私の実践・私の工夫 生活科

2年

教師の的確な支援で子どもたちに「豊かな学び」を
〜「いきものと ともだち」の実践〜

徳島県徳島市立加茂名南小学校
榎本 久美

はじめに

生活科の学習は,子どもの思いや願いを大切に展開される。そのため,学習は多種多様なものとなり,教師にはその個々に対応したより的確な支援が求められる。したがって評価規準から個々の活動に即した具体的な子どもの姿を設定することが豊かな学びを生み出す活動において重要になる。

具体的な子どもの姿をイメージするには,指導要領の目標や内容を十分理解し,つけたい資質・能力を明確にもった上で,教材に対する教師の理解や児童の活動の様子を把握していくことが必要となる。それには教師の資質の向上が求められる。これまでに行ってきた自分自身の支援のありかたを問い直したい。

1.単元の目標

2.指導計画(全12時間)

第1次 おきにいりのいきものをみつけよう(3時間)

第2次 いきものとともだちになろう(4時間)

第3次 おきにいりのいきものをしょうかいしよう(5時間)

3.実際の活動

[アメンボグループ]の活動

(1) おきにいりのいきものをみつけよう(3時間)

小単元の評価規準 具体的な子どもの姿
  • 学校にいる生き物に関心をもち,進んで生き物探しをしている。
    (関心・意欲・態度)
  • プールをのぞき込んで観察している。
  • プールの中にアメンボがいるよ。おどろいたなあ。
  • アメンボは水の上を泳いでいるね。どうして浮かんでいるのかな。
教師の思い

清掃前のプールには,ヤゴやオタマジャクシ,アメンボなどたくさんの水生生物がいる。
こんな所にも生き物がいるという驚きを味わわせ,薬を入れて水を抜く前に生き物を助けたいという思いを高めることができると考えた。

A児の活動 評価と支援
  • 水たまりや池で見つけていたアメンボがプールにもたくさんいたということに驚いた。
  • このままではアメンボが流されてしまうという思いから,アメンボを助けて教室で飼育したいという願いをもった。
  • 生き物を探しに行くときに,プールへ行ってみる。事前にプールの様子を調べておく。
  • プール開きまでに,薬を入れて水を抜くことを知らせ,「アメンボはどうなるかなあ。」と言葉がけをした。

飼育小屋やビオトープといった生き物がいると予想できるところだけでなく,プールという意外な場所を探してみたことにより,学校にいる生き物に対する関心が高まった。

(2)いきものと ともだちになろう(4時間)

小単元の評価規準 具体的な子どもの姿
  • すみかを作るために必要な物やえさを進んで準備したり,かかわろうとしたりしている。
    (関心・意欲・態度)
  • アメンボのえさは何だろう。図鑑で調べよう。
  • アメンボの体の様子をもっと詳しく見たいな。虫眼鏡で見てみよう。
  • 飼育する生き物に合ったすみかを作っている。
    (思考・表現)
  • 死んだ虫の体液を吸うんだって。えさをやってみよう。
  • アメンボは水の上をすいすい泳ぐね。虫かごに水を入れて飼ってみよう。
  • 生き物の世話を進んでしている。
    (気付き)
  • えさは毎日やろう。
  • アメンボの足は何本かな。
  • アメンボはぴょんぴょん跳んだり泳いだりして不思議だね。
教師の思い

以前指導した際に,アメンボのえさが分からず,飼育させることができなかった経験から,世話の仕方を考えるときに,まずえさについて調べさせようと考えた。

アメンボの足の数や長さ,体のつくりに気付かせたい。この活動は,3年生以降の生物を観察する力の基盤になる。繰り返しかかわるとともに,観察の視点として足の付き方や数,手触りなどを提示したい。生き物の不思議さを感じ取らせたい。

A児の活動 評価と支援
  • アメンボの飼い方をインターネットで調べ,死んだ虫の体液を吸うということが分かった。
  • ダンゴムシの死骸を浮かべてみて,アメンボがしがみついて体液を吸っている様子を観察した。
  • 友達にも知らせ,アメンボは他の生き物の命をもらって生きているという気付きを共有した。
  • アメンボを運びながら,「手の中でぴょんぴょんとんでいる。」
  • 「体に比べて足が長いなあ。だから浮かんでいるのかな。」
  • アメンボは何を食べるのかな。と言葉がけをした。

インターネットで調べることにより求める資料を的確に探すことができた。また,アメンボをたくさん飼って,観察している人がいるということに驚き,自分の活動に自信をもつことにつながった。

  • 共に驚くことで発見を価値付け,気付きを共有化することができた。
  • 図鑑は何種類か用意して,必要な情報を得られるようにしておく。
  • 意欲をもって細かいところまで観察できるよう,虫眼鏡や実体顕微鏡を準備した。

実体顕微鏡を用意すると,観察したいという意欲が高まり,進んで細かいところを観察できた。

(3)おきにいりのいきものをしょうかいしよう(5時間)

小単元の評価規準 具体的な子どもの姿
  • 今までの活動を振り返り,観察したことや発見したことを分かりやすく伝えようとしている。
    (関心・意欲・態度)
  • アメンボの足は6本だったよ。体に比べて足が細長いよ。
  • 観察カードに描いてある絵をよく見て大きく描こう。
  • アメンボがプールにたくさんいたよ。死んだ虫を食べるんだよ。幼稚園の子は驚くだろうな。
  • 世話の工夫や世話をして感じたこと,生き物の様子を分かりやすく表現することができる。
    (思考・表現)
  • 幼稚園の子に分かりやすいように大きな絵にしよう。
  • アメンボを見せながら説明しよう。
  • 生き物の世話や発表を通して,生き物への親しみが増し,上手に世話ができるようになったことに気付いている。
    (気付き)
  • 幼稚園の子がじっと説明を聞いてくれたよ。分かり易く説明できたからだね。
  • アメンボの世話をよくしたから上手に説明できたね。
教師の思い

前単元「おきにいりのばしょをしょうかいしよう」では,学校探検で気に入った場所を2年生に発表した。たくさんのよいところを見つけてもらって自信につながった。今回も友達同士で互いの活動を紹介し合うことで気付きを広げたり深めたりすることができるであろう。また,幼稚園児に紹介する場を設定することで,相手意識をもって分かり易く表現しようとするだろう。気付きは整理され,明確になるものと考える。達成感をもたせ次への活動意欲につなげたい。

A児の活動 評価と支援
  • 絵で表すことが得意なので,アメンボを絵に描くことにした。
  • 観察しながらも4本しか足を描けていなかったが,教師やB君の言葉がけにより,実際に確めながら6本の足を描いた。
  • 互いに気付きを確かめ合いながら水面の波紋を描いた。
  • 「(アメンボは小さいから)大きく描くとよく分かるかな。」とつぶやきながら絵に描いた。
  • 観察を通して大好きになったアメンボのことを知ってもらいたいという気持ちをこめて,自信をもって伝えることができた。
  • ペープサートや劇化,粘土などで表す,絵に描くなど様々な方法を提示し,表したいことに適した方法を選択できるようにした。
  • 様々な材料を準備し,自由に選択できるようにした。
  • 同じ生き物にかかわっている児童をグループにして,協力して作業できるようにした。
    (気付きの共有化を図る場の設定)

  • 前時までの観察カードや活動の様子を写した写真などを掲示した。
    (振り返りの場の設定)
  • 一人ひとりの気付きを把握し,声をかける。

観察カードで一人一人の気付きを把握しておくことで,的確な声かけができた。足の形や長さに気付いているが,足の数には気付いていない児童には,足の数に気付いている児童に質問させるという支援を行うことができた。

4.おわりに

具体的な子どもの姿を設定するためには,目の前の子どもたち一人一人に寄り添うことが大変重要だった。何に興味をもっているのか,どんなことに気付いているのか,どんな方法で表したいのかを行動や表情,会話やつぶやきからつかみとっていった。そこから次の時間の姿を設定し,どのような支援が必要なのかを考え,準備した。自ずと評価と支援が一体化していった。毎時間の観察カードへのコメントも,設定した具体的な子どもの姿に照らすと今まで書いていたものより子どもの気持ちに寄り添ったコメントになってきた。また,次の活動へとつなげたり広げたりできるものとなった。今まで何気なく行ってきた支援がより明確に的確になったと感じられる。

教師自身が支援を工夫改善していくことで,子どもたちの活動が豊かなものとなっていった。生き物と生き生きとかかわり,生き物の不思議さを感じ,命のあたたかさに触れることができた。そして,自分の気付きを工夫を凝らして表現する楽しさを味わった。

今後も自分自身の支援は適切かどうか見直しながら工夫し改善していきたい。


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