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教師の方へ

私の実践・私の工夫(理科)

学んだことを表現し,まとめる活動を通して理解を深める
~タブレット端末を活用した「調査」「整理・分析」「まとめ・表現」~

3年

芦屋市教育委員会打出教育文化センター 指導主事 大林 亮

1.はじめに

前任校では,課題解決型の単元を構想し子どもが主体的に学習に取り組む中で,思考をさらに深めることについて研究を行っています。

3年生で理科という学習にはじめて出会い,生活科から引き継ぐ形で,細かに観察したりふしぎに感じたりすることから,子どもたち一人一人が新たなことを見出し探究していこうとする姿を目指して日々実践に取り組んでいます。

「ものの重さ」の単元は,「粒子」についての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「粒子の保存性」にかかわるものであり,5年生の「物の溶け方」の学習につながるものであります。3年生理科で育成すべき重点である「学習の過程において,自然の事物・現象の差異点や共通点に気づいたり比較したりする能力を育成すること」を意識しながら,本単元では,子どもの考えに揺さぶりをかけながら,「物は,形が変わっても重さは変わらないこと」「物は,体積が同じでも重さが違うことがあること」の理解を深めようと考えました。

ここ3年,芦屋市の施策でタブレット端末をはじめとするICT機器が小学校に普及しています。前任校では、タブレット端末が55台と学習支援システム,各教室に教材提示装置・大型モニターが配置され,子どもたちが細かく観察したことを実際に見せながら説明したり新しく見出したことを全体で共有したりする活動がスムーズに行えるようになりました。このような発見や説明の「共有場面」にICTを活用するだけでなく,子どもたちの思考を深める「思考場面」でICTを活用しさらに思考を深めることはできないかと考えながら,本単元を構想しました。

子どもたちが楽しみながら学習し,自然の事物・現象に興味を持つことで科学的な見方・考え方が養われます。ただ「楽しいだけで終わらない理科」にしなければいけないとも考えています。読んでいただいているみなさんと一緒に考えを深められたらと思います。

2.子どもの実態と課題設定

今回の単元を「博士になって,ものの重さレポートを書こう」と設定することとしました。授業を実施したクラスは,総合的な学習の時間に地域のお祭りについて調べ,タブレット端末を活用し報告書にまとめるという学習を行なっていました。そこで調べたことをタブレットでまとめる活動を行っていたことから,本単元の課題も,獲得した知識を活用した表現活動にすることにしました。また,何よりも役になりきって楽しく学習することが大好きな子どもたちでしたから,「はかせ」という役割を与えられ,自分が研究者になったつもりになることで,普段の生活の中で体験・経験したことから予想したり正確に実験を行わなければいけないと強く思ったり実験の結果をまとめるにはどうすれば良いかと考えたりすることを,より意識できるようになるのではと考えたからです。

3.指導の実際

単元を通して,「はかせ」を意識させるために,毎時間「はかせ」と黒板に掲示しました。そうすることで1時間1時間,子どもたちは今まで以上に普段の生活を思い出しながら予想したり,細かい所まで目を凝らし新たな発見をしようと意欲的に実験したり,博士道具(実験道具…てんびん・はかり・電子てんびん)の使い方の説明書を何度も見返したりする姿が見られました。また,道具で実際に量る前に手ごたえで予想する活動も行いました。子どもたちに量感を身につけさせるために大切な学習であり,量る前に量感を味わわせることで重さに対する興味も湧き,意欲的に予想することにつながったように感じます。

本単元では,子どもたちは物の形や体積と重さの関係について2つのことを理解しなければいけません。その2つの事象を確かめるために「てんびん(2つの物の重さをすぐに比べることができる)」と「はかり・電子てんびん(物の重さを数値で表すことができる)」の特性を理解したうえで,どちらの方法でも実験計画を立てた後,実際に実験し,事象を確かめていくようにしました。

また,獲得した知識を活用しレポートを作成(まとめ・表現)していくために,それぞれの実験の時にタブレット端末で写真を撮り溜めて(調査活動)いきました。この時の,写真を撮るポイントとして,簡単に「物の重さを比べている時」とし,数多くの写真を撮るようにさせました。 これは,多くの情報の中からレポートをどう書くかによって,自分が必要となる写真を選択する(整理・分析)という情報活用能力を身につけさせるためです。

(1)物は形が変わっても,重さは変わらない

この3年生の子どもたちは,普段の生活に潜んでいる不思議に気づいたり,自分の思っていたことに揺さぶりをかけられたりするような単元の導入を好んでいました。そこで,普段の生活でありふれているペットボトルを使い,それを目の前でつぶし(リサイクルに出す時につぶすよねとかいいながら),もとのペットボトルと手ごたえで比べさせる導入を行いました。普段の生活から学習につなげることで,物の形と重さの関係についてより一層興味を持たせることができました。

予想では,「少し重たくなるのではないか?」や「小さくなったから軽くなるんじゃない?」などの意見が多数でした。子どもたちの思考を揺さぶることができると,この後の実験にも気合が入ります。ペットボトルは最後に確かめるとして,子どもたちが「色々な形で試したいね」となりました。そこで,どのように実験をすれば,「物の形を変えると,重さはどうなるのか?」がわかるのか,実験計画を立てることで見通しを持たせ,今回は粘土を使い実験することとなりました。

前述のとおり2通りの実験をペアで行いました。

パターン①: 重さを同じにした粘土をてんびんにのせ,片方の皿の粘土を様々な形に変え実験する。
パターン②: 丸めた粘土の重さをはかりや電子てんびんで量り,その粘土を様々な形に変える実験をする。

これらの実験を行い,「物は,形が変わっても重さは変わらない」ことを学習しました。

(2)物は,体積が同じでも重さが違うことがある

今回の問題の導入でも,普段の生活とのつながりを意識しました。今回の導入では,水や醤油,サラダ油,ケチャップ,お米などを200mlのビーカーに入れ重さを比べることをしました。子どもたちは感覚的には重たそうとか軽そうとか思っていてもそれを確かめたことがないので,どちらが重いかでかなり盛り上がりました。

そこから,色々なものを調べたいとなり,子どもたちの量感を豊かにするという意味でも,色々なものについて比べたかったので,ここでは自分たちの身近にあるものとつなげて『鉄・アルミ・塩化ビニル・ポリエチレン・ゴム・木』の大きさが同じものを比べて重い順を調べようとなりました。実験の前に「自分てんびん」で自分の量感を働かせながら予想しました。このような予想をすることで,どうなるのかわくわくしながら実験に取り組むことができました。

この実験も(1)と同じように実験道具を変え,2通りの方法をペアで行いました。

パターン①: それぞれ同じ体積のものを順番に,てんびんに載せていき順番を調べる。
パターン②: それぞれ同じ体積のものを電子てんびんやはかりに載せ,重さを量って順番を調べる。

これらの実験を行い,「物は,体積が同じでも重さが違うことがある」ことを学習しました。

(3)はかせになって,レポートを書こう

単元の最後は,今まで撮りためた写真を使って,獲得した知識を活用したレポート(研究報告)をつくる学習活動です。レポートに今回獲得した知識について書いたりそのことに沿った写真を選んだりすることで,学習内容を主体的にふり返ることにつながり,メタ認知することになりました。実験はペアで行いましたが,レポートは1人1枚つくることで,自分の学習をじっくりとふり返ることができるのではないかと考えています。

4.おわりに

次期学習指導要領では,授業において「何を学ぶのか」それを「どのように学ぶのか」さらに子どもたち自身が「何ができるようになるか」を大切にしたカリキュラム・マネジメントの実現について言及しています。このカリキュラム・マネジメントの中核となるのは日々の授業です。その授業は「深い学び」を起こすものでなければいけません。子どもの見方・考え方を揺さぶり,その見方・考え方を深める授業には,子どもたちの主体的な姿勢と対話的な学習活動が必要です。

今回の単元は,物の形と重さの関係について,主体的に学びたいとか学ぶことが楽しいと思えるような課題設定を行い,実験方法を計画しふり返るなど見通しを持たせながら,今までの見方・考え方に揺さぶりをかけるとともに,対話的に多様な意見に耳を傾けることで,子ども自身の中に新しい見方・考え方が生まれるような単元を目指しました。そこに「情報機器をどのように活用し,子どもたちの情報活用能力を効果的に育成するのか」という視点を持つことが今後必要になるのではないかと考えています。

この学習を通して,子どもたちに理科の楽しさ,多様な意見を尊重する姿勢,さらに学ぶことの面白さが伝わってくれたと感じています。

拙い実践について,最後までお読みいただいてありがとうございました。