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授業実践記録(数学)

数学Ⅱ「微分と積分」導入時の工夫について
~1次関数近似としての微分法,符号付面積としての定積分~

熊本県立熊本高等学校 小坂 和海

1.はじめに

数学Ⅱで学ぶ微分法は,対象となる関数が整関数に限られるため, さえ覚えてしまえばよく,増減表をつくりグラフをかくことや方程式・不等式へ応用することにそれほど困難さはないのだが,その一方で「微分法とはいったい何か」を正しく理解できている生徒はごく少数である。積分法も似たような問題を抱えており,大半の生徒は「解法の手順」を暗記することにより,要求された面積などの値が出せるようになり,それで微分・積分が理解できたと錯覚しているような状況がある。数学Ⅲに進んで微分・積分が苦手になるのは,微分・積分に関する理解が,数学Ⅱ履修の時点であまりに形式的なものにとどまっているからであろう。そこで,「微分・積分ではそもそも何をしているのか」を理解させることにこだわって授業を行ってみた。

2.微分法の導入時

まず,「正方形の厚紙の4すみから同じ大きさの正方形を切り落とし,その厚紙を曲げてできる容器の容積を最大にするには?」という設問から入り,容積を表す3次関数のグラフの山の部分のてっぺんを求めればよいということになり,局所的に直線(1次関数)で近似できるので,この直線が水平になるところを見つければよい,という流れを理解させる。次に,具体的な関数を対象にして「1次関数へのおきかえ」をやってみる。その後,「微分係数」,「導関数」を導入する。最後に,いちいち定義に従って導関数を求めるのは面倒なので,導関数の公式をつくって,これを使って関数の増減を調べる。近似1次関数は接線の方程式に他ならないが,「導関数を使って接線の式を求める」という教科書的順序に従っていないので,導入時は「局所的に直線(1次関数)で近似する」という表現にこだわって教えている。

ここまででB4のプリント2枚を使った。(資料1(PDF:269KB),資料2(PDF:237KB))

3.積分法の導入時

数学B「数列」をまだ履修していないのだが,お構いなしに区分求積法から入る。天下り的に,極限値 で定積分 を定義する。記号 についてはとりあえず2,3の例をあげて説明をする(それほど混乱は起きない)。 がグラフとx軸とに挟まれた部分の面積に等しくなることを了解させることが重要。次に,いくつかの定積分の値を,「数列の和の極限」を実際に計算することにより求める。の公式が必要になるが,ここでは気楽に教えてしまう。この段階では,定積分は微分法とは何の関係もない概念である。定積分の符号(定積分は符号付面積である)や積分区間の分割については,この段階で説明が可能である。

その後,いわゆる微分積分学の基本定理 を証明する。このとき,積分の平均値の定理(山を削って谷を埋めて長方形をつくると高さは山と谷の間になる)を意識して説明を行う。最後に, を導く(これを定積分の定義とはしない)。

ここまででB4のプリント2枚を使った。(資料3(PDF:266KB),資料4(PDF:276KB))

4.今後のこと

いったん正しい概念が出来上がれば,あとは問題演習を重ねていくにつれて力がついてくるので,その後の指導に関しては心配する点はほとんどない。本校では2年生までは文理コース分けをしないので,文系進学者も数学Ⅲのかなりの部分を履修する。したがって「合成関数の微分法」は全員が学ぶことになり,その時点で微分法の理解の正確さがどの程度なのか明らかになるし,理系の生徒の場合は「置換積分法」でさらに試されることにもなる。ここで慌てなくてもよいようにしたいものである。(資料5(PDF:418KB)参照)

参考文献

『高等学校の基礎解析』 (ちくま学芸文庫) 黒田 孝郎,小島 順,野崎 昭弘,森 毅 著

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