ホーム > 教師の方へ > 高等学校(数学) > 授業実践記録(数学) > アクティブ・ラーニングを取り入れた数学Ⅱ発展の授業

教師の方へ

授業実践記録(数学)

アクティブ・ラーニングを取り入れた数学Ⅱ発展の授業

山形県立高畠高等学校 松村 将人

1.本校について

現任校は,総合学科として14年目を迎えた単位制の高校である。特色ある進学校として,将来の職業選択を視野に入れた自己の進路への自覚を深めさせる学習を重視し,在学中にその自覚を促す動機付けとなるような科目が開設されている。科目選択に関する助言やガイダンスも就職・進学の双方に行い充実している。また,農業・情報・福祉・観光・看護など,生徒の個性を生かした主体的な学習を通して学ぶことの楽しさや成就感を体験させる授業も豊富にある。

2.生徒の実態

1学年の定員が3クラス120人の中規模学校である。その年により若干の差異はあるが,進学と就職はおよそ3:1であり,主に県内四年制大学への進学に力を入れている。社交的で素直な生徒が多く,生活指導が入りやすい。一方で学習習慣が未成熟であり,どちらかと言えば学習の定着は身につきにくい傾向にある。数学に関しては,上位から下位まで幅広く分布しており,授業においてのターゲットレベルが絞り切れず中途半端になりがちである。

3.指導のねらいと工夫

1年生で開講する数学Ⅰ(120)と数学A(120)については全員必修であるが,数学Ⅱ(50),数学B(20),数学Ⅲ(5),数学活用(60),応用数学(30),数学Ⅱ発展については,志望進路に応じた選択制である。(()内は,およその履修人数。また,数学Ⅱ,数学活用は2,3年どちらでも履修可能。数学Bは2年,数学Ⅲ,応用数学,数学Ⅱ発展は3年で履修可能。)そのため,選択科目の数学については高い意欲を持って取り組む生徒が多い。

今回紹介する数学Ⅱ発展の授業は,主に進学を目指す生徒が2年次で数学Ⅱを履修し,入試に向けた発展的問題を理解するために選択する2単位の学校設定科目である。選択者は22名で,グループ学習によるアクティブ・ラーニングを取り入れ,一人ではなかなか解法を導けない生徒も,友人の考えを聞いたり質問したりする活動を通して自らの考えを導けるようにしている。年間を通して注意したことは,配布するプリントに掲載する問題を吟味することと,机間巡視を丁寧に行い,グループの中でどうしても解決しなければ,いつでも教師に聞けるという状態を保つことである。

4.授業の実際及び生徒の反応

実践内容を紹介する前に,ここまでの経緯を記述したいと思う。
本校に転勤した5年前,それまでの一斉指導による授業展開からプリントによるペア学習で,相談しあいながら授業を進める手法を取り入れた。2年目にはアクティブ・ラーニングの研修に参加し,その手法を取り入れる。毎時間授業の振り返りをさせることで生徒が主体的に授業に参加するようにはなったものの,学力上位層の伸びがみられず悩んだ時期でもあった。数学の指導力向上セミナー参加や県内の高校生が参加するセミナーの講師を務めるなど,あらゆる機会を活用し数学指導の在り方を模索してきた。その後「非認知的能力」という概念を知り,受験のための学力向上を目的とするのをやめ,グループによる学びあいにシフトする。数学Ⅱ発展は,このような経緯を経てたどり着いた授業内容である。

年度当初に用いたテキストは,基本・標準・発展といった3段階の難易度が付いたものを使用した。基本編には公式も一通りあり,内容を確認しながら問題を進めることができた。この時期の授業形態は一斉授業で,宿題を出して家庭学習をさせ,次の時間に生徒に当てて板書させ解答を確認するというスタイルである。4学期制である本校では定期テストとしての中間テストは無いが,授業時間中に中間テストを実施しており,2学期までに中間・期末を含めて計4回のテストを行った。テスト問題についてはオーソドックスなものだと思うが,通常と異なるのは公式集をテスト問題に添付したことだ。もともとは,テスト問題が広範囲に及ぶため,公式の丸暗記に時間が費やされることを避けるのが目的であったが,それでも問題が解けない生徒がいたため,公式を覚えていないから問題が解けないのではなく,そもそも情報が整理できないことや,覚えた知識の活用ができないことに原因があると知り,その後の授業内容の修正を余儀なくされたことを覚えている。

このことを受けて,3学期からはテストをやめ,レポート提出とグループごとの発表活動へと転換した。問題の選定には時間を費やし,別の問題集からレポート問題ではだれでも1人で取り組める問題を選んだ(参考資料1,2)。また,グループ発表問題については,成績優秀な生徒でも1人ではなかなか太刀打ちできない問題を選択している(参考資料3,4)。解答貢献度や評価,さらには一言コメントなども書かせ,より積極的に他者とかかわるよう促した。

このように,本来この授業は入試突破を目的とした授業であるが,結果至上主義的な発想を改め,次期学習指導要領でも謳っている「生徒に身につけさせたい資質や能力」を軸とした授業づくりを行った。

資料3(グループ発表問題(表面))
(PDFファイル:459KB)
資料4(グループ発表問題(裏面))
(PDFファイル:486KB)
資料3 資料4

5.指導の成果

私の指導力不足を暴露するようで恥ずかしい話であるが,1学期の中間テストで0点を取った生徒がいる。しかも公式集を渡しているにもかかわらず,である。一斉授業による通常の授業を行っていては,こういった生徒は救われないのであろう。問題文から情報を読み取る能力や,公式などの知識を活用する能力など成績下位層には基礎基本をしっかり定着させ,上位層には相手が分かるようになるまで説明に工夫を加え,辛抱強く努力するよう指導して非認知的能力をつけさせる。アクティブ・ラーニングのやり方は担当する教師,教科によって様々な形があると思うが,教師一人一人が生徒や教材と向き合い,身につけさせたい資質や能力を意識して試行錯誤を重ね見つけていくものなのだろうと感じた。前述の生徒は,通年で45点以上の成績まで回復したし,成績上位の生徒の中には,発表を聞いて質問したり,論理的な誤りを指摘したりする者もおり,私自身手ごたえを感じた。数学に苦手意識を持たせないための個に応じた指導と,学力の高さだけではなく他者に積極的に働きかけて情報をまとめ,それらを擦り合わせてグループの成果として発表させる指導など,授業を通して私自身生徒から学んだことも多い。

6.今後の課題

仲の良い友達と雑談も交えながら問題に取り組むことで,主体的に授業に参加できる様子が伺えた。期間が短いため今回は見送ったが,年に数回グループを入れ替え,新しいメンバーとの関係づくりをさせる取り組みを行っていくことも,他者との関係性を構築する必要性を考えると大事なことだと思うので取り組んでいきたい。私自身,これが最終形とは考えておらずまだまだ改善の余地はあると思う。例えば,学校で,授業に参加するからこそ身につくスキルを十分に習得させ,上級学校への進学や,民間企業等への就職いずれにしても授業で学んだことが生かされるような授業,そして学力アップともリンクできるような授業方法を見つけ,総合学科としての魅力をさらに向上させるよう努めていきたい。

ページの先頭へ