2年
飛び出せ!空気くん(空気とあそぼう)

愛知県豊橋市立富士見小学校
永田 真吾

 

1.単元

 飛びだせ!空気くん(空気とあそぼう)

 

2.単元目標

夢中になって空気砲作りを行い,自作した空気砲を使って遊んだり友だちとかかわったりしながら楽しんで活動する。(関心・意欲・態度)
空気を利用したおもちゃを友だちと比べたり,空気砲を改良したりすることで,より強い空気砲を作るにはどうしたらよいかを考え,それを伝えあうことでさらに強い空気砲へと工夫することができる。(思考・判断)
身近なものを使って,空気を利用したおもちゃで遊ぶ面白さや空気の不思議さに気付くことができる。(気付き)

 

3.単元について

 空気は,目で見ることも触る感触を実感することもできない。その空気を実感する道具として,空気砲はすぐれた遊び道具である。箱の大きさ,穴の形や大きさ,たたき方などを変えることにより,押し出される空気の量が変わってくる。そのことを,友だちと比べながら空気砲そのものを工夫して作ることで,より空気の出る道具を作ることができ,楽しく遊べることに気付いていくと考える。

 また,子ども達にとって身近な自然を教材として扱い,自然で遊ぶ面白さを実感させることで,気付きの質も高めることができるのではないかと考えた。そのような実践に取り組むことで,自然のすばらしさも体感し,その経験が中学年以降の理科の学習にもつながっていくであろう。

 

4.単元構想(全17時間)

詳細な単元構想(PDF:371kバイト)


5.授業の実際

(1)空気遊びは楽しいな(第1〜4時)
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的当てにすると楽しいなあ
 単元の導入では,エアーポール(長さ3mのビニールロケット)と巨大風船を使った遊びを行った。走りながらエアーポールに空気を入れ,投げて遊んだり,身長以上もある巨大風船を弾ませて遊んだりした。

 第2時から第4時では,子ども達が自由に空気遊びをする時間を設けた。風船をふくらませて遊ぶ子,大きなゴミ袋をパラシュートのようにして遊ぶ子,風船的当てをする子のように,さまざまな遊びを考え,空気遊びを楽しむ姿があった。
 
(2)身近な容器を使った的当てバトルをしたよ(第5・6時)
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いっぱい倒れて欲しいなあ
 第5・6時では,前単元「水鉄砲で遊ぼう」で使用した洗剤やマヨネーズの容器を使って,簡単な的当てバトルを行った。子ども達は,「洗剤の容器は先が細いけど,マヨネーズの容器は先が太いから空気が出やすい」のように,先の太さと空気の出方を関連づける気付きをすることができた。
 「どんな容器が一番よく空気が飛んだか」の話し合い活動を行った後,子ども達から「もっと的を倒したい」「段ボールで作りたい」という意見が出た。そこで,次の時間では段ボールで空気砲作りを行うことにした。
 
(3)段ボールの空気砲を作ったよ(第7・8時)
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早く打ちたいなあ
 ここからは,友だちとかかわり合いながら活動できる場へと広げたいと考え,3人1組のチームで空気砲作りを行うことにした。どのチームも互いに自分の考えを出し合いながら,満面の笑みで製作を行った。

 「段ボールが大きい方が空気がいっぱいあって,強くなるよ」のように,空気砲の強さと空気の出る量を関連づける気付きをすることができた。繰り返し試し打ちをしながら,徐々に強い空気砲を作り上げることができた。
 
(4)第1回チーム対抗的当てバトルをしたよ(第9〜11時)
 
 チームごとに工夫して作った空気砲を比較することで,より強い空気砲を作りたいという願いをもたせられると考え,的当てバトルを行った。

 1回目の的当てバトルでは,ほとんどのチームが得点することができなかった。そこで,「強い空気砲を作るにはどのようにすればよいのか」,話し合いの場を設けた。そこでは,段ボールの大きさ,穴の大きさ,たたき方について話し合った。話し合い後,チームごとに最強の空気砲を作るための工夫点をまとめた。
 
(5)完成!これが最強の空気砲だ!!(第12・13時)
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これできれいな円が描けるよ
 チームごとに段ボールの大きさ,穴の大きさ,穴の形を決め,最強の空気砲を完成させていった。ここでは,写真のように,物をあててきれいな円を描くなど,チームごとに工夫して製作する姿が見られた。
 
(6)第2回チーム対抗的当てバトル「最強チーム決定戦」(第14時)
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全部倒れろ!
 最強チームを決める日の朝,子ども達はチームごとに集まって「ここをこうやってたたくといい」のように作戦を立てる姿があった。空気で遊ぶ面白さを実感しているからこその行動と考えられる。

 決定戦では,どのチームも今までの経験を生かし,たたき方,空気砲を置く位置や向きに注意する様子が伺えた。結果は,ほとんどのチームが20点以上(30点満点)得点することができた。
 
(7)空気砲でもっと遊ぼう(第15〜17時)
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輪になってるよ!
 自分達で課題を解決しながら空気砲作りを行ってきた子ども達。空気の存在に気付くことはできても,目で見ることができずにいた。そこで,空気砲から空気が出る様子を見ることで,より空気で遊ぶ面白さを実感させられると考え,煙を入れて観察した。子どものふり返りからは,「すごくでかい輪っかが出て,すっごく楽しかった」と驚きや遊ぶ面白さを実感する記述が見られた。

 最後に,目一杯空気砲で遊ぶ時間を設けた。友だち同士向き合って打ち合うなど楽しく遊ぶ姿が見られた。子どものふり返りからは,「打たれたら痛かったので,空気も当たれば強いんだなぁと思いました」と空気を確かに感じ,空気の存在を実感している納得を伴った気付きをすることができた。
 
 その後,ペットボトルの空気砲を紹介し,子ども達の身近にあるものでも空気砲が作れることを紹介して単元を終えた。

 

クリックで拡大 6.単元を終えて

 右の感想は,単元終了後にA児が書いたものである。「まとがいっぱいたおれたのでもっとたのしくなりました」の言葉からは,的当てバトルをしたことにより,空気で遊ぶ面白さにのめり込んでいったことが分かる。

 また,文末の「空気ってすごいなー」からは,自然で遊ぶ面白さを実感し,自然への畏敬の念を抱き始めた言葉と受け取ることができる。

 

7.指導の成果

空気遊びの時点では遊べたから面白いという状態であったが,的当てバトル後は強い空気砲を作れた喜び,友だちと競う面白さへと変容し,自然で遊ぶ面白さを実感する子が育った。
 
話し合いの場や繰り返し対象とかかわらせる時間を設けたことで,「関連づけられた気付き」や「納得を伴った気付き」のような気付きを多くすることができ,気付きを質的に高めていく子が育った。

 

8.今後の課題

 本実践では自然を「空気」に限定して扱った。今後は,空気以外の教材を使い,生活科の9つの内容のいくつかを包括的に取り入れた単元の開発を課題としたい。

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