教師の方へ

授業実践記録(物理)

浮力の測定と浮力の反作用

三重県立四日市南高等学校 加藤 英紀

1.はじめに

理科教育において実験の重要性は次期学習指導要領でも明示されているところであり,理科の教員であれば誰しもが十分認識しているところである。しかし,その準備・実験の時間確保のため,なかなか実施できないというジレンマを抱えている方もいるのではないだろうか。今回,簡単な道具でできる実験の一例を紹介したい。

2.実験器具について

生徒実験を行うにあたって,理科機器の会社から購入し実験器具の数をそろえることは予算の面で学校への負担が大きい。今回は,ホームセンターや容易に入手可能なものを使って浮力の実験を行った。演示実験であれば費用も少なく,生徒実験としても比較的安価で済む。当然,精度の部分では劣るが,教科書の記載事項と実際の現象を結びつける役割としては十分であると私は考えている。


使用器具

○キッチンスケール:ホームセンターで購入:1,000円
○プラスチック製容器:100円ショップで購入:108円
・ばねはかり:勤務校にあったもの
・鉄製スタンド:勤務校にあったもの
・おもり:菓子の空容器を利用して自作

3.実験の流れ


①ばねはかりにおもりを吊るし,その値を読み取る。


②容器に水を入れ目盛を読み取り,水の体積を測定する。この水の入った容器をキッチンスケールに乗せ,その値を読み取る。


③④

③ばねはかりにつるしたおもりを水に沈め,目盛の増加分を読み取る。これにより水中にあるおもりの体積を求める。

④ばねはかりと,キッチンスケールの値を読み取り,その変化を調べる。

4.結果

a.ばねはかりの値の減少分が浮力の大きさである
(F=ρVg で求めた値とほぼ一致する)

b.浮力(水がおもりを押す力)の反作用は,「おもりが水を押す力」であり,水が押される(力を下向きに受ける)ことでキッチンスケールの値が増加した

上記の2点が数字として目に見える。実際の授業では黒板に各物体にはたらく力を図示し,「力のつりあい」の式を書いて説明することで理解を深める。

5.おわりに

水につかっている体積を変化させると浮力が変化することや,アルキメデスの原理についてより理解が深まるのではと思いこの実験を行った。本校は45分授業であるが,すべての班がa. b.のところまでたどり着いた。実際に測定する前から「ばねはかりの値が減った分でだけ,キッチンスケールの値が増えるのでは」と予測していた生徒もいた。

今後も,少しでも生徒実験や演示実験を行うことで,生徒にとって物理が「教科書にある公式や計算」だけでなく,現象として「目の前で起こること」でもあると感じてほしい。