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教師の方へ

私の実践・私の工夫(生活)

自ら学びに向かう子どもの育成
~子どもが自分ごととして取り組む生活科の時間~

2年

横浜市立鶴見小学校 久島 拓也

1.はじめに

本校の学区は,鶴見区総合庁舎,鶴見警察署,鶴見消防署他の公共施設や京急鶴見駅,金融機関が集中しており,駅周辺には大きな商業施設,飲食店などが立ち並び,鶴見区の中心地として発展しており,材に恵まれた地域である。

指導にあたっては,まちの一員としての子どもの育成に力を入れており,公共心や規範意識を身につけ,友だちや地域の人々との望ましいかかわりをもてる子どもの姿を追究している。また,本校は,外国籍の子どもや外国につながる子どもの在籍が多い学校であるため,国際教室が開設され,子どもたちは,市や区役所を中心とした地域の支援も受けながら学習している。さらに,幼稚園・保育園や隣接する鶴見中学校との連携も盛んで,異なる文化や異年齢の子どもたちが互いのよさに気付き,共に学び合う教育を推進している。

学校サポーターとしてのボランティア活動では,環境整備,学習・行事支援等の活動が行われており,子どもたちの育成のために保護者・地域から寄せられる熱い思いに学校教育が支えられている。

この様な環境を生かし,様々な「人・もの・こと」とかかわって自分を見つめ,自分や自分の周りにいる人を大切にしながら,地域の中でたくましく生きる子どもの育成につなげたいと考えている。

2.単元について

(1)単元名 生活科第2学年「にこベルたんけんたい!」 ~にこにこベルロードたんけんたい~

(2)単元目標

まちを探検し,まちの「人・もの・こと」とかかわりを深める活動を通して,自分の生活がまちとかかわっていることが分かるとともに,自分の活動やまちのよさに気付き,まちやまちで働く人達に親しみや愛着をもって生活することができる。

(3)材の分析

○子どもがまちに関心をもっている

「ベルロード」(鶴見銀座商店街)は,旧東海道にあり,古くからこの地域で発展してきた商店街である。学区内にあり,近隣に住む保護者には多く利用されているが,実際に行ったことのない子どもは学級に半数ほどいた。また,商店街を利用していても店をあまり知らない子どもも多く見られた。教材を選択するに当たり,子ども達から,1年生のスタートカリキュラムの「がっこうたんけん」で様々な教職員と仲よくなり,学校生活がより楽しくなった経験から,「今度は鶴見のまちの人と仲良くなりたい。」という声が多くあがったため,まちの人とのかかわりが期待できるこの材が子ども達にとって意欲的に取り組めるものであると考えた。

○材の価値

①様々な店があり,子どもが自ら,対象を選択する力を育てることができる
商店街には,花屋,パン屋,文房具店,八百屋,お菓子屋,靴屋など様々な店がある。

②くり返し探検することができる距離にある
商店街は,学区内にあるため,くり返し店の人とかかわることができる。一度では解決しない問題も,何度も商店街に足を運んで解決していくことができる。

③商店街の中は安全で,子どものグループ活動が保障できる
商店街の方々が,朝の子ども達の登下校を見守ってくださったり,探検中に挨拶をしてくださったりと,地域や店で子ども達を見守ってくださっている。

④子ども達をまちで育てるという気持ちに溢れている
商店街では,子ども達に言葉だけではなく,「心の中に一生残る体験」を通して,「鶴見」に愛着をもち,忘れられないまちになってほしいと願う「ふるさとつるみ」を掲げ,子どもの育成を大切に考えている。

⑤学校に協力的な店が多い
商店街には,学校行事等の取り組みに協力的な方が多く,「こういうことがしたい!」という子どもの思いを大切にしてくださる店が多くある。

(4)単元の評価規準

知識及び技能の基礎 思考力・判断力・表現力の基礎 学びに向かう力
①まちには自分たちの生活を支える人や場所があることが分かる。 ②まちのよさや,まちの人とかかわることのよさや楽しさが分かる。 ①まちにあるものや,そこで生活したり働いたりしている人々について考えている。 ②まちの人やまちのよさについて,自分なりに多様な形で表現し伝えている。 ①まちで働いている人に関心をもち,進んで繰り返し関わろうとする。 ②まちの店やそこで働く人に親しみや愛着をもって交流しようとする。 ③まちの人と適切に接したり,安全に楽しく生活したりしようとする。

3.指導の流れ(32時間)

活動のきっかけ 教師の工夫
生活「わたしの小さなはたけで 夏やさいをそだてよう」 〇夏休み前の夏野菜の活動から,ベルロードにある店の存在とそこで働く人に気付く。 【工夫①】 夏野菜の栽培活動中,ベルロードの花屋さんで苗を買った経験から,スムーズに「まちたんけん」へ流れを作る。
1,まちたんけんのけいかくを立てよう!(4時間) 〇ベルロードへ向かい,どんな店や物があるのかを探しに行く。 〇興味をもった店ごとにグループに分かれて,これからの活動の見通しをもつ。パン屋,花屋,八百屋,文房具店に分かれる。(店名省略)
・気になったことやインタビューしたいことを紙に書いておこう。
【工夫②】 「まちたんけん」をしていく中で,気付きを得たり,自分なりの問題を明らかにしていったりするための活動時間を保障する。 【工夫③】 自分の問題を主体的に解決するために,興味をもった店ごとにグループを作り,安全に活動できるようにする。
2,お店の人と仲良くなるために,ベルロードへ出かけよう(3時間) 〇マナーについて話し合う。 〇お店で働く人と仲良くなるためにインタビューをしたり,お店の中を見たりして店のことを知る。 【工夫④】 ベルロードの店と連絡を取り,子どもがスムーズにインタビューを行い課題解決ができるよう,伺う時間帯やインタビュー内容を事前に伝える。 【工夫⑤】 区政90周年の取り組みに着目できるようにすることで,まちへの愛着がもてるようにする。
3,お店のことをもっとくわしく知るために ベルロードに出かけよう!(3時間) 〇お店で働く人と再度インタビューをして,お店のことを知る。 【工夫⑥】 店内や店員さんの様子に関する気付きを共有し,価値付けをすることで,次への活動の見通しをもちやすくする。 【工夫⑦】 今後の店の都合と子どもの学習の流れを照らし合わせ,活動の計画を立てる。(打ち合わせを継続的に行う。)
4,お店の人が〖にこにこ〗になってもらえるためのインタビューをしよう!(4時間) 〇店で働く人に再度インタビューをして,今後の活動の見通しをもつ。 【工夫⑧】 子どもが自分達で課題を解決するために,区役所と連携し,事前に区長さんの学校訪問の日程を確認し,インタビューの機会を設定する。 【工夫⑨】 子どもの思いを見取った上で,事前にお店にポップやポスター,パン作り等の活動ができるかの確認とお願いをする。
5,〖にこにこベルロード〗大さくせん!会ぎ(5時間) 〇今までの活動を振り返り,お店の人が笑顔になれる作戦を考え,表現する。 【工夫⑩】 今までお世話になった気持ちを,インタビューした内容やお店で働く人の思い,お店の様子等を踏まえて表現しようとしていることを価値づけし,活動意欲を高める。
6,〖にこにこベルロード〗大さくせん!実行(5時間) 〇お店の人が笑顔になれる作戦を実行する。 ⇒各グループ,インタビューした店のために作ったものを渡しに行く。(パン屋グループはアイデアの提案のみ) 【工夫⑪】 パンが完成するまでの日程を打ち合わせ,パンの完成日や販売予定日などを店長さんと確認し,先の活動の見通しをもつ。 【工夫⑫】 国語「しかけカードをつくろう」の学習など,他教科等の関連を図りながら,図工の表現などで身につけた知識や技能を使って活動する。
7,〖にこにこベルロード〗大さくせん!ふりかえり(1時間)
〇完成したパンの試作を見に行き,今後についての話し合い。 〇お店の様子を見たり,お客さんの反応を聞いたりする。 ○お礼をする。(グループで考えたお手紙やしかけカードを渡す。)
【工夫⑬】 子ども達に達成感を味あわせるために,店にポスターやポップなどを掲示してもらうだけでなく,お客さんからの反応がどうだったかを次回のインタビューで子ども達に伝えてもらえるようお願いをする。
11月11日 ソーランフェスティバル当日 翌週以降
【工夫⑭】 「販売初日は完売したが,翌週は売れ残った」という事実から子ども達が問題意識をもてるようにし,その原因と対策方法を考える学習の展開を計画していく。
8,〖にこにこベルロード〗大さくせん!協力(5時間) 〇2-1で考えた「ベルつるパン」を多くの人に知ってもらうための作戦(方法)を今までの活動を生かしてクラス全体で考える。(宣伝方法) 〇作戦(宣伝活動)を実行する。(常時活動) 【工夫⑮】 パン屋以外のグループの成功体験をもとに,パン屋グループの活動が発展していくように情報を交流する場を設定する。 【工夫⑯】 各宣伝方法の意図を明確し,宣伝媒体を作るだけでなく,ポスターを貼る時に効果的な場所やチラシの配布方法,校内放送のタイミングなどを考える時間を保障する。
9,〖にこにこベルロード〗大さくせん!ふりかえり パート2(2時間) 〇お店の様子を見に行き,お礼をする。+「タウンニュース」の取材⇒掲載

4.考察

子ども達一人ひとりが,それぞれ興味をもった店の方々とかかわれるようにしたことで,子どもの活動の意欲を十分に引き出すことができた。

そして,店の方々にインタビューをしていく中で,「もっと気になることが出てきたから,また○○さんにインタビューをして調べたい!」といった子ども達の知的好奇心が膨らみ,それを解決するために繰り返し店の方々とかかわるという学習の流れができた。

その流れを作るために,各活動の振り返りでは,全員が話合いに参加し,児童の発言をつなぎながら話合いを進め,互いに気付きを共有できる場を設定してきた。

これにより,他グループの振り返りから新たな気付きを得たり,次の活動への思いを広げたりする子どもの様子が見られるようになった。

活動の中で子どもの思いを把握していくための手立てとして,まちたんけんの中で分かったことを記す「たんけんメモ」や,店の方々へのインタビューを通して質問したいことや知ったことをまとめた「まちたんけん けいかくカード」を毎時間活用した。

そこから,授業の流れを組み立てるために,担任はかかわる店の方々に事前に電話をかけたり,直接お店に伺ったりなどして繰り返し打ち合わせをし,「インタビューの内容」や「次に話していただきたいこと」,「現在と今後の子ども達の思い」などを伝え,子どもの学習に協力していただくようお願いした。これにより,子どもの問題を解決するだけでなく,子どもの更なる思い(ポスター作りやパンのアイデア提案等)の実現に向けて,地域の方々と共に計画を立てて,取り組むことができた。

単元開始時は,気になることや問題を発見し解決しようとインタビューに臨むものの,緊張気味で表情も暗かった子ども達であったが,店へ何度も足を運び,インタビューを続けていく中で,次第に表情も明るくなっていった。

ポスターやポップ,立体看板を渡した店の方々がみんな笑顔になり,それらを店内で沢山のお客さんに見てもらえた経験や,クラスで考案したパンが実際に商品化され,自分達で宣伝方法を考えてパンを完売するようになった経験など,一つ一つ問題を解決し,思いが実現していく中で,子ども達は自分達の活動に自信をもつようになった。そして,店の方々とかかわる最後の日に,子ども達から「まだお手伝いしたかったなあ。」や「音読発表会に○○さんを招待できないかな。」などの振り返りをする姿も見られたことが,子ども達が店の方々に親しみや愛着をもつことができた結果であると感じた。

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