1・4・5年

子どもたちの問題意識を高める導入の工夫    
〜教科書の導入から一工夫〜    
兵庫県三木市立三木小学校

1.はじめに

 現在の教科書は,B5サイズになり,中身もカラフル。挿絵や写真などの豊富に掲載されており,子どもたちにとって随分と見やすく分かりやすくなったと感じる。特に単元の導入部分には,その単元に子どもたちを誘う資料の提示がされている。

 ただ,教科書であるため,いくつかの制約がある。紙面であるため,提示する資料が平面に限定されることや資料の大きさが教科書の見開き以上に大きくならないことがある。また,全国に展開するため ,必ずしも子どもたちの身近な資料ばかりではないこともある。

 本論では,このような教科書の限界を意識した上で,導入を工夫した事例を紹介する。


2.本校の授業の導入

 本校は,『基礎・基本を身につけ,自ら学ぶ力を高める子の育成』とテーマで,算数を中心に研究を進めてきている。研究授業を行う中で,授業の導入段階においては,以下のような手立てが有効であった。

表1【導入段階で有効であった手立て】
具体物を提示し問題把握を促す。
(実物,実物に近い模型,大きく見やすい挿絵など)
生活の中から学習問題を提示する。
子どもの興味をそそる問題を提示する。
(ゲームの要素やストーリー性を持たせるなど)
既習の学習からのつながりを示し,問題を提示する。


3.導入の実際

 ここでは,1年,4年,5年の事例を紹介する。それぞれは,教科書の導入での資料を参考にしているが,子どもたちの実態と照らし合わせ,授業者が一工夫した事例である。

(1) 1年生「ひきざん」 実物に近い模型を使って

 教科書では,猿が木に登り柿を食べている挿絵が使われている。(図1)ここでは,実際に木の枝を教室に持ち込み,その枝にリンゴの模型を吊し,子どもたちに提示した。更に教師が教科書の挿絵の猿の代わりになり,リンゴをもぎ取っていくことで,子どもたちに問題把握を促した。(写真1)

これを
一工夫
図1【教科書の挿絵】   写真1【木とリンゴの模型の提示】

 この事例では,模型を使うことで立体的になったこと,教師が演じることで動きがあり場面のイメージがしやすかったことなどが有効であったと考える。


(2) 4年生「かどの形を調べよう」 大きく見やすい実物を使って

 教科書では子どもたちがストローと色紙でつくった教具を使っている写真が掲載されている。ここでは,子どもたちが教具の使い方や問題を把握したり,考えを出し合ったりする場で効果的であると考え,大きな教具を作成し導入時に使用した。(写真3)

これを
一工夫
写真2【教科書の写真】   写真3【大きな教具の提示】

 この事例では,模型が大きくさらに子どもたちの持っている教具と全く同じつくりであることから,教師の説明もわかりやすくなり,子どもたちが問題の把握をしやすかったと考える。


(3) 5年生「直線の交わり方を調べよう」 生活の中から学習問題を

 教科書では,1ページ全面を使って,綺麗に区画整理をされた水田の写真が掲載されている。(写真4)この写真から道の交わり方そして垂直や平行の学習へ子どもたちを誘うことになる。この写真は吟味され掲載されているので,垂直や平行が沢山見つかる。ただ,地域的に子どもたちにとって遠い存在である。そこで,インターネット上で公開されている校区の写真を提示することを考えた。幸い本校の校区には農村地域や新興住宅地があり,航空写真で見れば,垂直や平行に交わっている道路は沢山見つかる。そこで授業の導入で写真5のようにして提示した。

これを
一工夫
写真4【教科書の写真】   写真5【校区の航空写真の提示】

 この事例では,自分たちの生活している地域の写真が驚きを与え,その地域で整然と交わっている道路などを目の当たりにすることで,子どもたちの学習に対する意欲を高めることができたと考える。また,4年の事例と同じように大きくスクリーンに提示したため,スクリーンに書き込んだり話し合いの題材にしたりすることもできた。


4.おわりに

 本論では,導入に絞って実践を紹介した。これまで行ってきた研究授業の導入の中には,教科書にこだわらずに独自の方法で行った導入もある。一方,紹介した3つの実践例のように教科書の導入に一工夫することで,子どもたちの問題把握がより確実になったり,学習に対する意欲が高まったりした授業が多かった。ただ,日々の実践の中では,本論の実践例のような教科書を参考にして導入を考えることは,実施しやすいという点があり,効果的ではないかと考えている。


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