1.算数科における言語活動の充実 (学習指導要領解説<算数編>(平成20年)より)

本年度から完全実施される学習指導要領においては,言語に関する能力の育成を重視し,それぞれ教科等の特質に応じた言語活動を充実することとしている。

算数科においては

「三角形,平行四辺形,ひし形および台形の面積の求め方を,具体物を用いたり,言葉,数,式,図を用いたりして考え,説明する」といった算数的活動の充実

算数的活動とは

児童が目的意識をもって主体的に取り組む算数にかかわりのある様々な活動を意味している。また,作業的・体験的な活動など身体を使ったり,具体物を用いたりするものだけに限られない。算数に関する課題について考えたり,算数の知識をもとに発展的・応用的に考えたりする活動や,考えたことなどを表現したり,説明したりする活動も算数的活動に含まれる。

算数的活動の確認

作業的な算数的活動 手や身体などを使って,ものを作るなどの活動
体験的な算数的活動 教室の内外において,各自が実際に行ったり確かめたりする活動
具体物を用いた
算数的活動
身の回りにある具体物を用いた活動
調査的な算数的活動 実態や数量などを調査する活動
探求的な算数的活動 概念,性質や解決方法などを見つけたり,つくり出したりする活動
発展的な算数的活動 学習したことを発展的に考える活動
応用的な算数的活動 学習したことを様々な場面に応用する活動
総合的な算数的活動 算数のいろいろな知識,あるいは算数や様々な学習で得た知識などを総合的に用いる活動

学習指導要領解説<算数編>(平成11年)より

2.実践

前述の言語活動の充実を踏まえて,「ひき算のひっ算」の学習指導に取り組んだ。

本時の学習における言語活動(算数的活動)を『繰り下がりのあるひき算のひっ算の仕方を自分の言葉で説明する活動』と考えた。そして,繰り下がりの必要性を意識させようと,具体物に卵パックを用いて10のまとまりをばらすという操作をさせることにした。

  • 目標
    (2桁)−(2桁)で繰り下がりのある筆算の仕方を理解することができる。
  • 準備 … 卵パック,ピンポン球
  • 学習過程
段階 学習活動 時間 指導上の留意事項
 

1 ひき算のひっ算の確認をする。

 
  • 前時の問題で確認する。


2 課題をつかむ。

ひっ算でしよう

(1)卵43個のうち6個を使ったときの残りの個数を求める。

@ 式を考える

A 具体物を操作して計算方法を確かめる

B ひっ算に表す。

10
  • まず,1桁をひく場合で繰り下がりの必要性を考えさせる。
  • 具体物を提示し,パック(10個入り)とバラの数を意識させる。
  • 「6」をひけないときに,パックを崩すことを引き出す。
  • パックを解体することを「10もらう」とまとめる。

 パックを解体すると,パックの数が1つ減ることを理解する。
(発表)

  • 「繰り下がり」の表し方を押さえる。
    • 十の位の数を斜線で消し,1減らした数を上にかく。
    • 一の位の数の左横に小さく「1」をかく。

子どもの説明例

(3から6は)ひけないから
(10)もらってきて
(13から)この6をひきます。



(2)卵53個のうち27個を使ったときの残りの個数の求め方を説明する。

@ 式と計算方法を考える

A ひっ算に表す

B 求め方を隣の人に説明する

25
  • 具体物を提示し,視覚的に問題をつかませる。
  • ひっ算を板書する。

 「10のまとまり」と繰り下がりを意識して説明することができる。
(観察,発表)

  • 代表の児童に発表させる。
  • 評価規準
    (2桁)−(2桁)の筆算の仕方を,十進位取り記数法に基づいて考えることができる。
ひけないからもらってきて…
ひっ算に表すと…
          

3.子どものようす

計算練習(ノートより)

具体物を見せながら計算の仕方を考えたので,子どもから「ひけないから」「10もらってきて」ということばが自然と出てきて,子どものことばで説明することができた。

また,10もらってくるので,十の位の数が1減ることも実感として理解することができたようである。計算習熟の場面でも,小さな声で「ひけないから」「もらってきて」「1減って」とつぶやきながら計算している場面を見ることができた。