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授業実践記録(数学)

立体の切断
~粘土を利用し,イメージでなく実際に切断~

鳥取県立倉吉西高等学校 竹歳 真一

1.はじめに

生徒は,中学時代に底面の半径がrの円で,高さがhの円錐の体積VにおいてV=(πrh)/3となることを学び,同じ底面と高さの円柱の体積の1/3であることを学んでいる。

数学Ⅲの積分法の応用において円錐の体積を積分を利用して求め,中学時代に学んだ公式を証明した。その際は円錐の高さをx軸上にとり,頂点を原点にして断面の円を積分して体積を求めた。生徒から「円錐をいろんな方向で切断してみたい」という意見が飛び出し,実際に粘土を使ってみることにした。今回はその授業を紹介する。

断面に注目するだけでなく,区分求積法を活用できる切断も考察した。

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2.授業の流れ

  • ①生徒全員に一人1個約30gのカラフルな「小麦粘土」と細い「釣り糸」を用意。
  • ②円錐を様々な角度で二つに切断したときの断面を予想する。
  • ③円錐をつくり,実際にいろいろな角度で切断する。
  • ④その切断面から見える図形を考察する。
    切断面がわかりにくい場合は,同じ色の粘土を持っている生徒と協力して大きな円錐をつくってもよい。
  • ⑤区分求積法を活用できる切断を考える。(まずは,小手調べで3等分)

3.実践内容

はじめは一人でいろいろな角度で切断し,断面を考察していたが,いったいその図形がなにであるか周囲の生徒と相談するようになった。数学Ⅲの二次曲線で学んだ,「放物線」,「楕円」,「双曲線」が断面に現れているのではないだろうか?と予想しているグループもあった。

高さと平行に切断した図形は頂点を通過する時は二等辺三角形であるが,頂点以外で高さに平行に切断したときも二等辺三角形と予想した生徒も多くいた。その二等辺三角形の断面積を積分しても円錐の体積と一致しないことから,二等辺三角形ではないと判断していた。

区分求積法が活用できる切断において,まずは3等分に切断した。その際もとの円錐より大きな立体をつくり,三等分してできた,円柱の高さ,半径を考察した。

4.成果と課題

生徒は「粘土」を活用することに非常に積極的であった。幼少の頃を思い出したようにかなり熱心に立体をつくり,切断をしていた。切断する道具にミシン糸や針金,ナイフなどいろいろ試したが,細い釣り糸が比較的に切断しやすかった。

空間把握でいままで指導者側から切断面をイメージしやすい模型や図,スライドを準備してきたが,実際に切断させてみたことは今回が初めての試みであった。切断の際に少し立体が崩れることがあるが,予想以上に生徒の興味関心が高まり,頭に描いたイメージを求めて積極的に切断していた。今回の授業後も空間把握問題にであうと,「粘土で試したい」いう生徒が増えてきた。また,空間把握問題のイメージをノートに描くことができる生徒が増え,また描く図形も以前に比べ美しくなった。

実際に切断することから自ら考察し,課題や疑問を見いだし,解決するための構想を立て,グループで相談し考察・処理し,その過程を振り返り今まで学んできた知識を確認し得られた結果や自らの予想の意義を考えたりすることにつながってゆくことを期待している。