全学年
個のよさを生かした算数指導          
〜すぐにできる算数ノート指導〜          
岡山県阿哲郡哲多町立大田小学校
竹本 洋子
1.はじめに

 日々の算数の学習で算数ノートを使っている。1年生の初めには,マスの大きさなどに着目してどんな算数ノートを使うかを指定することはあっても,他の学年では,算数ノートの選択の観点があいまいなように思われる。また,算数ノートに書く内容や使い方もまちまちで,児童も何をどのように書けばいいのかよくわからないという面も見られる。
 算数科では,数学的な考え方を生かし,主体的な活動を重視しながら,自分から工夫して問題を解決できる力をつけることが大切である。

 そこで,数学的な考え方や理解力を伸ばす1つの方法が算数ノート指導であると考えた。算数ノートの大きさや形状などにも気をつけ,学習内容や発達段階に合った使いやすいノートを選ぶことや算数ノートの役割を考え,めざすノート像を追求することは算数指導の大切な要素だと考えている。自分らしさを生かした表現方法でわかりやすさや簡潔さ,豊かさをねらって数学的な考え方を伸ばす算数ノートづくりに取り組みたいと考えた。

2.指導の実践

(1) 学年に応じたノートの選び方

 学習内容や発達段階,使いやすさなどの観点から,算数ノートの大きさやマス目などを考慮して以下のように考えた。

 1)全学年B5版の大きさ

 2)

第1学年

入門期は,横型22mm方眼……6マス(1〜10)1冊
数字の筆順を見て書ける。点線入りなので,始筆の位置がわかりやすい。
2冊目から横型18mm方眼……7マス(1〜10+−)
計算練習で問題の間を空けて書けるので,見やすい。

 3)

第2学年

たて型12mm方眼実線入り……12×17マス(1〜10+−)
図や説明を書くことが多くなるので,マスの大きさや文字の量からも適当である。また,筆算をする場合位を間違えずに使える。

 4)

第3学年以上 

たて型5mm方眼で10ミリ実線入り
筆算の場合,位取りがしやすく,位を間違えにくい。グラフや図が書きやすい。図形,面積,長さなどで無地がよいときは,ワークシートを作りノートに貼り付けるとよい。

(2) 算数ノートの役割

 1)自分らしさを表現する使い方 (表現力の育成,個性の伸長)

 2)

探求的な使い方

(思考力の育成,思考過程や思考の深まりがわかる)

 3)

備忘録的な使い方

(要点を忘れない。板書の記録)

 4)

整理・保存的な使い方

(既習経験が生かせる,見返す,成長の記録など)

 5)

練習的な使い方

(計算練習などで習熟を図る。)

(3) めざす算数ノート

 ア.自分らしさを生かし,工夫の見られるノート(個性を生かしたノート)

 イ.

思考の過程がわかるノート(自力解決のノート)

 ウ.

図や式に言葉や印で説明が書いてあるノート(考え方が誰にもわかるノート)

 エ.

考えたあとが残るノート(消さないノート)

 オ.

友達の考えと比較,対比できるノート(集団思考のノート)

 カ.

1時間の授業の流れや思考の深まりが見られるノート(よりよい方法で解けたノート)

 キ.

まとめや自分の感想があるノート(自己評価のあるノート)

(4) ノートの使い方

 1)計算問題の書き方

(ア)

2+1=3□□5+1=6

 問題が横へ

この書き方が多い。

2+3=5□□6+3=9

 書き方も横へ

(イ)

2+1=3□□1+6=7

 問題が横へ

問題数によって余白ができる。

問題を混乱させないようにする。


5+1=6□□

 書き方が縦へ

2+3=5□□
 

6+3=9□□
 

 2)

ノートの形式と内容の例  1日見開き2ページ


 (めあて)


 (必要に応じて問題文)


 (図)

・学年・単元・個に応じて


 (式)

・順序は自由にする。


 (答え)

・省略する項目もある。


 (考え方)

・余白があると,見やすい。


 (説明)

・感想があると自己評価になる。


 (見通し)

・感想を吹き出しで書くと楽しい。


 (予想)


 (友達の考え方)

          
          
          
で囲んだり,色分けしたり工夫するとわかりやすい。

(5) めざす算数ノートの実践例

 4年「べつべつに いっしょに」

オ. 友達の考えと比較,対比できるノート


自分の考えと友達の考えを比べながら聞き,共に高まっている。


友達の「いっしょに」の考えを聞いてまとめて考えるよさに気づいている。

カ.

 1時間の授業の流れや思考の深まりが見られるノート


よりよい方法で解けている。

キ.

 まとめや自分の感想があるノート 


大きな目,開いた口の表情から本時の学習がよく理解でき,次時への意欲も伝わってくる自己評価のあるノートである。

 1年「おおいほうすくないほう」

ウ. 図や式に言葉や印で説明が書いてあるノート


違いがわかりやすい。

イ.

 思考の過程がわかるノート


多い部分や少ない部分に着目し,図に表し,立式をしている。


友達の発表で,同じ部分はそろえた方がわかりやすいということに気づき筋道立てて考えている。

ア.

 自分らしさを生かし,工夫したノート 


数え棒で表現方法を工夫し,考えを整理し,わかりやすくまとめている。


図で理解が深まったことを吹き出しで自己評価している。

 3年「何倍でしょう」

エ. 考えたあとが残るノート


間違いは消さずにそのまま残している。

キ.

 まとめや自分の感想があるノート


「倍・倍」の考え方に気づかず,悲しい表情から,本人にとって難しい学習内容だったことが伺える。

 4年「小数のたし算」

ク. 既習事項が生かせるノート


数のたし算の筆算で,整数の時と同じで,位をそろえること,下位から計算することを生かし計算している。

3.成果と今後の課題

 算数ノートの選択基準については,児童の発達段階や学習内容を考慮したので,「数と計算」領域では使いやすかったと思われる。
 児童は,書く順番や内容がわかるようになったので,操作したことや考え方を絵や図,線分図などで書き,それに線や矢印で相関関係をわかりやすく表し,考え方を整理して表現することができるようになってきた。また,話し合いを通して,友達の考え方や表現方法のよい点に気づき,自分にも取り入れ,よりよい考え方ができるようになったり,よりよいノートづくりをしたいという態度も見られるようになった。このように,自分に合った方法で考えたり表現したりすることに喜びを見いだし,楽しんで算数の学習に取り組むようになってきた。

 1時間の学習において,指導者が「めざすノート像」をもっていることで,ポイントのはっきりした授業づくりができ,ノートで考えをはっきりさせたり深めさせたりすることができるようになる。その中で,一人ひとりの思考過程を評価することや個のよさを認めることができ,個に応じた支援がよりしやすくなった。
 今後は,さらに,自分らしさを生かしたノートづくりができるようにその問題に適切な絵や図の書き方や説明の仕方を身につけ,数学的な考え方を伸長することができるように努めたい。

<参考文献>
新しい算数研究 NO.316新算数研究会 東洋館出版
小学校指導技術基礎講座5学習ノート 藤井治編著
算数教育佐々木忠栄他 明治図書
算数指導の疑問これですっきり 柴田録治,岡崎市算数・数学教育研究部編著 黎明書房


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