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授業実践記録(理科)

生徒自らが問題を見いだし,課題を設定する理科授業

栃木県那須町立那須中学校 吉成 惇哉

私が教員をしている栃木県の那須地区では,理科授業の実践研究が盛んです。これまで,思考力・判断力・表現力を高めるためにアメーバ学習法やパフォーマンス課題などを行ってきました。これまでは教師側が課題を提示しその課題を解決することが目的でしたが,生徒が不思議に思ったことを自らの課題として発見するような授業が必要だと考え,「生徒自らが問題を見いだし,課題を設定する」というテーマにしました。今回は,どのような経緯で授業が出来上がっていったのかについて書いていこうと思います。先生方の参考になればと思います。

今回の研究授業の単元は,凸レンズの実験にしました。この単元では従来,凸レンズの実験では光源台が使われていましたが,私は,生徒からするとなぜそのような実験をするのか,理由が分からずただ実験をやらされているのではと感じていました。

そこで,生徒自らが「凸レンズって不思議!」「凸レンズの仕組みを知りたい!」と思うような授業にしたいと考えました。

1.はじめに

今回のテーマは「生徒自らが問題を見いだし,課題を設定する」です。一番悩んだのが,問題を見いだしの部分です。課題を提示したら,それは生徒の疑問ではないのではないか。生徒からアンケートを取り,疑問に思っていることを解決していく授業にすればいいのか。どうすれば,生徒が本気で問題に取り組み,解決したいと思うようにできるのか…。地区の理科教員が集まり,考え抜きました。

話し合いの流れ

① 課題の質は高いほうが良い?

② 子どもに課題を見いだす力が備わっていないといけない

③ 常になぜ?などの疑問を持たせるような授業をすることが大切

④ 疑問を持たせるなら身近なものにするべき

⑤ 思考の連続性(疑問が新たな疑問を生むようにする)

⑥ 解決への見通しが立てられるような疑問でなければ,疑問で終わりになってしまう

検討会は何度も行われました。そうして生み出されたのが,今回の「生徒が問題を見いだし課題を設定する授業」です。ポイントは,なぜそうなるかの見通しが立てられやすいように光源をデジタルカメラにしたことです。親しみやすい身近なものであり,しかも,スクリーンに画像が逆さに映ることで,実像も実感できる。画像の大小にも気づきやすい。光源,凸レンズ,スクリーンの距離関係も捉えやすい。生徒は夢中になって実験に取り組んでいました。

授業実践事例

理科学習指導案

平成28年12月1日(木)
栃木県那須町立那須中学校
指導者 吉成 惇哉
実施学級 1年1組31名(男子17名 女子14名)

(1) 小単元名 「凸レンズによってできる像」

第1分野(1)-ア(イ)凸レンズの働きについて

(2) 小単元の目標

光についての疑問を解決するために,凸レンズの働きを知る実験を行う。物体と凸レンズの距離を変え,実像ができる条件を調べさせ,像の位置や大きさ,像の向きについての規則性を定性的に見つけることができる。

(3) 小単元,および目標のとらえ方

本小単元で育成したい資質・能力は思考力である。その中でも,自然現象の中に問題を見いだして見通しをもって課題や仮説を設定する問題発見解決力を育みたい。光の性質に入ってから,光について生徒が常に知的好奇心を持って身のまわりの自然の事物・現象に接するようにし,その中で得た気づきから疑問を形成し,課題として設定することができるようになることを重視してきた。

今回の授業では,凸レンズのはたらきについての疑問を投げかけ,生徒自ら課題として設定できるようにしていく。自ら課題を設定することで,主体的に自然事象とかかわり,それらを科学的に探究しようとする態度を身につけることができる。また,意欲的になることで,意見交換や議論も活発になり,対話的な学びにもつながると考えられる。

生徒達は光についてイメージすることが難しいようなので,本学習では物体・凸レンズ・スクリーンの関係を捉えることにより,凸レンズのはたらきを理解させていきたい。

(4) 大単元における本小単元の位置づけ(10時間扱い)

小単元名 時数 具体的内容(丸数字は時数)
光の進み方と光がはね返るときのようす 1 光の進み方と光がはね返るときのようすを調べる②
  光の直進性,光の反射の法則
2 ものの見え方を知る①
  乱反射,鏡での見え方
光が通り抜けるときのようす 1 光が空気から水やガラスを通るとき,水やガラスから空気を通るときのようすを調べる③   光の屈折,全反射
凸レンズのはたらき 1 凸レンズを通る光のようすを知る①
  焦点・凸レンズを通った後の光の進み方
2 物体と凸レンズと像の関係を調べる(本時)①
3 物体と凸レンズの距離による像のでき方を調べる①
4 凸レンズによってできる像の作図をする。①

(5) 本小単元の評価

評価 評価規準 おもな評価方法
自然事象への関心・意欲・態度 ・光の反射・屈折・凸レンズによる光の現象に進んでかかわり,事物・現象に関心をもって取り組んでいる。 ・協働して意見をまとめたり,発表したりしている。 ・授業中の活動への取り組む態度や協働学習への提言などの見取り ・レポート
科学的な思考・表現 ・光の反射の法則,屈折について実験結果から考察することができる。 ・像が凸レンズや物体との距離によって大きさが違うことを考え,説明している。 ・協働学習の発言やまとめ方,意見の切り返しなどの授業中の見取り
観察・実験の技能 ・光の反射・屈折の実験を正しく行うことができる。 ・凸レンズがつくる像の大きさや,凸レンズと像の距離について記録している。 ・単元のまとめテスト結果の見取り
・実験中の活動の見取り
自然事象についての知識・理解 ・光の反射の法則や屈折,全反射の角度には規則性があることを理解している。 ・レンズに垂直に入ってきた光はレンズの後の焦点を通ることを理解している。 ・単元のまとめテスト

(6) 本時の指導

学習活動 養いたい能力(・)指導上の留意点(○)
1 凸レンズを使うと何ができるか確認する。 ・ものを大きく見ることができる,光を集めることができる以外にも,凸レンズを使うとできることがあることに気付くことができる。
2 本時のねらいを知る。
凸レンズについて疑問に思ったことを解決していこう
3 個人で凸レンズを使って自由試行学習をする。 ・凸レンズを目から離して遠くの物体を見てみると,物体が逆さに映ることに気付くことができる。
・気づいたことを発表する ・蛍光灯や外の風景が壁やノートなどに逆さに映ることに気付くことができる。
○なかなか気付かない場合は,教師が実際に操作を行い,生徒に気付かせる。
○太陽を直接見てはいけないことを指導する。
4 グループで光源,スクリーン,凸レンズを使って実像をつくり,実像が大きくなったり,小さくなったりすることに気づく。 ○光が集まって紙などに映る像を実像ということを説明する。
・実像は物体より大きくなったり,小さくなったり,逆さに映ったりすることに気付く。
○机間指導をしながら生徒のつまずきを確認し,支援していく。
5 実像が大きくなったり,小さくなったりする条件を調べる。 ・こういう状態のときにこうなるなどのあやふやな表現ではなく,言葉で説明することができる。
・ホワイトボードにまとめた後,発表する ・凸レンズから光源までの距離,凸レンズからスクリーンまでの距離など,距離に着目することができる。
6 授業の振り返りをする。 ○次の授業で,実像が大きくなったり,小さくなったりするのは距離に関係していることを確認し,詳しく学習していくことを伝える。

2.成果と課題

デジタルカメラを光源としたことで,生徒の食いつきは抜群でした。光学台を利用していないので,光源-凸レンズ-スクリーンの距離を自由に変えて試行錯誤しながら実験をしていました。生徒の中には,「映画館のスクリーンもこの現象かな?先生,試してみてもいいですか?」という声も上がっていました。距離を変えると実像の大きさが変わることはよく理解できていたと思います。また,授業後の問題を解く際にも,「あのデジカメの実験を思い出してみて!」と一声かけるだけで,生徒は「あっ,そうか!」と記憶を呼び起こしていました。

興味や関心が持てるような教材を用意すると生徒たちは自ら学んでいくことを実感しました。

3.授業のようす

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