1年
ふぞくしょうへようこそ!!          
〜ふぞくしょうたんけんたい〜          

山梨大学教育人間科学部附属小学校
山本 摂



1.活動構成の基本的な考え方

活動を構成する上でのキーワード
『活動をつなぐ』『子どものねがいを重視』『くりかえしかかわる』

 4月,文字通り右も左もわからない子どもたちを,2年生は本当に優しく迎えてくれる。きっとそれは2年生になってお兄さん・お姉さん気分で張り切っているだけではない,自分たちの過去と1年生の姿を重ね合わせるからこそ,1年生の気持ちにより添った活動ができるのだろう。本校では,生活科の学習の最初に2年生が「タネ」をまいてくれる。その「タネ」には,すすんで学ぶ,楽しく学ぶ,工夫して学ぶ,という大切な栄養が詰まっている。「タネ」を受け取った1年生は,自分の活動にそれを生かし,最終的には来年の新入生に渡すことをめざすだろう。そのような意味で,個人としても,集団としても活動をつなぐことを大切にしながら取り組みを進めてきた。

 本活動においては,できるだけ個々の子どもの「〜したい」「〜をたんけんしたい」というねがいを生かした内容構成を心がけた。下表からも見てとれるように,子どものねがいを活動内容に反映させることで子どもの意欲の継続や高まりを期待した。また,同じ場所にくりかえしかかわることで,1年生なりの気づきを引き出し,こだわりをもちつつ活動に取り組む姿の表出をねらった。


2.活動の概要

実施
時期
活動の内容 子どものねがい 教師のねがい
(こだわり)
 
4月下旬  「ペアの2年生と,学校探検 に出かけよう」 ・・・本校では,1年生が学校生活に慣れるまでの1ヶ月間,2年生が様々な形で1年生を支えてくれる。その活動の一つに ,2年生主催の「1年生を迎える会」がある。その会で初めて2年生に学校内を案内された1年生。様々な物に興味津々・・・。

「前から行きたかったあの場所に行ってみたいな」

緊張している子どもたちが,1日も早く安心して生活できるようになってほしい。
▼2年生と一緒に

「今度は自分で学校の好きな場所に行ってみたいよ」
身近な学校のいろいろな場所に興味をもち,自分のお気に入りの場所を見つけてほしい。
▼2年生と学校探検

5月初旬〜
下旬
 「学校探検に出発進行」
2年生との活動の後,休み時間に学校のいろいろな場所に行っては歓声を上げる1年生の姿が見られるようになった。そこで,授業時間に普段は入れない場所も含めて学校探検に出かけることにした。

「校長先生のいるお部屋に入ってみたいよ」

一人ひとりが自分のやりたいこと・行きたい場所を見つけてほしい。
 
「理科室ってどんなところかな」
学校は,いろいろな人に支えられていることに気づいてほしい。
「発見したことを誰かに聞いてもらいたいな 」
見つけたことを,自分なりの言葉や方法で表現してほしい。
5月下旬〜
6月初旬
「附属小ガイドブックをつくろう」 ・・・探検したことを友だちや先生にお話しした子どもたち。他に誰に伝えたいか聞いてみた。幼稚園の友だち・うちの人など様々な意見が出る中,たまたま教育実習の話をしてあったところ「その先生たちが附属小のことを何も知らないから,紹介しよう」ということで,ガイドブックづくりがスタート。

「わたしが見つけた秘密の場所,お気に入りの場所をもっといろいろな人に聞いてほしいな」

自分の方法で伝える活動を通して,他の人と積極的にかかわる力を身につけてほしい。
▼ガイドブック
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「わかりやすくて,楽しいガイドブックにしたいな」

自分なりの表現を通して気づきを深めてほしい。
6月中旬  「実習生を案内しよう」
班ごとに自分が探検した場所に実習生を案内した。班で同じ場所に行くわけではなく,一人ひとりが自分の紹介したい場所をもつているので,順番などを巡って大混乱の場面もあった。
「実習生に,附属小のいろいろな場所を知ってほしいな」
自分の体験を,自分の言葉で話す機会を設け,学ぶ意欲を高めていきたい。また,活動への主体性を育てたい。
 
6月中旬〜
7月初旬
 「学校探検 最終回」
前回の学校探検でうまくいったことや,失敗したことについて意見を出し合った子どもたちは,最後に学校のお気に入りの場所を紹介することにした。その相手は・・・初等生活科を受講している大学生。
前半→自分のお気に入りの場所について紹介・発表
後半→自分のお気に入りの場所や学校内を実際に案内した。

「自分の一番お気に入りの場所を見つけよう」

自分のお気に入りの場所について,自分なりの方法や言葉を使って相手に伝えてほしい。
学校探検最終回では,学生さんを案内する活動にすすんで参加し,楽しんでほしい。
▼おもいをつなぐ
〜ふせん〜
クリックすると拡大表示されます。

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▲学生さんを案内する場所を話し合い


3.成果と課題

子どもたちが自ら自分の行きたい場所を決めて探検に出かけたことで,主体的に対象にかかわれた。
子どものねがいを引き出すために,付箋紙による小さなふりかえりや対話的な手法を取り入れ,子どもの生の声を活動計画に取り入れることができた。
附属小をガイドするという目的意識を持たせたことで,くり返しかかわるための意欲が継続した。
自分の一番好きな場所を意識して考える中で,小学校での居場所づくりにつながった。
活動全体を通して,子どもがスムーズに小学校生活に馴染めるようにすることを意識するあまり,内容への焦点化が多少甘くなり,子どもの気づきを深めることができなかった面がある。


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