6年

文字を使った式

文字を使って表そう
島根県益田市立吉田小学校
長島 靖和


1.はじめに

 本単元は新学習指導要領により,新たに6年生で学習する内容として中学校より移行され,本年度より追加された内容である。6年生は,間もなく中学校に進学するという事実に直面しており,文字を用いた式の簡潔性,一般化などその素地を小学校の段階で養うことには,児童の今後の学びを連続的に行うという観点から意味あるものである。

 Xには,わからないが決まっている数(未知数)とみる見方と,いろいろな値を取り得る文字(変数)と見る2通りの見方がある。小学校においては,□という記号は数を当てはめる場所といった理解も行っている。これはplaceholder(代入)という考え方で文字を変数と見る考え方に近い。

 一方,式は,数量や数量の関係を的確に,簡潔に,一般的に表すことのできる優れた表現方法である。本時で扱う「式の読み方」は,小学校での四則演算,数の拡張などの学習を全て行った上で,式に表す活動の意味理解とよさの再認識,そして,中学校数学への橋渡しとなる活動である。

 式の意味とよさとしては,以下の点を挙げることができる。
記号を用いて簡潔に表すことにより,思考の過程を振り返り,考えを確かめたり修正したりするのに役立つ。
数量の関係が明確に示されていることから,相手に考えを端的に伝えるのに役立つ。
表示された数や記号から,その示す意味を一般化したり,数量(変数)の範囲を考えたりするのに役立つ。
式の表している形に着目することにより,いろいろな関係の相違点を明らかにしたり,統合したりするのに役立つ。
具体的内容から離れ,数や記号の形式的操作により,考えを進めていくのに役立つ。

 また,規則性に着目したり,異なった場面で応用したりする学習を行うことにより,問題解決に当たり,演繹的・帰納的・類推的な考えなどを用いて一人一人に考える力を伸ばすことにつながると考える。



2.単元目標

文字を使った式のよさが分かり,数量や数量の関係を進んで文字を使った式に表そうとする。
式が表す意味を算数的活動を通して読み取ることができる。
問題場面の解決を文字を用いて式に表したり,数を当てはめ逆算したりして,Xの値を求めることができる。
数量を表す言葉や□などの代わりにXなどの文字を用いることを理解できる。



3.指導計画

 第1次 文字を使った式 A

 第2次 Xの値を求める問題 A

 第3次 式の読み方 @(本時)



4.授業の実際

(1)本時の目標

 式を見て,どのような考え方をしたのか読み取ることができる。

(2)展開

 ●(ドット)の個数の求め方を考え,式に表す。

画像1  右図のような,●(ドット)の数の求め方をいろいろ考えて式に表す。拡大したものを準備し,それを一瞬見せ,ドットの並び方の特徴(正方形,1辺に6個並んでいるなど)について発表させ,総数が20個であることを確認した後,ワークシートを使って個人の課題解決に取り組ませる。様々な考え方のよさに触れることができるように複数の考え方に挑戦させる。

画像1
活動時間はおよそ5分,29名の児童が@〜Cのいずれかの方法で式に表すことができた。
6名の児童は複数の方法に挑戦することができた。

 どのように考えた式なのか、式と図を結びつけながら説明する。

 続いて,式を読む算数的活動を行う。おおよそ次のような流れである。
@4人の児童が式を黒板に書く。(図には何も書き込ませない)
A黒板に書かれている式を見て,納得できる方法かどうか挙手し,確認する。
B「(1)〜(4)の中で聞いてみたい方法はないか?」と問いかけ,リクエストの多い順に説明の順序を決める。
C式を黒板に書いた児童とは別の児童が,式に表した方法を図と結びつけながら説明する。
重なりがないように1辺に並ぶ●の数を5(6−1)個と考え、4倍して●の個数を求める。 1辺に並ぶ●の数6個の4倍を考え、重なっている隅の●の数4個をひき●の数を求める。 1辺の●数6個から隅の数の●を除いた4(6−2)個の4倍を求め、その後、隅の4個を加え●の数を求める。 1辺に6個の●が並ぶ正方形があると考え、その内側の、1辺4個の○が並ぶ正方形の個数をひき、残りの●の個数を求める。

(1)のような考え方を表す式は,5×4=20というように書く児童が多いが,文字を使って一般化するためには(E−1)×4=20というようにした方がよい。そこで,「5」の意味を全体で考えさせると良い。同様にして,(3)の式にあるような3つの「4」の表す意味,(4)の2つの「4」の表す意味についても図と結びつけながら確認していく。このように,ただ式に表すだけでなく,その式と図形を結びつけて,何をどのように表したかを説明できるようにさせることが式の読みと表し方を習得させるためには大切である。そして,4つの式の左側に板書したそれぞれのEと式中のEは,正方形と見た場合,1辺に6つ並ぶ場合の式ということを意識づけるために意図的に書いたり,囲んだりしたものである。

 文字(X)を使った式で表す。

 既習事項として,□,○,△などの記号を使って式を表したことのある児童ではあるが,いきなりX 、 Yなどの文字を使って一般化する活動を行うことには抵抗があると思われる。そこで,次のような順序で一般化を図った。

@もし,同じ問題を次回考えるならば,(1)〜(4)のどの方法を使うか
Aもし,1辺に7個並ぶ場合,どのような式で表されるか
Bもし,1辺に10個並ぶ場合,どのような式で表されるか
Cもし,1辺に100個並ぶ場合,どのような式で表されるか
Dもし,1辺にX個並ぶ場合,どのような式で表されるか

画像1

 ここからの活動は,隣り通しでのペアでの活動を行った。

 (1)〜(4)の考え方をもとに,1辺の数が7個,10個,100個,それぞれの場合をもとに一般化するためには,表された式を相互に比べながら「同じところ,違うところ」に着目させることが大切である。

 最後に,右図のような文字Xを使って「1辺にX個並ぶ場合」の一般化を図った。すると,(1)〜(4)の全ての場合についてXを使った文字式で表現することができた。

画像1  授業後,児童自身の考える「おすすめの式」を調査したところ右のようであった。

5.考察

多様な考え方のある問題を式と図を組み合わせて説明する活動を通して,数・演算記号の表す意味に着目しながら式の意味を考えることができた。
簡単な事象を元に「同じところ,違うところ」に着目させ,一辺に並ぶ●の数が増えていく場合を考えることが,文字を使っての一般化を考えることにつながった。
本単元後の「変化する2つの量を調べよう」学習でも,□や△の代わりに,X 、 Yを用いたが,児童は本単元での既習事項を用い,数量の関係を式で表すことができた。
「1辺に●が6個並ぶ場合」を式に表す場合,式の中に6という数を用いて表すような条件を付ければ,式の意味を共有化することが容易なものになったのではないかと考える。
画像1今回の●(ドット)が正方形の1辺上に並んだ様子の一般化を応用・発展的に扱う時,右図のような正6角形に並んでいる場合を式を使って求める活動が考えられる。その際,正方形の(1)〜(3)の方法は正六角形の場合でも成立するが,(4)の場合は成立しない。この教材を応用・発展させた学習の在り方を今後も考えていきたい。


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