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教師の方へ

私の実践・私の工夫(算数)

学習の進め方
―学びを生かそう「みんなで話しあいましょう」―

5年

大阪府柏原市立国分東小学校 加藤 雄身

1.はじめに

本単元は学年はじめの学習の方法について,下記のような学習スタイルを学ぶための一つの訓練学習として選んだ。

  • ① 一人で考える
  • ② グループ(班)で考える
  • ③ クラスみんなで考える
  • ④ 学習をまとめる

通常この順序で教材と向き合い,理解を進める学習スタイルを考えた。

2.教材と学習課題について

本教材は正三角形を4段に敷き詰めた図の中に,正三角形がいくつあるかを考える内容である。※資料参照

正三角形の一辺の長さに沿って分類し数えていくことによって,いくつあるかを明らかにすることが出来る課題である。

  • ○ 示された図形の中に正三角形がいくつあるかを,順序よく場合分けすることによって知る。
  • ○ 自分で考えたことをもとに友だちと話しあうことによって,課題を解決する力を養う。

今回の授業では,算数の学習と言うよりも,

  • Ⅰ 上記で述べた学習スタイルが見られたか?
  • Ⅱ 学習者が自分なりの考えを持って授業に参加していたか?
  • Ⅲ 次の学習に繋がるノートの取り方の端緒が少しでも見られたか?

と言うように,今年度の本校の研究課題である国語科における表現活動コミュニケーション能力他の教科の学習にも繋げて発展させる一つの提案として提供するものである。

3.学習者について

今回学習する児童は,話をしっかり聞き,落ち着いて学習することができる。

また,学習意欲の高い児童が多く,互いに刺激をし合っている。

班学習では,自分の考えを押し付けたりせず,お互いの意見を尊重してまとめようとする姿が見られる。

一方で,自分の考えをうまく伝えることができなかったり,一部の児童の考えに安易に流されたりする時がある。

既習内容が定着していない児童や理解に時間がかかる児童も,みんなが自分の考えを自信を持って発表できるようにしたい。

そのためには,安心して発表できる雰囲気を作り,いろいろな考えの中から学習内容の本質に迫っていくような授業を目指したい。

4年生の時から友だちの意見をメモする児童もいたが,5年生になり,全員が誰に言われなくても板書をノートに写すようになった。本時の学習内容を自分でまとめ,次の学習につながるようなノート作りをさせていきたい。

4.指導計画 (全3時間)

第1次 学習のスタイルを学ぶ (1時間)

  • ① 一人で考える。
  • ② グループ(班)で考える。
  • ③ クラスみんなで考える。
  • ④ 学習をまとめる。

第2次 正三角形がいくつあるか考える(1時間)

  • 場合に分けていくつあるか考える
  • 自分で考え,班で考え,みんなで考える

第3次 学習のスタイルをまとめる(1時間)

  • 学習のスタイルをまとめる
  • ノートの取り方を学ぶ

5.本時の目標

  • ○ 示された図形の中に正三角形がいくつあるかを,順序よく場合分けすることによって明らかにする。
  • ○ 自分で考えたことをもとに友だちと話しあうことによって,課題を解決する力を養う。

6.本時の展開

組立 教師の発言,働き 児 童 の 活 動
復習 ・学級での勉強の仕方を復習しましょう。 ・学習の仕方を復習する。
  • ① 一人で考える。
  • ② グループ(班)で考える。
  • ③ クラスみんなで考える。
  • ④ 学習をまとめる。
問題提起
思考
・示された図形の中に正三角形がいくつありますか? ・図を見ていくつ正三角形が有るか自分で考える。
討議 ・自分で考えたら,班で考えを出し合いましょう。
・班で考えましたか?
ではクラスのみんなで考えを出し合いましょう。
・リーダーの指示によって班で話しあう。
・話しあったことを元にして意見を出し合う。
※根拠を明らかにしていくつ正三角形があるか述べる。
まとめ ・今日の学習で分かったこと,まだ分からないこと,もっと調べたいことをノートに書きましょう。 ・マス目ノートに・
今日の学習で分かったこと,まだ分からないこともっと調べたいことをノートに書く。

7.授業を見られた先生方の感想(本校研修部・評価カードより)

Ⅰ 上記で述べた学習スタイルが見られたか?

  • 学習の中で決まったスタイルを持つことは大切だと実感,一人一人が積極的に取り組んでいる姿がすばらしかった。学習スタイルを提示したので取り組みやすかったようだ。
  • 一人一人が考え,班の中でも全員の意見を尊重し,発表するために誰が何をするか分担していました。
  • クラスみんなで考えたら新しい考えがうまれるというのがうまく授業の中で出来ていたのでこれこそが集団で学習するということだなと改めて思った。
  • 学習スタイルがうまく進められていて,グループでの話し合いの時にリーダーの立場の子がよかった。
  • グループの考えをまとめるときもよく意見が出ていた。グループの発表もしっかり聞けていたと思う。
  • グループでの話し合いの時にリーダーがうまく進めていた班とそうでない班があった。そういう場合,うまく進めるにはどうしたらいいのかまだわからないので教えてほしい。
  • 5班の発表の時,発表スタイルが決まっていた(わたしは~を代表して言いたいと思います。この話を聞いたら~と思いました)のがよかった。グループ全委員の発表もとてもよかったです。聴く子ども達の姿勢もよかったです。
  • 話し合いを進めるにはリーダーが必要。Ⅰの班はリーダーが不在で交流が難しそうだった。上手なのはI.Mの班。それぞれが考えを出せていたし,分からないことをさらけ出せる関係ができていた。
    T2は分かっていることを話し合うより教えて回っていた。ただ,教えて回ることで自信を持てている班員は多かった。
  • 班で話し合う練習を積み重ねてきたというのが感じられた。司会の仕方など,教師が助言しないとできない班もあるので,まだ司会の方法を提示した方がいいかな,と思った。
  • 話し合いの道具として,班ごとにプリントを数枚渡したり,ホワイトボードのような記入できる小黒板があったら便利では。
  • 全体で発表の際,一人の発表になりがちなので班で助け合う発表になっていけば。さらに,全体から質問などで深めていける発表になれば,と感じた。

Ⅱ 学習者が自分なりの考えを持って授業に参加していたか?

  • 絵をかく,分けるなど,一人でよく考えていたと思います。
  • どの子も自分なりの考えをもっていたと思います,5年生立派!
  • 自分の意志で動いている感覚にさせる教師の働きかけがすばらしかった。
  • 全体発表の時,クラスのほとんどが,理解しようとする姿勢を見せていた。学びの場ができているのでここから子供が育つんだな,と思った。
  • 一人で考える時間の確保が難しいと感じた。固まってしまっている子に教師が働きかける(声を出す)ことであちこちで話し合いが始まり,思考が停止してしまった子も多かった。ノートをみると,式や図,説明など様々な言語活動が行われておりおもしろかったので,思考の時間が保障できなかったのは残念。
  • 心配になったのが16個でとまっている児童がいなかったか。10分間の一人で考える時間は,机間巡視だけでいいか,ヒントカードなど見せるか,隣で答えを照らし合わせる時間を少し入れてまた一人で・・・とするか,など。
    自分なりの考えとして10分間固まっていた児童がいたらどうすればいいか。

Ⅲ 次の学習に繋がるノートの取り方の端緒が少しでも見られたか?

  • それぞれが自分でみて分かるノート作りをしていてノートにも個性が出ていました。
  • 子ども達一人一人がノートの取り方を工夫していて今までにどのように声かけをしてノートをとらせてきたのか教えていただきたい。
  • ノートの取り方が工夫されていた。友達の意見のメモの取り方などうまくできている児童がみられた。
  • グループの発表を聞きながらノートを書くのは難しそうだった。
  • 個の力に応じてノートを活用していたように思う。学習の苦手な子も書くことで考えられていた。むしろ学習能力の高い子(Y,T,Wなど)書けていなかったようだ。
  • ノートもきれいに書けていて見やすかったです。(自分の考えが分かりやすかった。)
  • ノートの取り方については,これから育てていくのかな,という印象を受けました。成長していく過程をみたいです。

その他・感想

  • 一人一人具体的に褒めていた。
  • 子ども達一人一人が積極的に取り組んでいる姿がすばらしかったです。
  • クラスの雰囲気として日頃からお互いの意見を肯定し認め,間違ったことは素直に受け止めることができる環境ができていた。
    みんなが授業に対する意欲や笑顔が輝いていてすばらしい授業でした。
  • 学習規律がすばらしいなと思いました。発表で実演してくれたので見ている人も考えやすかった。
  • 加藤先生の賞賛や励ましに子ども達が一生懸命答えようとしている姿が印象的で教室にプラスのいい雰囲気があふれていてとてもよかったです。
  • 授業者と担任の役割がきちんとしており,担任にしかできないサポートをしているのが勉強になった。

8.終わりに

この授業を通して,明らかになり確信したことがいくつかあった。

  • ① 学習はあくまでも子どもが主体であり,教師の役割は子どもの主体的な思考を引き出し子ども自身の確信と自信に繋げることだと強く感じた。
  • ② 最初に提起した学習の方法論が,小集団から学級集団への思考の広がりと課題解決の有効な学習方法だと確信をした。
  • ③ 集団討議とその後のノートにまとめて書く作業が思考の定着と論理の展開・理解に役立つことが明らかになった。
  • ④ 本校の研究課題である「国語科における表現活動,コミュニケーション能力を他の教科の学習にも繋げて発展させる。」ことが,算数の授業でも証明されたように思う。忌憚ない意見をお寄せ下さい

資料1(啓林館5年上教科書より)
資料1

資料2
資料2

資料3
資料3