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授業実践記録(英語)

現代英語教育と教授法に関する一考察

熊本英語教育コンソーシアム 黒田 憲一郎

1.はじめに

英語教育が目指す目的は何かと問われると,生徒に英語力をつけることとなるが(当たり前ですね),その次に立てられる問いは,では,生徒にどのような英語力をつけるのか,となるのが最近の趨勢のようだ。実践的(実用的)英語力,例えば,異文化コミュニケーションを可能にする英語力。ビジネスシーンで外国人との競争に負けない英語力。自分(達)のアイディアや商品を世界に説得力を持って売り込むことができるようにするための英語力。世界中の誰かが持つアイディアや商品の特性をいち早く正確に理解し,手に入れることを可能にする英語力。日本のトップリーダーとして世界の場に出て恥ずかしくない英語力。等々。どれもわかるようでよくわからない文言だ(いったいそれはどんな英語で,どんな英語ではないものを指すのだろう)。その一方で,生徒に英語学習の場を提供することで,逆の視点に立てば,教師が英語教育の場に立つことで,英語教育は何を成し遂げなければならないのか,という問いが立てられることは少ない。言うまでもないことだが,英語教育も「教育」であり,我々がその営為に携わる「教師」であろうとする以上,英語であろうが,数学であろうが,体育であろうが,その教科科目に関わらず,その共通にして第一義的に重要な目的は「生徒を成熟させること」であって欲しいと思う。

これがなかなか難しい。現場で走り回る日々の実践の中で,自らの授業は生徒を成熟させているのだろうかとよく考える。これまで23年間の英語教育実践の中で時に立ち止って考えてきたことや,同僚・同志の先生方とあがいてみた軌跡の一端を簡単に紹介してみたいと思う。

2.採用する授業法のお話し

オールイングリッシュで授業をする。タスクシートを使って速読しながらスキャニングさせる情報キャッチ型の授業をする。パターンプラクティスとペアワークを多用する。比較的抽象度の高い内容を持った英文をまずは大意把握させたのちに文脈に照らし合わせて細部を解釈する授業をする。色々あり得る。いや,生徒にとってはいろいろあることが決定的に大切であると思う。授業法はこうでなければならない,といった言説や信念そのものが生徒の成熟の阻害要因となる。複数の教師が多様な授業法を採用する,というのでも悪くないが,同一の教師がレッスンによって採用する授業法が異なるというのもさらに悪くない。いつも同じタイプの授業を受け,「この授業を受け続けると,自分にはこのような英語力が付き,このようなことができるようになる(とされている)のだな」と,生徒が授業の流れを事前に了解している学習状況では,生徒は安心して授業を受け,「そのタイプの英語学習に」慣れることはできるかもしれないが,残念ながら「成熟する」ことはない。経験的にそう思う。内田樹氏はこのことを以下のように言う。

プログラムは私の「外部」に/でなければならない。

同じ一つのことを別の言葉で伝える異なる(教)師が目の前に立った時,学習者は初めてその意味を考える。それが成熟へのブレイクスルー開始の瞬間であり,言い換えれば,学習が起動する瞬間である。

加えて,言葉を生業にするものとして譲れない点が一点ある。「能動型の授業」が求められて久しいが,あくまでコミュニケーションはレセプティブなものである。受信の感受性を高められなければ,コミュニカティブな授業とは言えない。

3.中間層に対する指導

高校英語学習者の中間層にとって,センター試験の存在は極めて大きい。その「形式」に焦点を当て,様々な「センター対策」と言われるものが英語教育で行われる場合,その努力の大半が知識注入のために生徒の短期記憶に働きかけ,読解やリスニング指導に関しても生徒のクイックレスポンスを鍛えることに過剰な時間が注がれているように思う。しかし,私を含めて時間と労力をかけたほどにその効果が生徒に現れないという不全感を多くの英語教師が体験している。確かに情報処理型の演習は必要であろうが,英語を媒介として「思考すること」,「表面情報を内的情報に意味処理すること」をないがしろにしてしまっていることが生徒の伸びが頭打ちになる一因になっていると思う。「だからセンター試験を廃止すればよいのだ」といった短絡的な話も耳にするが,現行センター試験を他の検定試験に置換するとしても,中間層が抱える問題点は変わらないように思う。一般的に前述のような抽象思考力を鍛えなければ対応できないとされる難関大志望者だけではなく,たとえ学力中間層であっても,いや,中間層であるからこそ「考える喜びが味わえる授業」,「発見の喜びが味わえる授業」を工夫しなければ,学習動機そのものが駆動しないからである。

4.どのようなテクストを採用するか

先ほども述べたように,「どんなスタイルで授業をするか」という議論はうんざりするほど多いが,それに比して「どんなテクストを使うのか」についての提言が少ないように思う。中間層に対して機能するように "English through English" 型の授業をする場合,

1)テクストは情報処理型の英文(≒説明文)になる場合が多い
→ 内容的に深みがなく生徒の知的好奇心に応えられないテクストになる
→ 授業を受けている生徒もやっている教師もわくわくしない。飽きる。

2)タスクを事前に提示することになる
→ 生徒は自ら事前に考えるべきことを与えられる。
→ 目の前にある問いに答えればいいという冷めた学習姿勢が強化される。
→ 発展性や意外性が授業に持ち込まれるチャンスが少ない。両者共に飽きる。

3)「生徒対教師」もしくは「生徒対生徒」のやり取りが表面的なものになる。
→ 機械的なパターンプラクティスに終始する
→ クラスサイズが大きいので,言いっぱなし,話させっぱなしの「おしゃべり」授業になる。
→ 生徒が「おかしなイメージを持っている」,「実はわかっていない」ことが放置される

といった問題点を抱えることになるので,それを補完できるテクストを用いた授業も必要になるだろう。

3)の「おかしなイメージを持っている」の例を最近の授業の中で目にした事例からあげてみたい。

例1:

Every day, when we open a newspaper, turn on TV, or get onto the Internet, it seems there is a new medical breakthrough ― a sudden and exciting discovery that, in turn, leads to more changes. Many of these discoveries are beneficial, but they are coming so fast that we often don't have a chance to consider the moral questions and ethical problems. As Martin Luther King, Jr. once said, "Our scientific power has outrun our spiritual power."

旧カリ教科書:Element Reading : Lesson 2  Medical Technology and Bioethics

例えばこのテクストを用いた授業で生徒とやり取りをする中で,

Teacher : Who said our scientific power had outrun our spiritual power?
Student A: Martin Luther King, Jr. did!

というやり取りがあったとしよう(実際あったのだが)。その後,よくよくやり取りを聞いていると,生徒の頭の中にイメージされていたMLKは,

このようななんだか神秘的な力を持つ「マーティン・ルター王」なるものだったようなのだ。ある意味,凄い。

また,このような例にも出くわした。

例2:

My parents came from very different American places. My mother's family in Pennsylvania were rural. They were farmers and good with machinery; they fixed tractors, lawn mowers, cars;anything with a motor. They played country music on the stages of fire department halls and in bars. They were Protestant, people of few words, and suspicious of the people who lived in my father's world, which was urban and in specific ways opposite to my mother's.

My father's family worked in factories. They were Catholic, and they lived in neighborhoods still divided by ethnic groups in Niagara Falls. My father's people talked more than my mother's family did, and they spoke a different American dialect. They told stories, which were entertaining. Their favorite music was jazz. In the emergency room at Niagara Falls Memorial Hospital in the middle of a heart attack, when a doctor asked my father whether he had any allergies, he responded, "Just country music."

(04年 九州大学前期)

問1.母方と父方の家族の特徴の違いについて4点,対比しながら日本語で記しなさい。

さて今回はcountry musicの登場である。そうきたか,と思った。

「国歌」だそうである。凄い。

この部分にしても,問1の解答として露骨に出てきたので発見できたが,もし英語のQ&Aでやり取りをしていたら,

Teacher : What kind of music do they like?
Student A: Country music!

で終わっていたり,あるいは生徒と英語でやり取りをしながら黒板に整理してまとめるだけで流されたりしていた可能性も否定できないだろう。設問が明示しているように英文を「対比的に」「考えながら」読む習慣があれば,たとえ「カントリーミュージック」というジャンルをスキーマ的に知らない生徒であったとしても,「父方は都会 ⇔ 母方は田舎でしょ。うん。ジャズは確かに都会っぽくておしゃれ。じゃ,country musicって… あ,民謡?」という,それはそれで「国歌」ほどには大外れでなく,それどころかむしろほぼ正解に近いともいえるイメージを湧かせることができたはずである。

これらの場合,生徒のイメージが奇妙だったのは単なるスキーマの欠如なので大問題ではないと言ってしまえばそれまでなのだが,生徒が外国語学習をする際に必要な背景情報が圧倒的に少ないこと,特に中間層においてそれが深刻であること,不足している予備知識が極めて平易な言葉に関するものであることは,学習を成立させうるかということの根幹にかかわることなので,見過ごすべきではないと思う。

生徒にはどのような力が欠けているのかを教師がつかむ場が「授業」のはずだ。授業中のやり取りを通して,生徒の学力マトリックスのようなものを把握し(くどいようだが,その把握には教師と生徒との授業中のやり取りが密でなければならない),その凹みを補うにはどのような教材が適切なのかを考えたい。

テクストの種類とその表現傾向及びそれぞれの種類に比較適した授業内活動を整理してみると,以下のようになるだろう。

テクストのタイプ 情報説明文 論説文 小説・エッセイ文
主張 明示的 暗示的
好まれる表現 Denotation Connotation
好まれる授業活動 スキャニング
情報整理
スキミング
ロジカルリーディング
イメージ化
漂う雰囲気の読み取り
心情の読み取り

(松田隆治・英語教育コンソーシアムによる)

スキーマの少ない中間層の生徒に前述のような力を養成しようとすれば,全体的な語彙の負荷も少ない小説・エッセイ文が扱いやすいと思われる。小説・エッセイ文では,与えられた情報から想像によってイメージをふくらませる受信の力が求められるからである。そしてその副産物として,その本質がレセプティブなコミュニケーション能力の養成が期待できるのである。

5.どのような種類とレベルを持ったテクストをいつ使用するか

授業法が限定的で,どのようなテクストでも既定の授業法に合わせ,言語活動で押し切るというのはやはり,いかがなものかと思う。これまで観察してきた限り,極論を言ってしまえば,オールイングリッシュであれ,精読中心の授業であれ,上手い教師はいかなる授業法を採用しても上手い。彼らは完成度7割(でも多すぎるか…)のざっくりした授業プランを立て,授業を生き物のように操り,どこに着地するのかわからないスリリングな授業を生徒と共に共作する(ふりをして,実は着地点だけは事前に想定してあったりするのであるが…)。但し,それは完全に個人技であり,枝雀の落語は枝雀にしか無理なのであって,凡人である我々はむしろ「集団戦」を楽しんだほうが良いのではないかと思う。これまで述べてきたことも,「熊本の枝雀」から学んだことを出発点にして,多くの地元の有志の先生方とあーでもない,こーでもないといいながら共に考え,チャレンジしてみた結果である。一人であれこれやるよりも,一人で誰かのまねをするよりも,一座のみんなで指導の流れを考え,一座が属する学校の間尺に合ったテクストを共作したほうが圧倒的に「楽しい」し,楽しんでいる教師のもとでは,生徒が勝手に開花してくれる。

さて,一座のみんなで考えた3年間の指導の流れの中での各テクストジャンルと活動の狙いの位置づけを整理したものが以下の表である。

1年次 2年次前半 2年次後半 3年次前半 3年次後半
説明文 ◆言語活動によるInput中心型授業 ◆スキャニング中心 ◆主題をとらえる態度の育成 ◆スキャニング
 →スキミング
◆大意把握から精読へ徐々に移行 ◆主題をとらえ,自分で深める読みの導入 ◆語彙力の強化
◆センター長文パートを利用した情報処理活動
論説文 ◆教科書の読解精読・解釈の比率増 ◆論説文の要約トレーニング ◆入試問題を中心とした総合読解力の向上
※大意把握と精読のバランスを考え,良質な素材を使って素材の良さを利用した授業をしたい
小説
エッセイ文
◆簡単な物語の全体把握(プロットの理解) ◆教科書以外の素材として,1時間(または2時間)の全体読みを中心とした読み切り活動 ◆イメージ力・解釈力の向上を目指した部分和訳などの解釈トレーニング

(松田隆治・英語教育コンソーシアムによる)

6.使えるテクスト例

これまで述べてきたような授業を可能にするテクストを探すのは大変だ。常にアンテナを張り,実際に授業で使ってみて精選し,使えそうであれば「持ちネタ」にまで昇華させていく必要がある。時間も労力もかかることだからこそ「みんなでテクスト探しを楽しむ」集団が必要だ。しかも,「やってみたらここで生徒が躓いた」情報も共有できる。いいことずくめだ。これまでの考察のまとめにかえて,実際に我々が使ってみたテクストの例を以下に挙げて,筆をおくこととする。

[1]中間層の1年次に

[ステップ1―A]

Sarah was a girl from a family /that had a lot of money. / Sarah lived in a large house /that had a beautiful garden. / When she was a small girl, /she had everything she wanted /--- many toys, trips to interesting places, and beautiful dresses. / When she became a teenager,/ she thought /she could get the best of everything all her life/, but when Sarah was sixteen years old,/ her father lost all his money /and the family became poor./ Sarah had to work as a salesperson in a department store/ and she didn't like her work. / She didn't like /the cheap dresses she had to buy./ She didn't like /to get up early in the morning and hurry to work, /and most of all, /she didn't like /having to think about money /all the time./

Some of Sarah's friends /still invited her to parties./ Sarah loved the parties /because she could remember /the time she was rich and happy./ But, at the same time, /she didn't like the parties /because she never had /the right dress or the right jewelry to wear,/ and she was always very jealous /of the people who had everything./

One day in December, /Sarah's best friend, Jane,/ invited Sarah to a big Christmas party. / Sarah wanted so much to go,/ but she just didn't have the right dress./ Luckily, /Jane understood./ Jane lent her /a beautiful green dress and a pair of diamond earrings. /

"Here, Sarah," she said,/ "these are perfect earrings for you./ They look very beautiful on you."/

Sarah loved the dress,/ and especially loved the earrings. / "Oh, Jane," she said, /"these are so beautiful. / I want to wear them, /but I can see /that they are real diamonds/ and very expensive./ I can't borrow them."/

"Oh, no," Jane said. / "They'll look beautiful on you./ These diamonds were made for you. / Just come and enjoy the party."/

And Sarah did./ She enjoyed herself during the party, /and she felt like a princess./

But when she got home,/ a very bad thing happened. / She suddenly found /that she had lost one of the earrings. / Poor Sarah! Poor Sarah! / She just stood /in front of the mirror /and cried. / What was she going to tell Jane?/

The next day, Sarah went to see a jeweler /with the one earring she still had/ "Can you make me /an earring with diamonds/ just like this one?"/ she asked./

"Yes," /said the jeweler, /"but it will be /two thousand four hundred dollars."/

"Can I pay you /one hundred dollars /every month?"/ Sarah asked./

The jeweler said yes, /and the next day, /Sarah returned the earrings /to her friend, Jane. / For two years, /Sarah had to pay one hundred dollars every month. / It was not easy /because Sarah could get /only two hundred dollars/ a month. /Soon /Sarah decided /that she should find a job /that paid more. / In the evenings /after she finished work in the store,/ Sarah went to school /to learn new skills /for a better job./ She learned /that she was very good /at cutting hair /and putting on make-up,/ so she became a beautician./ Soon /she found /that she loved her work /and felt really good about herself. / She was working hard,/ but she still was not rich./ She worked and worked very hard,/ and after two years,/ Margaret, her boss, /thought /that Sarah could be her partner in the business,/ and the next year, /Sarah had her own shop./ She didn't go to the rich people's parties/ any more. / She just didn't have time, /but many of her friends /since she was a child /came to her shop /to ask her to cut their hair./ Sarah was proud /of herself and her shop./ She was not jealous of anyone./

One day, /Jane came into Sarah's shop./ "Oh, Sarah," Jane said, /"you are so lucky /to have your own shop. / What a wonderful life /you have!/ I'm proud /to have you /as a friend."/

"But /everything happened /because of you," /Sarah told Jane./

"Because of me?"/ Jane was very surprised./

"Yes," /Sarah told her./ "I only became a beautician /because I had to pay for your earring." / She explained everything /to her friend./

(97年 山口大学前期)

◆ここまでをリスニングで聞かせて,下のQ&Aで確認。

【設問】

表面の英文の内容と一致していれば○,違っていれば×を(  )の中に記入しなさい。

  • 1〔   〕Sarah was poor from her childhood.
  • 2〔   〕When Sarah was sixteen, her family lost their fortune.
  • 3〔   〕Sarah's first job was a salesperson in a department store.
  • 4〔   〕The reason why Sarah hated the parties was that they made her remember the good old days.
  • 5〔   〕Sarah didn't feel like going to the party Jane invited her to.
  • 6〔   〕Thanks to her friend's dress and jewelries, Jane enjoyed herself at the party.
  • 7〔   〕Sarah realized she had lost the earring when the party was nearly finished.
  • 8〔   〕Sarah paid two hundred and forty dollars for the lost earring.
  • 9〔   〕Sarah changed jobs in order to pay back a loan.
  • 10〔   〕Sarah owned her own shop and felt proud of herself again.

[STEP1-B] もしくは冒頭の英文をペーパーベースで速読させて,WPMを算出

[STEP2] 実はSTEP1の話には続きがあることを告げ,続きを想像して英作文させる。

[STEP3]原文のオチをリスニングで理解させる

"Oh, Sarah," Jane said, "I'm so sorry. I should have told you earlier."

"Tell me what?" Sarah asked.

"The earrings I lent you that night for the party were not real diamonds. I never wear real jewelry. The diamonds you were wearing that night were not real --- they were only about twenty dollars. I didn't tell you because you believed they were real and you seemed like you felt very special wearing them. Oh, I'm sorry, Sarah!"

But Sarah just smiled. "Oh, they were real diamonds for me," she said. "They were the most precious diamonds in the world!"

[2]中間層の2年後半に

This actually did happen to a real person, and the real person is me. I had gone to catch a train. This was April 1976, in Cambridge, U.K. I was a bit early for the train. I'd gotten the time of the train wrong. I went to get myself a newspaper to do the crossword, and a cup of coffee and a packet of cookies. I went and sat at a table. I want you to picture ①the scene. It's very important that you get this very clear in your mind. Here's the table, newspaper, cup of coffee, packet of cookies. There's a guy sitting opposite me, perfectly ordinary-looking guy wearing a business suit, carrying a briefcase. It didn't look like he was going to do anything weird. What he did was this: he suddenly leaned across, picked up the packet of cookies, tore it open, took one out, and ate it.

Now this, I have to say, is the sort of thing the British are very bad at dealing with. There's nothing in our background, upbringing, or education that teaches you how to deal with someone who in broad daylight has just stolen your cookies. You know what would happen if this had been South Central Los Angeles. There would have very quickly been gunfire, helicopters coming in, CNN, you know… But in the end, I did what any red-blooded Englishman would do: I ignore it. And I stared at the newspaper, took a sip of coffee, tried to do a clue in the newspaper, couldn't do anything, and thought, ②What am I going to do?

In the end I thought, ③Nothing for it, I'll just have to go for it, and I tried very hard not to notice the fact that the packet was already mysteriously opened. I took out a cookie for myself. I thought, ④That settled him. But it hadn't because a moment or two later he did it again. He took another cookie. Having not mentioned it the first time, it was somehow even harder to raise the subject the second time around. "Excuse me, I couldn't help but notice…" I mean, ⑤it doesn't really work.

We went through the whole packet like this. When I say the whole packet, I mean there were only about eight cookies, but it felt like a lifetime. He took one, I took one, he took one, I took one. Finally, when we got to the end, he stood up and walked away. Well, we exchanged meaningful looks, then he walked away, and I breathed a sigh of relief and sat back.

A moment or two later the train was coming in, so I tossed back the rest of my coffee, stood up, picked up the newspaper, and underneath the newspaper were [  ⑥  ].

The thing I like particularly about this story is the sensation that somewhere in England there has been wandering around for the last quarter-century a perfectly ordinary guy who's had the same exact story, only he doesn't have the punch line.

(2009年佐賀大学)

設問:

1)下線部①を絵に描いて説明せよ。適宜日本語も用いてかまわない。
◆授業ではクッキー一袋・コーヒー・新聞・ビジネスバッグを持って行って,実際に2人の生徒に演技させると盛り上がる。

2)下線部①の状況に至った原因を端的に述べよ。
◆実際の授業では,場面設定の把握のためにここから切り込むでしょう。

3)下線部②から読める心情を以下から選び記号で答えよ。
ア:angry イ:confused ウ:excited エ:love

4)下線部③を日本語に直せ。
◆セリフにして言わせる。できればその地の方言で言わせると盛り上がる。

5)下線部④はどういうことか,具体的に説明せよ。
◆ここも冒頭の生徒に演技の続きをさせると良い。

6)下線部⑤はどういうことか,具体的に説明せよ。

7)空所[ ⑥ ]を補うのにもっともふさわしい英語を答えよ。1語とは限らない。
◆ここが肝。この設問ができているかどうかを見るだけで生徒のセンスが分かる。

[3]中間層の3年前半に

I was not looking forward to my first day in fifth grade at St. Somebody's. I'd lost track of the names of elementary schools our many moves had occasioned. The pattern was consistent, though. My mom, my grandmother, and I would move to a new city, find an apartment, and enrolled me in a new school - always a St. Somebody's. Gran would start a small business, it would fail, and we'd move on. I'd grown used to rarely being in a school long enough to buy a uniform.

設問)下線部を日本語に直せ。

◆登場人物の整理と状況把握をさせた上で,最初の下線部を問うだけでも十分生徒が頭を使って英文を読んでいるかどうかが分かる。中間層の上位集団に対しては二重線部も問うと良い。

[4]中間層の3年後半に

It was a strange sight: a man, standing before a fountain, watching the falling water and tilting his head from side to side. Drawing closer, I saw he was rapidly moving the fingers of his right hand up and down in front of his face.

I was eleven, visiting Princeton University with my science class and the man at the fountain was Albert Einstein.

For several minutes, he continued silently flicking his fingers. Then he turned and asked, "Can you do it? Can you see the individual drops?"

Copying him, I spread my fingers and moved them up and down before my eyes. Suddenly the fountain's stream seemed to freeze into individual droplets. For some time, the two of us stood there perfecting 1)our strobe technique. Then, as the professor turned to leave, he looked me in the eye and said, "Never forget that science is just that kind of exploring and fun."

Nearly half a century later, I've spent an entire career trying to impart Einstein's words to adults and children all over the world: science is exploring, and exploring is fun.

Sadly, 2)far too few schools make the subject appealing. Science courses introduce more new vocabulary than foreign language classes do. Textbooks are as dull as dictionaries. ( 3 ), too many children think that science is only for people as smart as Einstein.

The irony is that children start out as natural scientists, instinctively eager to investigate the world around them. Helping them enjoy science can be easy - there's no need for a lot of scientific terms or expensive laboratory equipment. You only have to share (4)your children's curiosity.

(山口大学前期)

設問)

  • 問1:下線部1)の内容を50字以内の日本語で述べよ。
  • 問2:下線部2)を日本語に直せ。
  • 問3:空欄(3)を補うのにもっとも適した英語を下から選び,記号で答えよ。
       ア As a result  イ First of all ウ For instance エ On the contrary
  • 問4:下線部4)の内容を,本文に即して20字以内の日本語で述べよ。

◆授業でのやりとり例としては…
○全文を二つに分けよ。
○なぜそこで分けたのか?
○前半のエピソードの整理「隣の子にやって見せて」
○前半のエピソードでアインシュタインは何を教えたのか?
○感情のディスコースマーカーSadly, 及びThe irony is that…を着眼点にした英文読解

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