3年

既習事項を活用し,グループでの学び合いを通して,
考えのよさを見出す授業づくり

〜「かさくらべ(任意単位による測定)」の実践を通して〜

岡山市立財田小学校
信近 和弘

1.単元名 かさ

 

2.単元の目標

 ○普遍単位(ℓ,dlml)のよさに気づき,身のまわりの入れものの容積表示を進んでみ
   つけたり,適切な大きさのますを使ってかさを測定したりしようとする。
   (関心・意欲・態度)

 ○かさの普遍単位の必要性について考えることができる。(数学的な考え方)

 ○かさを「ℓ」「dl」「ml」の単位を用いて表したり,ますを使ってかさを測定したりすることが
   できる。(表現・処理)

 ○ますの使い方や,かさの単位「ℓ」「dl」「ml」のよみ方・かき方・相互関係がわかる。
  (知識・理解)

 

3. 学習計画

   第1時 かさくらべ(直接比較,間接比較)

   第2時 かさくらべ(任意単位による測定)・・・・・・・・・・・・・・・(本時)

   第3時 かさくらべ(デシリットルますを使っての測定)

   第4時 かさしらべ(リットルますを使っての測定),リットルとデシリットルの
        関係の理解

   第5時 かさのたし算,ひき算

   第6時 ミリリットルの量感をつかむ

   第7時 1リットルの量感をつかむ

 

4. 研究テーマ設定の理由

 本学級には,自分の考えがもちにくく,学習意欲に乏しい児童がいる。また,自分の考えをもつことができても,ひとつの考えにとどまっている児童もいる。そこで,友だちとの学び合い(協同的な学び)によって,一人ひとりの学びを深めたいと考えた。

 自分の考えをもちにくい児童にとっては,友だちと一緒に活動したり,話し合ったりすることは,自分の考えをもつきっかけになる。また,ひとつの考えにとどまっている児童にとっては,友だちの考えを聞くことにより,新しい視点を得たり,考えを見つめ直したりするきっかけになると考えた。

 そこで,話し合い活動において,次のような工夫をしている。

   @多様な考えに気付くようにするために,複数の考えを取り上げる。

   A友だちの考えに対する質問や確かめをする学習活動を設定する。

   B友だちの考えのよさを見つける学習活動を設定する。

 さらに, 児童による学習のめあてづくりや児童の考え(言葉)によりそったまとめづくりに取り組み,学びの充実を目指すようにした。

 

5.指導上の立場

  普遍単位の必要性やそのよさに気づかせるために,まず単元の導入にあたっては2年生の「長さしらべ」の学習を想起させることから始め,直接比較,間接比較,任意単位による測定などの活動をきちんと段階を踏んで指導することにした。

 前時では,様々なかさのペットボトルを数種類用意し,その中から@見ただけで確実にかさが大きいとわかるものとAはっきりと判別できないものに分けさせた。次に,Aはっきりと判別できないものの中から, ふたつのペットボトルを選び出し,そのかさをどうやって比べるか問いかけ,「どちらが多いか調べる方法を考えよう。」というめあてを決めて,直接比較と間接比較の活動をした。

 本時では,前時の活動をもとに,「どれだけ多いのか」ということに注目させ,ちがいをはっきり表すためには数で表せばよいことを引き出し,任意単位の必要性に気づかせていく。任意単位のよさに子どもたち自身がふれることで,いつでも,だれが調べても同じ数になればさらに便利であることに気づかせ,普遍単位の必要性に着目できるようにする。

 

6.本時案(第2時)

目標

○かさ比べを通して,ちがいを正確に表すには任意単位のいくつ分かで表せばよいことを見つけ出すことができる。(考え方)

○水のかさを同じ大きさの容器のいくつ分かで正しく量ることができる。
(表現・処理)

学習活動

教師の支援

本時の指導の実際

問題を知り,本時のめあてを決める。
(1) 前時の終わりに話し合って見出した次なる課題を発表させ,実際にペットボトルを提示して確認する。

  (2) 前時の学習を想起させ,本時との違いを明確にした後,本時のめあて「大きいペットボトルの方が,どれだけたくさん入っているか調べる方法を考えよう。」を決めるようにする。
昨日は どちらが多いか を調べたけど,今日はどんなことを調べたいですか?

どれだけちがうのか調べたい。

どれだけちがうのかよく分からないから,はっきりさせたい。

どんなめあてになりますか?

「大きいペットボトルの方が,どれだけたくさん入っているか調べる方法を考えよう。」
どれだけちがうか調べる方法を考える。
(1) どれだけたくさん入っているかを調べる上で,前の時間に調べた方法の中から使えそうな方法があるかどうかを話し合わせるようにする。その後,各自に調べる方法をノートに書かせるようにする。

  (2) 各自が調べる方法をノートに書いたところで,グループで話し合わせるようにする。

  (3) 見通しのつきにくいグループには,分離量でちがいを比べるヒントカードを渡し,単位のいくつ分かを数で表せばよいことに気付くようにする。

  (4) 話し合ったことを発表させ,入れ物を使って,それのいくつ分かで調べればよいことに気付かせるようにする。
今日はどの方法を使えばいいと思いますか?

コップくらべです。

(量の)高さくらべです。

今日はどの方法を使えば,「どれだけたくさん入っているか」がはっきりと分かるのか考えてノートに書きましょう。

どんな方法を使えばよいか,グループで話し合いましょう。また,どんな道具を使えばよいかも話し合いましょう。後で,発表してもらいます。

コップくらべをします。

どうしてその方法にしたのですか?

ちがいが数で分かるからです。

高さくらべでもできると思います。

では,試してみましょう。
ペットボトルのかさをグループで調べる。
(1) まず,どのような係が必要か話し合わせ,グループで手分けをして調べさせるようにする。

  (2) 役割が決まったところで,グループごとに,身の回りにあるコップやおわんなどを自由に使って,ペットボトルのかさを実際に量らせ,数でそのちがいを調べさせるようにする。

  (3) 結果や調べる時に気を付けたことなどをノートにメモしておくように伝える。
それぞれのグループでかさくらべを始めましょう。
 結果と調べるときに気が付いたことをノートにメモしておきましょう。
 後で,発表してもらいます。

できたグループから前に出てきて,模造紙に使った物と,結果を書き込ませる。

 

かさ比べの結果を話し合う。
(1) グループごとに,調べた方法と結果を説明させるようにする。また,測定するときに気を付けたことなども説明させるようにする。

  (2) 任意単位を使えば,ちがいを数で詳しく表せることを押さえるようにする。

  (3) 同じペットボトルのかさを調べたのに,グループによって数にちがいが出たわけに着目させ,量り取った入れ物(任意単位)がちがったり,同じ入れ物でも1杯分の量がちがったりすることで,測定回数にちがいがでてきたことに気付くようにする。

  (4) いつでも,だれが調べても同じ数になれば便利であることに気付かせ,普遍単位の必要性に着目できるようにする。

  各班の結果

調べる時に使ったもの

A

B

どれだけちがうか

コップ

おわん

茶わん

コップ

10

(大きい)紙コップ

(小さい)紙コップ

15

水そう

A がおおい

 

それでは,それぞれのグループの結果を発表してもらいます。代表の人は前で説明しましょう。

C1班 コップで A が8はい, B が5はいです。

「どれだけ」たくさん入っているか分かりましたか?

C1班 コップ3ばい分ちがうから,どれだけたくさん入っているかが分かる。

C3班 ぼくたちは,茶碗に A が3はい, B が2はいです。

C7班 水槽で調べると, A のほうが多かったです。

このことについておたずねはありませんか?

水槽だとどれだけ多いのかわかりません。

C7班 そうかあ。他の班の方法だとどれだけ多いのかはっきりすることがわかりました。

C2班 わたしたちは,おわんにAが2はい,Bが1はいです。
(…すべての班が発表)

どのグループも「どれだけたくさん入っているか」がよく分かりましたね。
 
では,それぞれのグループの結果を見て,気付くことはありませんか?

1班と4班は同じ入れ物で調べたのに数がちがいます。

C1班 1班はコップくらべをするときに,すりきれいっぱいまで入れて量りました。

C4班 4班はこぼれると困るので,少し上のところを残して入れました。

どこまで入れたらいいか,めもりがあるといいなあ。

同じ入れ物でも,1杯のかさがちがうと,結果が変わるんだ。

みんながちがう入れ物で調べているので,数がバラバラになっている。

そうですね。みんながAとBの同じかさを調べたのに,数にちがいが出ていますね。どう思いますか?

みんな数がちがうと分かりにくい。

では,何かいい方法はないかな?

クラスのみんなが同じ入れ物で調べればいい。

クラス以外の人とかさくらべをするときにもそれでいいですか?

だれが調べても,同じになるものがあればいいなあ。

入れ物をそろえるだけでいいですか?

入れ物にめもりが付いていると,もっといいなあ。

何かよいものがないか,身の回りにあるもので探してみてください。先生も何かいいものがないか調べてみますね。
本時のまとめをする。
  本時の学習を振り返り,ちがいを表すには,任意単位のいくつ分かで表せばよいこと,さらには共通の単位を決めれば便利であることをまとめるようにする。
(どれだけたくさん入っているかを調べるときは,)
みんなが同じ入れ物で調べないとちがいがはっきり分からない。
めもりのある入れ物があればべんり。

 

7.考察

 直接比較,間接比較,任意単位による測定をひとつずつ丁寧に行うことで,子どもたちがそれぞれのよさについて体感し,よさを見つけ出すことができた。さらに,今回の任意単位による測定から,次時の普遍単位による測定にスムーズに思考することができていた。それも,前学年での「長さくらべ」でも同様に活動していたので,児童も考えやすい素地ができていた。

 この単元においては,グループで協力した活動を取り入れることが有効であると考え,研究テーマであるグループでの学び合いも生かすことができた。人とものに主体的に関わり合う環境をつくることで,自分の考えのよさ,友達の考えのよさに気づくことができていたのではないかと考えている。


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