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授業実践記録(理科)

協同学習を通した言語活動の充実

静岡県静岡市立清水興津中学校 教諭 兼田 博光

1.はじめに

今回紹介する実践は,前任校で3年間継続して行ったものである。

本実践では,校内研修のテーマ「生徒が実感をもって,つながり合いながら主体的に学ぶ授業」の「つながり合いながら主体的に学ぶ授業」に焦点をあて,『全ての生徒に学びが成立するための授業の研究,授業改善』に重点をおいたものである。「つながり合いながら主体的に学ぶ授業」とは,どのような授業だろうか。それは,生徒同士が自分の考えを表現し合う中で,自分自身が変容していったり,考えが深まっていく授業をイメージしている。そこで,言語活動の充実を本研究の核とした。これは,平成20年3月に告示された学習指導要領に,各教科等を貫く重要な改善の視点として言語活動の充実が挙げられていること。また,全国学力・学習状況調査の質問紙調査の結果から,「自分の考えを話す・発表する・書く」について課題が見られたことにある。質問は国語に関するものであるが,知的活動等の基盤となる言語の役割の観点から,全ての学習活動に関わる問題だと考えた。そこで,理科における言語活動を重視した指導を充実させ,生徒の思考力・判断力・表現力等を育んでいきたいと考えた。

2.実践方法

① 主体的な学び ~協同学習を通して~

ア 小集団学習による生徒のつながり合い

男女混合の3~4人を基本としたグループを編成し,小集団での学習を1時間の授業の中に位置づけ,生徒同士のつながり合う学びを大切にした。

イ ジグソー学習による表現し合う場の設定

小集団での学習の発展的な学習形態として,各単元に発展的な学習内容で最低1回のジグソー学習を位置づけた。ジグソー学習とは,通常の授業を行っている学習班で課題を分担し,同じ課題をもつ生徒同士で再構成した実験班で追求し,表現し合う場として学習班に戻り実験内容と考察を報告する学習形態である。

② 言語活動の充実

ア つながり合う学びの中での言語活動の充実

協同学習における他者との関わりの中で,「実験・観察結果を発表する」,「考察したことを発表する」など,相手にわかりやすく伝えることに重点を置いた。

イ 言葉を重視することによる言語活動の充実

自然の事物・現象を対象とする理科において,体験(実験・観察)の充実を重視した。こうした体験(実験・観察)で作成したレポートや自己評価表の学習内容の要約部分を中心に,基礎・基本となる科学的な言葉を使って説明したり,図や表を使ってわかりやすく書いてまとめたりすることに重点を置いた。

3.実践経過

① 協同学習の導入と言語活動の充実

ア 小集団での学習

本実践では4人グループの協同学習を授業に位置づけ,つながり合う学びを実践した。協同学習での私の役割は,話し合いが成立していないグループへの支援,学習が困難な生徒への支援を主とし,課題解決は小集団のつながり合う学びの中に求めた。特に配慮したことは次の2点である。1点目は「わからない」ということをはっきり伝えられる人間関係の形成である。しかし,学習が困難な生徒にとって,この言葉を発すること自体難しいのが事実である。「わからない」と感じている生徒のほとんどは,他者に聴くこともできず,自分でやろうとしてしまう。悪循環である。そこで,グループのメンバーから声をかけたり,教師からグループ活動に参加できるよう支援したりし,協同学習の中で必ず一回は発言するようにした。2点目は「説明できるようにしよう」ということを意図的に指導した。説明できる(自己説明)とは,単に知識を暗記して習得するものでなく,より高いレベルで知識を習得し,活用につなげていくメタ認知だと考えている。協同学習では,生徒の学力の個人差をどう埋めていくかが課題となる。他者とのつながり合い,特に言語活動の中で,学力の高い生徒に対しては,自己説明というメタ認知能力を育てる高次な思考を,学力の低い生徒には,最低限押さえたい内容を身につけることで目標の実現をめざした。

最初はこうした授業形態に慣れない生徒が,教師に助けを求めるケースも多かったが,協同学習を積み重ねることで,生徒同士のつながり合いが生まれていった。小集団での学習が4人で行われることから,これまで自分の考えを発表できなかった生徒も気軽に発言できるようになり,多くの生徒が積極的に授業に参加できるようになった。

このような学びを充実させていくことで,話す・聴くという活動の必然性から,「メモをとる」,「発表するために,自分の考えを書いてまとめる」,「わかりやすい説明をするため,図や表を活用する」という言語活動に結びつくものが出てきた。協同学習の長所である生徒同士のつながり合いが,言語活動を充実させることとなった。

イ ジグソー学習

本実践では,各単元で1回のジグソー学習を,発展的な学習内容で位置づけた。ここでは,「葉のつき方の規則性について調べてみよう」を学習問題とした授業実践から検証をしたい。授業ではアジサイ・オオカナダモ・ハルジオンの3種類の植物の葉のつき方を調べることを課題とした。この授業で作成したレポートには,初めはうまく考えられなかったり,表現できなかったりした生徒が,学習班や実験班でのつながり合う学び,言語活動を通してレポートにまとめたものが多く見られた。この学習では学習班のメンバーに分かりやすく観察結果を伝えるために,植物体のスケッチを活用して説明したり,体全体を使って表現したりするなど,生徒の生き生きとした姿が見られた。また,メンバーから報告を受けた内容を,レポートに書き留めながら真剣に聴き合う姿も見られた。さらに,一人の生徒が資料集で見つけた「対生・輪生・互生」という専門用語が,その生徒から班員(学習班・実験班)に,班員から学級全体へと伝わり,生徒同士のつながり合いから学びが広がっていくことを確認できた。

ジグソー学習を成立させるのは困難が予想されたが,生徒たちは好意的に受け入れ,意欲的に活動した。小集団の協同学習での自信が大きく影響していたと感じた。ジグソー学習における生徒の感想からも,「責任感が高まる」,「少人数で発表しやすい」,「他者の考え方が分かって楽しい」など,学びに向かっていこうとする意識が感じられる。ジグソー学習の実践では,小集団での協同学習で構築された信頼関係が自信となり,こうした個の責任を明確にしたジグソー学習も楽しんでいるように思えた。その反面,「自分が直接調べたことではないからわかりにくい」という感想もあり,ジグソー学習の短所を,今後どのように克服するかなどの課題も明確になった。

4.実践の成果と課題

① 協同学習を授業に位置づけることで,つながり合いが実現し,主体的な学びに向かい,言語活動が充実していった。

言語活動を苦手としていた生徒の実態があったが,協同学習を導入することで,言語活動について自信がついたと考える生徒が増えてきた。これは,表現する場を意図的に授業に取り入れた要因もあるが,授業の中での人間関係づくりに配慮し,聴き合う関係を構築できたこともこうした成果に結びついていると考える。今年度の実践から,言語活動について,「自分の考えをもつ」,「自分の考えを発表するために自分の考えをもち,考えを書いてまとめる」,「グループで発表する」という点で成果があった。こうした活動を苦手と考えていた生徒にとって大きな進歩であると考える。

本実践で導入したジグソー学習については,もっとやってみたいという感想も見られるなど,コミュニケーションする学びを楽しんでいるようである。こうした学びを積み重ねていくことで,多くの生徒たちが授業に積極的に参加するようになり,授業が楽しいと感じる一因となっていると考える。

② 課題

より質の高い協同学習を実践していくには,「つながり合う必然性」と「課題そのものの必然性」が重要な要素になる。生徒が協同学習に必然性を感じる学習問題や発問の研究,協同学習を導入した授業での教材研究が必要不可欠である。

また,理科に求められる言語活動とは,目的意識をもった実験・観察を起点とし,「論理的に説明(結論→理由)する」,「科学的な根拠からレポートをまとめる」,「グラフや図を用いてわかりやすく説明する」等がつけたい力としてあげられる。協同学習による学びの中で,こうした言語活動の質的充実を図る一方,レポートや自己評価表を科学的な言葉を用いて表現することを充実させたい。こうした言語活動の充実が,ジグソー学習における生徒の感想にあった,「自分が直接調べたことではないからわかりにくい」という課題の解決の糸口になると考える。

5.参考文献

学校の挑戦-学びの共同体を創る- 佐藤学(著) 小学館
ジグソー学習入門 筒井昌博(編) 明治図書
学びの意味を育てる理科の教育評価 堀哲夫(著) 東洋館出版社

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