形の言い方については,日常生活において身近な表現である。すでに外来語として知っている言い方も多いが,学習していく中で日本語と英語との音の違いにも気付かせる。また,色や形だけでなく,既習の果物やスポーツの言い方にも触れ,What ○○ do you like?の表現に慣れ親しませていく。同教材We Can!で設定されている「Small Talk」の活動は,既習表現を繰り返し使用できるようにしてその定着を図ることや,対話の続け方を指導することが目的とされている。単語を変えるだけで会話をさらに続けることができるので,定着させていきたい表現である。

自分や友達の好きなものという題材は,話したい・聞きたいという学習意欲が高まる題材である。第4時までにチャンツやアクティビティ等で,各単語や尋ねる表現に十分慣れ親しませ,単元のメインアクティビティ(クラスランキング)に臨むことで,コミュニケーションを図る楽しさを味わわせたい。

(5)主な活動の紹介

○チャンツ

Hi,friends!1 p20 Let’s Chantを行う。最初は色,次に食べ物,最後に動物と,パターンを変えながらWhat ○○ do you like?の表現に慣れ親しませる。クラス全体で行うだけでなく,班ごと,列ごと,男女別等,変化をつけて発話させるようにする。Let‘s Try!やWe Can!のデジタル教材では,再生方法のバリエーションが増え,「ゆっくり」「音声なし」「字幕なし」を選択することができるので,授業を行うたびに難易度を上げていくのもよい。

また,チャンツや歌は,活動の切り替えのサインとしても有効である。「チャンツはチャンツの時間だけ」という考え方ではもったいないので,年度初めに指導しておけば,歩き回る活動でも児童は音が鳴れば自分の席に戻るようになる。自分の席に戻る際に口ずさみながら戻り,チャンツの残りは自分の席でするようになってくる。それが定着してくれば,教師が大きな声で自席に戻る指示を出す必要も無くなってくる。

○キーワードゲーム(We Can!1学習指導案例Unit6 Lesson1も参照されたい。)

あらかじめキーワードを決め,キーワード以外の語であれば復唱し,キーワードであれば復唱せずに,早い者勝ちでペアの間に置いた消しゴムを取り合う,勝敗のつくゲームである。1語に慣れてきたら,yellow starのように2語でゲームを行い,変化をつけながら集中して取り組ませる。

私はどの単元でも,インプットの手段の一つとして,単語や表現を反復練習したいときにこの活動を取り入れている。テンポを速くしたり遅くしたり,キーワードを2つ以上にしたり,勝ったら前,負けたら後ろに席を移動して,毎回ペアを変えたりしても楽しいし,学習した表現が増えてくれば,途中からキーフレーズゲーム(We Can!1学習指導案例Unit5 Lesson2参照)に変更したりしても面白い。そういった,学級内でのローカルルールを作りやすいところも,私がこのゲームを好きな理由の1つである。

キーワードゲームに限らず,いつでもできるゲームやアクティビティを教師が自分の中で何か1つでも持っておくようにする。それを繰り返し行っていけば,単元が変わって扱う言語材料が変わっても,基本的なルールに変わりはないので,児童がすぐ活動を理解し取り組むことができる。そういうものをいくつか持てるようになると,それを組み合わせることで1時間・1単元の指導計画を組みやすくなるので,授業準備にかける時間を少なくしていくこともできる。学級担任は児童についてよく理解しているので,何が自分の学級に合っているのか,考えて工夫するのが得意である。そういうところも,学級担任が外国語活動の授業を行うことの大きな意義だといえる。

○Tシャツインタビュー

児童が自分で考えたTシャツのデザインを,ワークシートに一覧にして見られるようにし,インタビューを通して誰がどんなTシャツを描いたのか明らかにしていく活動である。勝ち負けがつく活動ではない。役割を,聞き手と話し手(描き手)との半分に分け,聞き手は自由に動いて話し手にインタビューしていく。いくつか質問をして,話し手がどのTシャツをデザインしたのかを当てて,正解したら,次の話し手へインタビューをする。これを繰り返す。

インタビューシート①
photo13_01

(例)A/B:Hi.
A:What color do you like?
B:I like green.
A:What shape do you like?
B:I like stars.
A:How many stars?
B:One.
A:(絵を指したり番号を言ったりする)
B:Yes./No.
A/B:Bye.

聞き手にとっては,相手がどんなデザインをしたのか予想しながらインタビューすることが,話し手にとっては自分が描いたTシャツを紹介したいということが,聞きたい・伝えたい内容である。コミュニケーションを図る楽しさを味わわせるには,児童にとって聞きたい・伝えたい内容があることが,活動を設定する上で大事である。

○クラスランキング

インタビューシート②
photo13_01

児童がWhat ○○ do you like? の表現を使い,多くの人にインタビューをする。集めた情報を基に,班でクラスランキングを予想して楽しむ活動である。何について聞き合うかは,児童に聞いて決定する(アンケートをとった結果,今回は「①色②スポーツ③動物」に決定した)。教師によって決められた内容だけでなく,児童が自分たちの聞きたいことを尋ね合うことで,コミュニケーションの楽しさを感じられる活動にしたいと考えた。インタビュー時間には限りがあるため,作戦タイムを取り,どのように分担すればランキングを予想するのに十分な情報が得られるか,班で考えさせる時間にするとよい。

ただ,好きなものを考えたり,自分でTシャツをデザインしたりすると,そのことに授業時間を取られすぎて,1時間あたりの発話量が減ってしまうことがよくある。そういったことが無いよう,作業時間は家庭学習にして,授業時間は活動時間として発話量を確保するよう,宿題として取り組ませることも考えられる。ランキングとしての正解が確かなものであるように,アンケートを宿題として事前に取っておき,教師は結果を予め把握しておくねらいもある。

3おわりに

成果や課題を,以下にまとめた。

  • ○Tシャツインタビューでは,自分がデザインしたTシャツについて,相手からの質問に積極的に答えようとする姿や,聞き手は聞き終わるとすぐに次の相手を探し,男女関係なくインタビューする姿が多く見られた。クラスランキングを予想するために,「①多くの人にインタビューをして,多くの情報を集める必要性がある。」「②そのインタビューで,今までに練習してきた表現を使う。」という学習の流れを実感できるよう,単元の最終課題を先に提示したことで,児童は目的意識をもち主体的に活動することができた。

  • △コミュニケーションを楽しむというよりは,ただ正解することを楽しんでいる様子も見られた。コミュニケーションを図ることへの児童への意識付けが課題となった。

この単元の内容は,新教材では第5学年(We Can!)ではなく,第3学年(Let‘s Try!)の内容になる。外国語活動の授業を行うにあたり,大きな課題の1つとなっているのが,教材・教具の整備である。今まで5,6年生の外国語活動で作成・使用してきた教材・教具が,「遺産」ではなく「財産」として3~6年生の授業でこれからも活用できるよう,Hi,friends!とLet’s Try!,We Can!の関連を考え,整理していきたい。

平成30年度から移行期間になり,5,6年生では「読むこと」「書くこと」の活動も入ってきた。今回の単元であれば,「書く活動」をさせるにあたり,We Can!2 Unit1のワークシートが,おおいに活用できることを付記しておく。

【参考文献・サイト】
・Hi,friends!, We can!, Let’s Try!(いずれも文部科学省)
・小学校外国語活動・外国語 研修ガイドブック(文部科学省)
・図中のイラスト:いらすとや
学習指導案はこちら(PDF:149KB)

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