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授業実践記録(英語)

Eトレ(English Training)による英語の自動化を目指して(基礎英語編)

近畿大学附属高等学校 中西 洋介

はじめに

近年の英語教育は Reading, Writing, Listening, Speaking の4技能の向上を目指す方向に向かっています。しかし,4技能の向上を目指す授業は,「文法訳読式」を主に行ってきた私にとってはハードルが高く思われました。日本語による解説に時間をかけると英語活動に使う時間は少なくなるからです(その逆も同様です)。そのハードルを乗り越えるために,私は4年前より「反転授業」を実践しています。

反転授業では「文法訳読式」の部分を解説動画の視聴を自宅で生徒が行うことにより,授業中においては生徒が英語を使用する場面を増やすことが可能になります。今回は,家庭学習での解説動画の視聴部分の説明を割愛し(この部分は参考文献にあります),教室内での「英語表現Ⅱ」の授業実践を報告いたします。

1.生徒の実態と指導のねらい

勤務校は大学附属高校であるため,系列大学に進学する際,他大学を受験する場合のような特別な大学受験勉強をする必要はありません。しかし当然ながら,生徒は大学進学後に英語授業についていくことが出来るのに必要な基礎学力を身につけることは不可欠です。

基礎学力の柱は,英語表現Ⅰで扱う例文を徹底して英語の「型」として身につけることであると,私は考えています。勤務校での使用教科書であるVision QuestⅠAdvanced(以下,Advanced)の例文数は合計で288です。これらの例文を生徒が身につけるように徹底した指導を行います。その指導法を私は「Eトレ」(English Training)と呼び,その中でOne Sentence の4技能の習得を目指した学習指導を,2016年度担当の高校2年生に対して行いました。

従来,高校2年生で「英語表現Ⅱ」の時間では,Vision Quest Ⅱを使用することになります。しかし,私が担当した生徒は,高校1年の「英語表現Ⅰ」でVision QuestⅠStandard(以下,Standard)を学習したものの,その定着が弱いと感じました。故にVision Quest Ⅱの教科書を4月から使用するよりも,高校2年時ではもう一度,Vision Quest Ⅰの復習に重点を置き,徐々に「英語表現Ⅱ」の教科書である Vision Quest Ⅱにつなげる工夫をしました。(高校3年でも引き続き「英語表現Ⅱ」の授業があります)

復習と言っても1年生で使用した Standard でなく,生徒の学習意欲やプライドも高める意図もあり,生徒用の Advanced のデジタル教科書を導入しました。デジタル教科書にした理由は,学校で行ったEトレを自宅でも音声機能を活用して行ってほしいと考えたからです。

2.授業の実際:Eトレ(English Training)

Eトレの意味

Eトレ(English Training)の方法を説明する前に,名称の理由を述べます。Training という言葉から,英語学習においては頭の良し悪しは関係なく,繰り返しの訓練によりskills(4技能)を習得することができるというイメージを生徒が持って欲しかったからです。脳科学の分野では neuroplasticity 「神経可塑性」が注目されています。生徒には,洋書でよく見かける “The brain is plastic.” “The brain is like a muscle.” という表現も併せて説明しました。すなわち,繰り返し練習をすることによって,脳内神経の組み換えが起こる結果,新たな力(skill)を身につけることが可能であるということです。「繰り返し練習する」イメージを想起させる言葉として「Eトレ」を使用しました。

Eトレの実践Ⅰ:One Sentence 4技能

私が実践したEトレの内容は「One Sentence 4技能」と名付け,指導者用のデジタル教科書を用いて,次のように行いました。

①ターゲットとなる英文をデジタル教科書の音声の後に英文を見てリピートする。

②デジタル教科書の画面をスライドさせ,英文を見えなくして,音声を聞いた後にリピートする。

③その英文をノート(プリント)に書く。

例えば,Advanced L7 Grammar 2 に出てくる英文6.“My parents won’t allow me to study abroad.”を,①「聞いて(Listeningの部分),英文を見て読む(Readingの部分)」,②「聞いて(再びListeningの部分),英文を言う(Speakingの部分)」,そして③「英文を書く(Writingの部分)」の3過程を通して,4技能の向上を基本例文で行いました。

一見簡単のように見えますが,英語を即答することに慣れていない生徒にとっては,2回の音声練習だけでは完璧になりません。しかし,Eトレが目指す「繰り返しのトレーニング」によって練習回数を重ねることで可能になります。それでも難しければ,私が一文を短く切って音読練習を行います。例えば,上記の例文であれば,“My parents won’t allow me” で切り,生徒がその部分をリピートし,その後に “to study abroad” の部分を練習します。さらに一文を通しで言えるようになれば,デジタル教科書の音声に出来るように再び練習します。つまり,「デジタル教科書音声→教員音声→デジタル教科書音声」の練習を経て,英文が生徒の脳内データベースに蓄積するようにします。

Eトレ実践Ⅱ:例文の簡単な応用

例文がしっかりと脳内に蓄積されると,Eトレでは上記の手順②「デジタル教科書の画面をスライドさせ,英文を見えなくして,音声を聞いた後にリピートする。」だけの繰り返し練習が可能となり,短い時間で多くの例文を練習できるようになります。

この段階から substitution drill に挑戦します。先ほどの例文 “My parents won’t allow me to study abroad.” であれば,allow を例文下に記載されている permit や enable などの単語に置き換えて練習します。

このような練習を通して,表現の幅を広げることが可能になります。

Eトレ実践Ⅲ:Vision Quest Ⅱへの連携と「英作文のコツ」の体得

Vision Quest Ⅱは,英文の難度が増すだけでなく,日本語文も英語に直訳しにくいものが多く見受けられます。逆に言えば,教科書をしっかり学習すれば,飛躍的な英作文力の向上につながります。それ故,生徒が少しでもVision Quest Ⅱの英文を身につけやすくするために,「(中西版)英作文のコツ」を伝授し,それをEトレによって練習します。

大学入試問題での英訳が難しい日本語文に対する一般的な「英作文のコツ(アドバイス)」は,「日本語文を英文に直しやすい日本語文に置き換えて英文に直す。」とされています。これはもっともなアドバイスですが,「別の日本語に置き換えることが出来ない」生徒にとっては,このアドバイスは役に立ちません。私は,このアドバイスを少し変えて,次のように述べます。「模範解答の英文を直訳し,問題文と比較する。それが同じであれば,元の日本語は直訳できる英文であるため,その英文を再生できるように復習する。もし問題文と直訳の日本語がずれていたら,その箇所が英文に直しやすい別の日本語である。」「この練習方法では,英作文するのが難しいと感じる日本語文であれば,模範英文を分析してその英文を出来る範囲で身につけるように練習することができるので,英作文力がつけやすい。」と言って(中西版)英作文のコツを伝授します。

このコツをVision Quest Ⅱで実践すると次のようになります。例えば,L6 の日本語4の「先週,コートをドライクリーニングに出した。」は,生徒が英語に直すのはかなり難しいと思われます。この文を扱う際には,基礎に戻りAdvanced L9 Grammar 1 英文10. “She had [got] her hair cut.” をEトレで復習します。その後,Vision Quest Ⅱ L6 英文4. “I had my coat dry-cleaned last week.” をEトレします。同じ文法項目であっても,表現は後者の方が難しいことがわかります。この英文をインプットした上,日本語文と比較します。生徒にその違いを発見するように促すと,元の日本語には①「私は」がない,②「私の(コート)」がない,③英文の「~してもらった」が「出した」という表現になっている,以上の3点が明らかになります。特に最後の「~してもらった」という表現は日本語使用の場面では普通は使わないので「出した」となっていることを理解し,日英の表現の違いを学びます。

このような練習を続けると,難易度の高い英文だけでなく,日本語の表現の違いも理解できる学びに繋がるようになります。

3.生徒の反応とまとめ

Eトレ実践Ⅲはまだ途中ですが,2016年度1年間を通して,Advanced 例文の定着を目指すEトレを実践することで,生徒は英語の理解に対しての自信を感じているようです。私は,「学びや成長とは,知らないことを知り,出来ないことが出来ることである。そのためには繰り返しが大切である。」と生徒に常々伝えています。

Advanced の全ての例文をEトレし終えた際に,「半年前や1年前の自分自身と比べて,英語に関して成長していますか?」と尋ねると,うなずく生徒が多く見受けられました。偏差値などの他者との比較ではく,過去の自分自身との比較において今の方が優れているという感覚をもち,絶えず自分を向上させるという視点で学びを続けて欲しいと願っています。

参考文献

中西洋介・芝池宗克.(2014)『反転授業が変える教育の未来-生徒の主体性を引き出す授業への取り組み』明石書店

中西洋介(2017)『反転授業:アクティブ・ラーニング実現は「問い学ぶ」教育に道(よ)る』大学英語教育学会(JACET)関西支部紀要 No.19 p.20 – p.39

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