1年
アサガオの世話を通して,豊かな気付きと表現の育成          

広島県呉市立波多見小学校
宮本 千鳥

1.実践にあたって

 本単元は,一人一鉢で長期にわたる栽培活動を通して,今後の学習の基礎となる,世話の仕方や観察の仕方などを学ぶことに大きな意義のある学習である。初めて自分で種まきをし,世話を通して変化や成長の様子を感じるに適した教材として,アサガオを選んだ。アサガオは,入学後まもない児童でも栽培が用意であり,変化や成長が早いだけでなく捉えやすい。そのため,自分のかかわりを通して満足感や成就感も味わうことができると考えた。


2.単元名

 おおきくなあれ 〜アサガオをそだてよう〜


3.単元の目標

 アサガオの世話を通して,その変化や成長の様子に関心をもち,気付いたことを表現することができる。
 【学習指導要領の内容(7)「動植物の飼育・栽培」】
つけたい力
 アサガオの世話を通して,種・双葉・本葉・つる・つぼみ・花などの変化や成長の様子を,諸感覚[視覚・嗅覚・(聴覚)・触覚・働きかけ]を通して感じ,言語による表現をすることができる。
 継時比較や友だちと比較することにより,自分の気付きをより一般化することができる。
 気付きを言語による表現にて意見交流を行い,得た情報から自分なりの考えをもつことができる。
 アサガオの観察を通して,科学的なものの見方(観察の視点)を養う。


4.指導計画

(1) よろしくね,私のアサガオさん
種の観察(種に名前をつけよう)
植え方を知ろう
種を植えよう
(2) 発見マンになろう
観察(芽,双葉,本葉,つる,つぼみ,花,種)
(3) アサガオさんとの思い出づくり
花(押し花づくり,色水遊び,風船遊び)
つる(リースづくり)
種取り
(4) アサガオアルバムを作ろう
(5) 種をまきたいな


5.具体的な支援

(1) ワークシートの工夫
ポイント!
見る視点を与える
見た部分のみを拡大してかかせる
絵のどこについて発見したかを矢印で示させる

(2) 体験したことを言語で表すように促す
ポイント!
事象と気付きを言語でつなげる

(3) 見取り表の作成
ポイント!
児童の気付きを細かく見取り,指導と評価の一体化を図る

PISA型読解力を育むための思考の深化表
  レベル1 レベル2 レベル3 レベル4
生活科における読解力

情報の取り出し1

(直感的・・・視覚のみ)

情報の取り出し2

諸感覚を働かせて得た情報
(視覚以外)

分析

比較により得られた情報分析

熟考・評価

原因と根拠に気付く
育てたいものの見方・考え方
全体を見る



大きさ 等
部分を見る

どこに
何が
どれだけ
どうなっている
比較する

同時比較
継時比較
関係付ける

二者の関係を把握して理由づける
獲得したい言葉
育てたい言語表現
形容詞
比喩表現
動詞 数詞 名称
オノマトペ表現 比喩表現
副詞
比較表現
類推表現
□は―だ。
□は―みたい。
□は〜に○つ―いる。
□を…すると,××になる。
□は〜するくらいーだ。
□は△より―だ。
前より―になってきた。
全部―だ。
□は―けれど,△は…。
□と△を比べると,
〜だから―だ。
□は―だ。わけは〜からだ。
〜するためにーだろう。

(4) 評価方法
ポイント!
児童に知らせておくことで,意欲を高める

6.活動の様子

 ふしぎだなあ。
 あさがおのおしっこは,茶色いんだよ。
 ぼくらと同じみたい。
 水をあげたら,栄養をいっぱいとるから,茶色いおしっこになるのかな。
 
 
 大変だぁ〜!
 つるが友だちのアサガオとからまってる〜!
 先生,何かいい方法ないですか?
 
 うわぁ〜!見て見て!!
 つるをほどいたら,ぼくらのせよりも大きいよ!!
 見て見て!
 つぼみの中を開いてみたら,棒みたいなものが入っているよ!
 ほら,これこれ。
 棒の先に丸いものとお月様みたいなものがついているでしょ!?

7.成果(○)と課題(●)

 入学まもない児童でも,見る視点を与えることにより,細部にわたって様子を詳しく観察することができるようになった。また,「○○より〜だった」「だんだん〜になってきた」と比較する気付きも増えてきて,継時比較による違いから,成長の様子を捉えることができた。
 1人一鉢で栽培活動を行い,自分のかかわりによって成長の様子に違いが見られたことから,自分への気付きも得られ,満足感や達成感を味わうことができた。
 事象と言葉とを結びつけることにより,表現が豊かになり,正確に伝わりやすくなった。「何と同じくらいの大きさ」や「何より〜だ」等と,何を基準にしてみているかを明確にすることで,児童の表現力も身についてきた。
 ワークシートも,児童の発達段階を考えて無理なく書かせるようにし,実態に応じて支援(見る視点を添えた言葉)を外していけるようにすることで,児童も楽しんで書きながら,観察の仕方を学ぶことができた。
 今後も継続した栽培活動を行うことで,より植物を大切にしようとする心情と態度を育成することが大切である。

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