教科を英語で学ぶ 「Fun with MATH」を使った算数授業の実践

京都聖母学院小学校 石上 まゆみ

1はじめに

本校は,京都市伏見区に位置する,全校児童約690名のカトリックミッションスクールである。全ての教育活動の基盤に建学の精神「カトリックの人間観・世界観にもとづく教育を通して,心理を探求し,愛と奉仕と正義に生き,真に平和な世界を築くことに積極的に貢献する人間を育成する」を位置づけ,自主性と創造性をもって学び続けることのできる人間の育成を目指している。

本校は,2コース制度を設けている。日本語で教科学習をする総合コースと,英語で教科学習をする国際コースである。

設立されてから69年が経つが,本校の英語教育の歴史は長きに渡る。2003年,それまでの英語教育の実践を活かすと共に新しい英語教育への試みとして,算数,理科,社会をはじめとする多くの教科を英語で学ぶ「国際コース」を立ち上げた。国際コースでは,英語を学ぶのではなく,英語を学習ツールとして位置づけることで,幅広い言語活動を通して実践的英語力の基礎・基本を身につける事を目指している。現在,24学級中11学級が国際コースとなり,児童は10名の様々な国出身の外国人教員と一緒に,日々学習に励んでいる。また,総合コースでも1年生より週2~3時間の外国人教員と日本人教員のティームティーチングによる英語授業を行い,両コースとも英語教育の充実へ向け,研究・実践を続けている。

2算数を英語で学ぶ 「Fun with MATH」を使って

国際コースでは,1年生から多くの教科を外国人教員と日本人教員のティームティーチングにより英語で指導している。学年が上がるにつれ日本語で学ぶ教科が増加していき,算数は,1年生から4年生まで英語で学習をしている。算数,理科,社会などの英語で学ぶ教科の他にも,週4~5時間の英語の授業を実施しており,英語授業で学んだ事も活かしながら算数を英語で学習していることとなる。

初歩英語を学ぶのに適した「Fun with MATH」

1年生の学習単元には,数字,序数,形,時刻,比較など初歩英語を学ぶ教科書に出てくる内容が多く登場する。通常の英語授業で用いている教科書の内容と重なる語彙や表現が多く登場し,児童は算数の授業でも繰り返しそれらの語彙や表現を聞いたり,声に出したりする事で,また,算数的思考においてそれらの英語を用いる事で,英語も学び取っていくことができる。1年生の学習単元で使われる語彙が児童の身の回りにある物であり,取り上げられる話題が身近な話題で,意味を推測しやすい場面設定をされている事によって,児童が親しみをもって英語でも算数を学習できることへつながっている。教科書の最初のページを例にとっても,数,色,動物の名前,単数形,複数形など多くの表現に算数の学習をしながらも,自然に触れる事ができる。

単元のめあてを英語で達成するために

算数を英語で学ぶ事で英語の力も身につけていくのであるが,何よりも大事な事は,日本語で学習する時と同様,その単元のめあてを確実に児童が達成できることである。授業では主に外国人教員が英語で指導を行うが,常に日本人教員と外国人教員が連携をして指導計画を立てて授業を行い,それぞれの児童の習熟度を把握し,児童の理解度に応じて必要な手立てを考えていく必要がある。

週4時間の英語での算数に加え,週1時間程度の日本語の算数も行っているが,日本語で重要となる知識や考え方は,英語でも同じように指導することで,児童の思考を混乱させる事なく,理解を深めることができる。例えば,かけざんのかけられる数とかける数の違い等は,その意味の違いを英語でも繰り返し説明した上で,

‘Number in one group(一つ分の数),Number of groups(いくつ分),Total number(全部の数)’と日本語と組み合わせて練習をしたり,日本語と英語の数の数え方の違い等も日本語と照らし合わせて考えたりする事で,児童は英語と日本語を結びつけながら学び取っていくことができる。‘Fun with MATH ’は検定教科書と内容が同じ為,検定教科書と翻訳本,両方を用いての予習・復習も可能であり家庭学習がしやすいことも利点である。

また,英語の算数では,多くの算数特有の用語が登場する。‘Division’や‘Multiplication’といった算数用語や‘distance’と‘travel distance’などの意味の違いに関しては,事前に宿題のスペリングワークシートで理解していることで,英語の語彙が理解できない為に学習内容が理解できないといった問題を避けることができている。それでも,英語だけでは理解し難い事柄については,半具体物や具体物を使った操作を多く取り入れ,場面設定をより具体的に設けたり,視覚教材を用いたりする事で,児童が意味を推測したり,理解したりできるように工夫している。

授業実践例


Grade:2 Unit 3 ‘Length’

Lesson Objective
Warm-up

Fishing

  1. Incorporate previously learned structure “What are you doing?” / “I’m            .”
    in to warm-up activity.
  2. Students will play a fishing game.
  3. Round1 (students fish for a pair of fish which are very different in length)
Introduction of Concept

Fishing (continued)

  1. Round2 (teachers fish with students for a pair of fish which are very similar in length.)
  2. Teachers discuss their recently caught fish on the phone. They debate whose fish is longer.
  3. Teachers use erasers (which are of different size ) to measure.
  4. T1 is so happy, her fish is longer (according to the eraser measurement)
Question Student’s Thinking


  1. “Is T1’s fish longer than T2’s fish?”
  2. Expected student’s answer is “no”
  3. Ask the students why they answered “no”
    → The points that should be understood T1 and T2’s measuring tools: The erasers are different sizes.
    We can’t use things that are different sizes, so we need things that are the same size.
Measuring Activity


  1. “What can we use from our math set that is the same size for everyone?”
  2. Expected student’s answer is “blocks”
  3. Model measuring the length of the fish on the blackboard.
  4. Allow students to measure the fish with blocks
  5. “How many blocks is           ’s fish?”
  6. Check “Whose fish is longer?”
  7. Write on blackboard “Exactly 4. / 4 and a bit.”
Textbook Activity


  1. Measure the pink pencil on p.29 using 1 yen coin.
  2. “How many coin’s length is the pencil?”
  3. Check the answer.
Notebook Activity
  1. Date. Title. When measuring, we need multiple tools of the same size.
Introducing “Universal” Measurement Tool
  1. Have students understand we can’t always use many blocks or coins when we measure somethings.
  2. Introduce the object ‘ruler’
  3. Talk about “centimeters”. Count centimeters using fingers.
  4. Write “0/5/10” point out why these are important
  5. Write “cm” in textbook.
  6. Hand out rulers.
  7. Ask students to take out their fish and measure it using rulers.
  8. Write length in cm.
成果と課題

3おわりに

国際コース,総合コース共に英語教育の充実に向け,研究・実践を続けているが,私たちは単に英語を聞いたり,話したりできる人間を育成することを目指しているのではなく,将来,子ども達がそれぞれの道へ巣立った時に,意味ある内容を豊かな表現力でもって伝えることができる人になって欲しいと願っている。その為にも,全教育活動において子どもたち一人ひとりが,主体的・創造的に考え行動し,共に学び合える学習の場を作り出していきたい。そして,創立者のメール・マリー・クロチルド・リュチニエの言葉にこめられた子どもたちの姿を育成できるよう,これからも研究・実践を行っていきたと考える。


「聖母の子どもたち一人ひとりが家族のため,友人のために。また社会において心理のなかに人々の心を結ぶ平和の天使でありますように」

メール・マリー・クロチルド・リュチニエ

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