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教師の方へ

私の実践・私の工夫(生活)

ひなたの園での幼保小連携

1年

町田市立本町田東小学校 土田 昇

1.はじめに

町田市では,“幼児期と児童期の円滑な接続”を行うために,平成28年度より『幼保小推進モデル事業』に取り組み始めた。新学習指導要領が本格実施となる平成32年度の前年度から,幼稚園・保育園のアプローチ・カリキュラム,小学校のスタート・カリキュラムがシステムとして完成されていることを目指すものである。

本校は上記施策の連携モデル地区に選ばれ,本校の学区内にある二つの幼稚園,一つの保育園と共に連携事業を展開してきた。本校は本事業が開始される以前より,広く近隣の幼稚園・保育園とは交流してきた経緯があったが,今年度は特にモデル地区内の三園の園長と本事業のねらいや育てたい子ども像について確認した。

幼保小の連携でねらうこと 育てたい子ども像
① それぞれの教育課程(カリキュラム)について共通理解を図ること
② 子育てについて歩調を合わせて保護者にアピールすること
③ 教員を育成すること
④ 共通するフィールドの良さ(自然環境・周辺施設)を活かすこと
※ひなたの園で育てたい子ども像
●やる気モリモリ(主体性)
●いっしょになかよし(協同性)
●はてな?(知的好奇心の芽)
●つよい心と体(へこたれない)

2.本町田東小学校のスタートカリキュラムについてのとらえ

(1)ねらい

・ 一人一人の子どもが安心感をもてるようにすること

・ 幼保で育まれた意欲や学びを各教科等の学習に円滑に接続し,学習に意欲的に取り組めるようにすること

・ 学習や生活の基盤となるような学級集団を作ること

(2)内容

・ 入学式からおおむね1か月を期間として行う。

・ 学習を大きく3つに分類(下表参照)し,重点の置き方を考えて単元や学習活動を配列していく。はじめは「なかま」の時間を多くとり,次第に教科学習である「はかせ」の時間へと移行していくようにする。

なかま はてな はかせ
一人一人が安心感をもち,新しい人間関係を築いていくことをねらいとした学習
  例…歌や踊り,クラスの友達の名前を覚えたり仲良くなったりできるような遊び等
合科的・関連的な指導による生活科を中心とした学習
例…なかよしいっぱい大作戦(友達や先生と自己紹介,インタビュー,学校探検,春見つけ 等)
各教科等を中心とした学習
例…話す,聞く,書く,読む,計算 等

3.幼保小連携のための交流活動

(1)園児・児童対象の交流活動(小1と年長児)

・ 第1回(10月~11月)…秋を題材にした交流活動

・ 第2回(2月)…学校探検(紹介)を中心とした交流活動

(2)教職員対象の交流活動(教職員)

・ 第1回(8月)…幼保小連絡会① 幼稚園・保育園の参観,スタカリ報告,教職員交流

・ 第2回(8月)…幼保小連絡会② 小学校の参観,1年の振り返り,教職員交流

【入学当初のカリキュラムのようす】
【入学当初のカリキュラムのようす】

4.スタートカリキュラムを行うにあたって大切にしていること

・ 児童の「知りたい・やってみたい」という思いや願いを大切に活動を組み立てていく。

・ 幼稚園や保育園での学びを生かし,活動を中心とした学習から自然な流れで教科学習へとつなげていく。

・ 学校や地域全体で子供たちを育てていくという意識のもと,幼稚園や保育園との連携を深めながら,全校体制で取り組んでいく。

5.実際の活動のようす

(1)単元名 秋祭りをしよう

(2)ねらい

・ 「秋」をテーマに,年長児と楽しく活動するための工夫を考える。(1年生)

・ 小学校の生活科の学習に一緒に参加し,入学へのイメージを膨らませたり,期待を持ったりする。(年長児)

・ 一緒に秋を楽しむ活動を通して,児童と園児の交流を図る。(1年生・年長児)

(3)内容 1年生が用意した秋祭りを一緒に楽しむ

<お店>・ハロウィンしゃてきや ・かそうや ・どんぐりくじびきや  ・ヨーヨーや ・アクセサリーや ・ガチャガチャや  ・ものづくりや  ・スペシャルがっきや ・あったかや(あしゆ)

※落ち葉やどんぐりは,ごっこ遊びの通貨として流通させる。

(4)実践を振り返って

秋祭りの活動は,例年行っているものであり,年間の活動としては定着した感がある。昨年度より,集める秋の素材(どんぐりや落ち葉など)は充実してきた。回数を重ねるごとにお店側である子どもたちの対応は,上手になっていった。

6.考察

幼保小連携に於いて本当に大切にすべきものは,今回の新学習指導要領では,幼児教育において育みたい資質・能力として「10の姿」という形で結実している。中でも幼児の持つ活動へのエネルギー(主体性や知的好奇心など)こそ,小学校で引き継ぐべき大切な資質・能力であると考える。それを引き出す上で重要なことは,小学校の生活科で,意識して幼稚園・保育園時代にはできなかった取組をすべきであると考える。

一つは,発見したものをより詳しく専門的に説明できるということである。幼稚園・保育園に比べ,小学校の強味は“調べる環境が格段に充実していること”であろう。何となく集めてきた“どんぐり”にしても,それが,コナラなのかミズナラなのか,クヌギなのかマテバシイなのか,図鑑を与えて少し方法を教えれば,6~7歳くらいの児童ならば目を輝かせて調べるであろう。また,そのどんぐりは,学区のどこで,だれが拾ったものなのか,どの木から落ちたものか,幹のようすや葉っぱはどうか?それを使ってどんなこと(遊び)ができるか?…飛びついて調べるに違いない。

このように,子どもたちがとびつくであろう知識を存分に貯め,その蓄積した知を活用して,どのような学びにつなげていくかが重要となってくる。最終的には,近隣の年長さんを招待する行事を迎えるわけである。その場面で,興味をもってしっかりと調べた“知の裏打ちのある経験”が,その子の発表する姿勢や,言葉に自信をもたせるのである。「さすが,1年生!すごく詳しいね。よくそんなことまで知ってるね。」と幼稚園の先生や保母さんたちに言わせたい。このようにして,自信をつけた経験を積み重ねることは,その子の今後のキャリア形成において,有意義なものとなるに違いない。これは,とりもなおさず,新学習指導要領がめざす“資質・能力”の三つの柱とつながるのではないだろうか。

そういった授業全体,単元全体を調整する能力,どうすれば子どもたちの身近なものから,新たなアイディアが生まれそうか?そういったマネジメント能力全般が,今後の教育界を生きぬく教師には,おおいに必要とされるのである。