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教師の方へ

私の実践・私の工夫(生活)

複数教科と関連した生活科の単元づくり

2年

相模原市立大野小学校 黒田 瑠美  北川 裕之

1.はじめに

2年生の学習を進めていく時,次のように生活科と他教科や教科外学習と関連して学習計画をたてるように試みた。

  • ①生活科の学習を核にして他教科への学習につなげる学習展開の試み
  • ②教科外の活動(道徳,学校行事)を生活科への学習につなげる学習展開の試み

①生活科の学習を核にして他教科へ(例1)

②教科外の活動(道徳,学校行事)を生活科へ(例2)

① 生活科の学習を他教科の学習に生かした実践例

本単元に関わる学習指導要領の目標と内容(生活科)

1 目標

(2)自分と身近な動物や植物など自然とのかかわりに関心をもち,自然のすばらしさに気付き,自然を大切にしたり,自分たちの遊びや生活を工夫したりすることができるようにする。

2 内容

(6)身近な自然を利用したり,身近にある物を使ったりなどして,遊びや遊びに使う物を工夫してつくり,その面白さや自然の不思議さに気付き,みんなで遊びを楽しむことができるようにする。

(8)自分たちの生活や地域の出来事を,身近な人々と伝え合う活動を行い,身近な人々とかかわることの楽しさが分かり,進んで交流することができる。

本単元に関わる学習指導要領の目標と内容(国語科)

1 目標

経験したことや想像したことなどについて,順序を整理し,簡単な構成を考えて文や文章を書く能力を身に付けさせると共に,進んで書こうとする態度を育てる。

2 内容

ア経験したことや想像したことなどから書くことを決め,書こうとする題材に必要な事柄を集めること。

イ自分の考えが,明確になるように事柄の順序に沿って簡単な構成を考えること

ウ語と語や文と文との続き方に注意して,つながりのある文や文章を書くこと

単元名 「あそび大すき あつまれ!」(啓林館「いきいきせいかつ下」)

①単元目標

  • ○身の回りにあるいろいろな材料を利用し,動くおもちゃを工夫して作ったり,作ったおもちゃの遊び方を工夫したりして,おもちゃのおもしろさや不思議さに気づく。
  • ○おもちゃを通してみんなで楽しく遊ぶ。

②指導計画(10時間)

<小単元1> つくってあそぼう (2時間)
<小単元2> くふうしてみよう (3時間)
<小単元3> みんなであそぼう (5時間)

生活科 他教科
○ 学習課題をつかみ,学習の見通しを持つ。
・1年の時に「おもちゃまつり」に招待されて遊んだ活動を想起する。 ・実際にいろいろな手作りおもちゃで遊ぶ ・おもちゃの種類によって使う材料や遊ぶ場所(机,床,空間など)が異なることを確認する。 ・どんな「おもちゃまつり」にしたいか活動内容について話し合う。
国語 (1/6) 写真資料1
・「説明文の書き方」を確認する。 ・実際に「おもちゃまつり」の活動で,おもちゃの説明書を書くという学習課題を持つ。 <おもちゃの例>
 紙コップブーメラン,風自動車,どんぐりやじろうべえ,空気砲うずまきモビールなど
<つくってあそぼう> (2時間)
○ 作りたいおもちゃを考えて設計図を書く。
  制作ポイント
  (①身近な材料を使う
   ②時間内で作成する
   ③動くおもちゃにする)
図工(1/3)
・作り方の手順や必要な材料を具体的に考える。 図工(2/3,3/3) ・身近な材料を使って自力でおもちゃを作る。写真資料2
<くふうしてみよう> (3時間)
○グループの中で,それぞれのおもちゃで遊んで,改良点を話し合い工夫して改良する。
国語 (2/6)
○おもちゃの説明を考える。 ・おもちゃの作り方や遊び方のポイントをメモする。
<みんなであそぼう> (5時間)
・作ったおもちゃの遊び方や,そのルールを確認して,遊ぶ準備をする。 ・説明書を活用して「第1回おもちゃまつり」を開く(クラス全体で) 写真資料3 ・課題を話し合って改善策を考える。 ・遊びの相手を広げたり,おもちゃの作り方も伝えたいという願いをもとに1年生を招待して一緒に遊ぶ計画や準備をする。
(伝える相手と目的意識を確認)

国語 (3/6,4/6)
・自分の作ったおもちゃの説明書を書いてリ-フレットにまとめる。 写真資料4

<説明文の構成>
はじめ(前書き・材料・道具)
   中 (作り方)
  終わり (遊び方)(動かし方)
・「第2回おもちゃまつり」のワークショップを説明書を活用して開く。  写真資料5 国語 (5/6) 写真資料6
・自分の作ったおもちゃの説明書のリ-フレットを読み合い,良いところ分かりにくいところを中心に話し合う。(アドバイス名人)
・活動後,個々に振り返りをして,感想や課題を共有化する。  写真資料7 国語 (6/6)
・必要に応じて書き足して分かりやすい説明書のリ-フレットを仕上げる。 ・完成したそれぞれの説明書のリ-フレットをクラスで自由に読み合うようにする。  写真資料8

【生活科の板書】 

【国語科の板書】 

写真資料集

〈資料1〉国語科(説明文の書き方)
〈資料2〉図工科(おもちゃ作り)
〈資料3〉生活科(第1回おもちゃあそび)
〈資料4〉国語科(おもちゃの説明書を書く)
〈資料5〉生活科(第2回おもちゃあそび)
〈資料6〉国語科(アドバイス名人)
〈資料7〉生活科(アドバイス名人)
〈資料8〉国語科(リーフレットの読み合い)

②教科外の学習を生活科の学習に生かした実践例

道徳 主題名 「生きものの命」 【3-(2)自然愛・動植物愛護 】

主題設定の理由

(1)ねらいとする価値

指導要領(道徳編)では,第1学年及び第2学年の内容項目3-(2)は「身近な自然に親しみ,動植物に優しく接する」ことをねらいとしている。

本校の中庭ではチャボやクジャク,池では鯉や亀など様々な生きものが飼われている。草むらからは秋の虫の声も聞かれる。様々な命が子どもたちと共に育まれている。

しかし現実として,子どもたちは身近な生きものに慣れっこになっていて,子どもによっては自然界への関心が薄れている様子も見られる。

そこで生活科の「げんきにそだて」や「生きものランドをつくろうよ」(啓林館「いきいきせいかつ下」)の学習を重ねることで,改めて子どもたちは自分の周りの生きものの様子や自然界について関心を持ち初め,自分たちが様々な生きものと関わりながら生活していることを実感するようになってきた。

これまでの生きものへの接し方を振り返り,もの言えぬ生きものの気持ちになって考え,愛情をもって接していこうとする心情を育てたいと思い,本主題を設定した。

(2)本時の展開


学習活動 (★主発問 ○主な発問・予想される子どもの発言) ・指導上の留意点 ○支援 ☆評価
( )資料について

1.生活科の活動で小さな生き物を育てた体験について話し合う。 ○ 生きているものをさわった時。どんな気持ちだった? ・かわいかった。
・温かかった。
○ 次にこの写真を見てみよう。 ・あっ キリンだ。
・動物園行ったことあるよ。
○ これは多摩動物公園のキリンの親子です。生まれたての赤ちゃんキリンです。 ・いつ,うまれたの?
・お母さんと子どもだ。
○今日はこのキリンではないけれど,他の動物園のキリンの親子の話をします。 ・どんなお話か楽しみ。
・ぬいぐるみでなく,生きた動物にふれた経験を思い出すことから本時の価値への方向づけをしていく。 ・「かわいい」とか「あったかい」とか,その子なりの感覚を大切にする。 ・多摩動物公園のキリンの映像を見せ,資料に関心をもてるようにする。 ・多摩動物園での遠足も想起させる。 ・キリンの親子の写真から人間の親子を想起したりして,動物に親しみをもてるようにする。 ・生まれたての赤ちゃんキリンに焦点をおいて視聴するようにする。 ・実話であることにふれる。

2.資料を聞いて話し合う。 ○元気な様子のキリンを写真で確認する。 ○少しずつ弱っていくキリンが,もし話せたら,何て話しただろう。 ・苦しいよ。
・息ができない。 ○キリンは,なぜビニール袋を食べたのだろう。 ・食べ物だと思ったから。
・お腹が減っていたから。

★キリンが死んだことについて,みんなは,どう思いますか (ワークシートに記入) ・命があったのにかわいそうだな。
・ビニール袋をすてないようにすれば良かった。
・動物園の人気者であるキリンの様子を映像で確認する。(拡大絵) ・弱っていくキリンの気持ちを想像することで,「助けて」とか「苦しい」とか言えない生きものの気持ちに気づかせる。 ・キリンのような動物にとっては食べ物とそうでない物の区別がつかず,ビニール袋を食べてしまう現実を考えさせる。 ・実際に身近に捨てられたビニール袋を提示し,こうしたゴミがキリンとその赤ちゃんの命を奪ったことに気づかせる。
☆キリンの死が人間の不注意に起因していることに気づく。
(発言・ワークシート)

3 今までの自分を振り返る
○自分の周りの生き物に対して,どう接していこうと思いますか。
(ワークシートに記入)
・生きものの気持ちを考えて行動したい。 ・ゴミが捨ててあったら拾い,生きものが食べないようにしたい。 ・生活科の町探検で,子どもたちが生きものとふれあっている様子,教室の昆虫をのぞき込んでいるを映像で静かに視聴する。

・思ったことを自由に話し合えるようにする。
☆身近な生きものに目を向け,生きものの立場に立って優しく接していこうする。
(発言・ワークシート)

・スライドはできるだけ,身近な生きものに子どもたちがふれあっている内容とする。

道徳の板書

主題名 「生きものの命」 【3-(2)自然愛・動植物愛護 】

【生きものの命 板書】

導入場面
(3㎏のビニールごみ)
  終末場面
(羽化しているコミスジ蝶)
キリンが食べた3㎏のビニールごみの重さを
子どもたちに体感させる。
  教室で実際に育ててきた生きものの命
(アゲハチョウ,クワガタなどの動画を
テレビで静かに視聴する。

生活科 「生きものの命」

【柚の葉を食べるアゲハ蝶の幼虫】
【羽化しているアゲハ蝶】
【町探検で見つけたクワガタ虫】
【中庭に飛んでくるアオサギ】
【シナモンの木と葉】
【中庭のがまの穂】