2年
かぞく たんけんたい          
〜ひとりじゃないよ なかよしかぞく〜          

新潟県A教諭



1.導入での「得意」調べ 〜なぜ,得意調べなのか〜

 家族紹介・家族自慢・・など,様々な方法がある中で,あえて,家族の「得意」に目を向けさせる。

 「紹介」ではどうしても家族構成に目が向き,片親家庭の子どもたちは何らかの思いをもつことが予想させる。「自慢」では表面的に見つけられる特徴や内容が出てくる割合が高くなる。しかし,「得意」となると個人の技能的な内容が取り上げられ,そこに至るまでの本人の努力が伴う。自分で得意だと思う気持ちは「満足」「うれしい」「自慢」「自信」という気持ちにつながり,他者のそれを見るときには「すごい」「うらやましい」などとなるであろう。それを家族に対して感じるときは「家族のよさ」「自慢」「誇らしさ」「喜び」としてとらえることが可能となる。その家族と自分とのかかわりを考えるとき,「だから自分は・・・と行動しよう」と振る舞い方に目を向ける。


だから私は,導入で「得意」をていねいに扱っていきたい。

 また,自分に対しても他者に対しても,肯定的に「良さ」で見る経験は,認め合いつながり合える人間関係を形成する土台となる。


2.本単元を学習する意義 〜「この時代だからこそ!」〜

 平成11年度生活科では,主として次の2つのことを目指すようになった。

 第一は,「家庭の団らん」「家族で過ごす楽しみ」「家族一人一人の良さ」など,家庭での自分の生活を考える視点を広げ,家族の一員としての自覚を高めることである。家族に一層の親しみをもち,家族を大切に思い行動するとともに,自分の思いや願いを持って接することができることである。家庭は児童にとって生活の場であり,自分を支えてくれるところである。

 第二は,子どもが自ら健康的な生活をしようとする意識を高めることである。これらを通して,子どもが自分を見つめ,自分の良さや可能性に気付き,家族の一員として,よりよい生活を使用とする意欲を高めることが期待される。

 現在の家庭は核家族や少子化などにより,世代の違う人と一緒に生活をする経験が少なくなっている。また,子どもを養育する大人が日々の生活に追われ,大人中心の生活に子どもを置いている現状がある。これらは,「人とのコミュニケーション能力の低下」,「家族の会話が減少」,「生活習慣や生活リズムの乱れ」など,子どもたちに大きな影響を与えている。子どもの成長にとって,家庭の役割は大きい。しかし,十分でない部分について学校が積極的に家庭に伝えても,なかなか理解を得ることが難しい現状がある。そこで,学校が教育活動の中で子どもたちに自立を促すよう働きかけ,家庭での生活,自分の役割,家族とのかかわりなどについて子ども自身が見つめ直すことができるようにすることが必要である。

 当学級においても例外ではない。

 子どもたちはうれしそうに家族の話をする。一方で,恥ずかしさからほとんど家族の話をすることがない子ども,個々の家族構成や家庭事情から,語ろうとしない子ども,なかなかかまってもらえずに寂しい思いをしいる子どももいる。しかし,どの子どもも家族に愛されたいと願い,家族と楽しい時間を過ごしたいと願っている。

 家族がいること自分にしてくれることはとても「当たり前」で,自分を支えてくれるものとして「感謝」のイメージはほとんど無い。かといって,全く感じていないのではない。やはり,「当たり前」が強いのである。当学級では,一人っ子や末っ子が4割を超える。また,地域柄,祖父母と同居あるいは保護者が帰宅するまで面倒を見てもらっており,自分に手をかけてくれる大人が多い生活環境の中で育っている。当然,周りの人に「してもらう」ことが多く,大人も,わかっているけれども自分がした方が早いとなる。一方,子どもに充分手をかけられない事情のある家庭も少なからずある。

 この学習を通して家庭に理解と協力を求め,保護者も子どもとともに自分にとって家族にとって互いがどんな存在か,家庭を見つめ直すきっかけになることを期待したいと考えた。


3.単元の目標

家族に一層の親しみをもち,家族を大切に思い行動するとともに,自分の思いや願いを持って接することができる。
健康や安全に気を付けたり,規則正しい生活を大切にして行動し,自分の生活をよりよくすることができる。
生命をもってることや成長していることに気付き,生き物への親しみをもち,大切にすることができる。


4.単元計画(全15時間)

第1次 家族の得意をみつけよう
第2次 家族にしてもらっていることなあに
第3次 自分で挑戦!何ができるかやってみよう


5.本単元で目指す児童の姿と教師の働きかけ


  <目指す児童の姿>
  家族の一人一人の良さに目を向けることができる
 
  自分にできることは自分でしようとしている
  健康や安全に気を付けて生活しようとしている (関心・意欲・態度)
 

  家族とともにしていることや家族にしてもらっていることをふり返ることができる
 
  家族が喜ぶことを見つけたり,家族が楽しくなることを工夫したりできる
  家族のことや自分でできることを話したり聞いたりすることができる (思考・表現)
 

  家族の支えがあって自分の生活が成り立っていることがわかる
 
  家計を支える仕事,家事に関する仕事,家族の団らんなど,家族を支えることに気付く
 
  家庭において,自分でできることがあることがわかる
  10 自分でできることを進んですることが大切なことに気付く (気付き)
 

*教師の働きかけ〜単元の導入を大事にする〜  
 
家族紹介ではなく,家族の「得意」に目を向けさせる活動を組織する(個々の事情への配慮を含む)。   → 6で具体的に述べる
調べるテーマは柔軟に設定する(遊び・家の仕事・特技・仕事など)
教師の得意を例示し,具体的なイメージをもたせる。

*単元を通して  
 
じっくりと自分の生活を考える場面を大切にする。
個々の情報を伝え合い,共有させることにより,家庭での自分の生活を考える視点を与える。そのため,「聞く」活動を大切にする。
「手伝い」に限らず,自分の役割は何かをじっくりと考えさせる(家族の役に立つとはどういうことかを考えさせる)
家庭との連携を図り,家族の思いが子ども一人一人に具体的に返るようにする。褒めてもらうことだけでなく,我が子に望むことや願いも伝えてもらう。また,子ども自身活動の様子を随時知らせ,伝えることにより,家庭の理解と協力を得る。
自分でしていることと家族にしてもらっていることをはっきりととらえさせることにより,互いの力が集まって家庭生活が成立していることに気付かせる。
冬休みを利用して自分でできることに挑戦させることにより,家庭での自分の役割を実感させる。


6.授業の実際(第1次1時間目)

(1) ねらい
 
自分や友達の得意を探すことができる。
家族の「得意」なことを調べてみようという意欲をもつ。

(2) 実際とアイディア
 
1 先生の得意を紹介する
 
ゆみ子のとくいは
なわとびの
にじゅうとびです。
ゆみ子

 

 

教師を例にカードで示す。
「え−」と子どもたちが反応する。
「ほんとう?」「見たいなあ!」という声にもったいぶって縄を持つ。
実際に跳んで見せる。
「すごい!!」と声が上がる。
→この声が上がることがポイント。
つまり,「すごいね。」とほめる気持ち,ほめられる喜びがこの後の活動を作る。
2 児童一人一人の得意を考える
教師と同じカードにそれぞれの得意を書く。
かけない児童には教師からおすすめの姿を伝える。
3 互いに紹介し合い,コメントを返す
(全体でも紹介)
相手の良さを「すごいね」「今度教えてほしいな」「偉いね」と認め合う場面を作る。ほめられ,認められて喜びを感じると共に,それが次の家族に対する視点となる。
4 子どもたちの家族に関する「得意」紹介をする
家事,仕事,趣味,スポーツ,特技などいろいろな視点で事前に情報を集め,子どもたちの家族に関する「得意」な姿を紹介する。このとき,誰のことなのかは伏せ,「いったい,誰のことなのか?」という興味を引き出す。
提示の順はクラスの誰かというイメージのものから,どうも違うぞ!誰?と揺さぶりをかけていく。
普段,家族についての発言や意識の少ない子どもの情報を意識的に盛り込み,次の活動につなげる手立てとする。
5 紹介した「得意」を家族のイラストごとに分けて紹介し,一体誰の家族のことか考えさせる
思いがけなく家族の良さが紹介される喜びを味わわせる。教師は大いに家族の得意をほめる。
もっとほかにも調べてみたいと思わせる。
6 このほかに家族の「誰」についてもっと調べてみたいか決める
例示には父母以外の人物をたくさん登場させ,家族の誰のことでもよいことを示す。


7.実践をして

「すごい」という一言のもつ力はとても大きく,そこから自分の家族に対しても友達の家族に対しても「尊敬」「あこがれ」「自慢」という気持ちが広がっていった。
誰がいるかいないかではなく,自分にとって誇らしく思える家族がいること自体を喜びと感じさせることができた。
「うちのおばあちゃんはね,縫い物が得意だよ。私の手提げかばんも縫ってくれたよ。
だから私はこのかばんをだいじにつかうよ。」とそういう家族に対する自分の振るまい方を考える発言が生まれ,この後の活動につながっていった。

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