5年
活動の中から新しい見方や性質を発見する図形学習    
−敷き詰めの活動を生かして−     

青森県 A
5年算数「合同な形」

1.教材について

本単元では,きちんと重ね合わせられる形を合同な図形として定義し,その性質を学習する。また,合同な三角形や四角形の作図を通し,作図の基本要件を理解する。さらに,三角形や四角形・多角形の内角の和を調べるなどして,図形の性質をいっそう深く理解していくことになる。


図形の指導にあたっては,子どもたちが興味・関心をもって取り組めるような操作活動を通して,子どもたち自身で図形についての新しい見方や性質を発見していけるような学習の場にしなければならないと考える。そこで,子どもたちの図形を構成する要素への関心を高め,図形に対する新しい見方や新しい性質の発見が期待できると考え,「敷き詰め」の活動を単元の導入で取り上げることにした。


これまでの指導では,大きさも形も同じ四角形はどれかを分類することから授業を展開することが多かった。この導入では,児童は何のために分類するのか,なぜ,重なり合う頂点や辺について調べなければならないのか,合同な三角形をなぜかかなけれぱならないのかなど,単元全体の概略を見通した子どもたちの意識の連続性という意味からやや無理があり,子どもたちが主体的に取り組める配慮や工夫がなされていなかった。

 そこで,「平面の敷き詰め」の学習を導入時に扱い,合同な図形の見方や考え方が無理なくできるように単元全体を1つの学習のまとまりとして意識付けたいと考えた。



本単元ではコンピュータを効果的に活用して(文渓堂「さんすうワールド」を使用)学習を進めていくことにした。本時では,自分でやってみたい形を画面に作成し,それを敷き詰める活動をコンピュータで意欲的に行うことによって,図形のいろいろな性質を発見し,その不思議さや美しさを感じさせていきたいと考えた。また,コンピュータを活用することで,次のような利点が考えられる。

 ・形や色を自由に変えられるので,創造的に楽しく活動できる。

 ・

「あれ不思議だな」「どんな形でもいえるのかな」「どうしてかな」と意識を高めていくことができ,論理的な推論への意欲につながる。

 ・

コンピュータ画面を印刷し,学習の過程を残すことができる。

2.指導の実際

 2年生で学習した三角形の敷き詰めを想起させ,四角形ではどうか関心をもたせる。

「四角形も敷き詰めることができるだろうか」

「長方形,正方形はできるよ」

「平行四辺形,台形はどうかな」

「同じ形なら敷き詰めることができそうだよ」

「上と下の辺が平行だからできそうだよ」

「やってみようよ」

 調べたい形ごとにグループを作り,コンピュータを活用して調べ始めた。

 

「平行四辺形はできたよ」

「台形もできたよ」

「台形は2つ合わせると平行四辺形になるよ」

「3つだと,また台形になるよ」

「平行四辺形は4つ合わせると,大きな平行四辺形になるよ」

 活動の中から図形の構成に着目し始めた。この考えが平行四辺形や台形の求積,拡大図の学習などこれからの学習に発展させることができる。

「どんな四角形でも敷き詰めることができるのかな」

「でこぽこがあってできないと思うよ」

「四角形だからできるよ」

「辺の長さや角の大きさが全部違うからできないよ」

「できるかもしれないよ,やってみようよ」

 学習のめあてが明らかとなり,1人ひとりの調べたいという必要感が強まり,意欲的に取り組む場が生まれた。

「うまくできないな。すき間ができるよ」

「まっすぐにならないけどできた」

「同じ長さの辺をくっつけていくとできるよ」

「4つの違う大きさの角を集めるとできるよ」

 四角形の内角の和や同位角など,角の関係に目を向ける子も出てきた。

「4つくらい並べると,後は繰り返しだから簡単だよ」

「色を変えるときれいだよ」

「辺の長さや角の大きさに気を付けてやれぱ,どんな四角形でもできそうだよ」

 

 子どもたちは,まず辺の長さに着目し,同じ長さの辺と辺を合わせていき,すき間があったらやり直すといった方法で取り組み始めた。次第に,敷き詰められる訳を明らかにしていこうと考えはじめ,辺の長さや角の大きさに着目して並べていた。これらを操作しながら発表し,合同な見方が深まったと思われる。

3.研究のまとめ

子どもたちは,敷き詰めの学習に興味・関心をもって取り組んでいた。また,活動の中から図形の性質を発見し,興味をもって学んでいた


敷き詰める活動の中で対応する辺や角の大きさに気付き,合同な図形についての見方を自分で発見した子どもたちは,次時への学習へ主体的に取り組もうとする態度が育ち,「合同について調べたい」「合同な形をかきたい」などと楽しく学習を進めることができた。


操作活動に時間を多く費やしてしまったが,意見を発表し合う時間をゆとりをもって行いたかった。授業のまとめやこれからの動機付けを工夫すれば,さらに意欲的に単元を展開できたと思われる。子どもたちに確かな理解をもたらすためにも,さらなる創意工夫を試みていきたい。


前へ 次へ

閉じる