4年

角度ってなに??    
〜ぐるりんゲームの特性を生かした単元構想〜    
富山県射水市立放生津小学校
大道 正敬

 角度の学習は,「形」としてとらえていた角の見方を一歩進めて,回転による半直線の開きの「量」としての見方に拡張することが大きな目標の1つである。しかし,実際の生活の中で角度について体験したり,考えたりする機会はそれほどなく,子どもの中で半直線の開き具合というイメージをもてないという実態があった。そこで,ルーレットゲーム(以下ぐるりんゲーム)の特性を生かして教材化を図った。遊びの中で,子どもたちが回転の運動と角の開きを結びつけて考え,回転が大きくなれば,角度も大きくなることを実感できると考えたからである。ゲームのルール作りを子どもたちに委ねたことで,子どもたちは角に対する既習内容を総動員して,「角は1つの頂点から出ている2つの辺が作る形だったね」「三角形の角よりも大きいものも角なのかなあ」など角についての見方を自ら広げ,深めていくことができた。

 また,ゲームとなると「正確に測って勝負を決めたい」「どうしたら早く勝負の結果を知ることができるだろう」などの切実な疑問や願いが多く出され,自然と活発な話し合いに発展していく姿が見られた。



1. ぐるりんゲームについて

<用意するもの>

20cm四方の段ボール

工作用紙(ルーレットの針に使用)

ぐるりんゲームの型紙

画鋲1つ

ビニールテープ
<用意するもの>

1.

針をSTARTの赤い線に合わせる。

2.

針を指ではじいて回す。

3.

スタートの線と止まった針のところまでの角の大きさを競う
(1回転以上しても START から針までの角度を自分の角度とした)


2. 単元の流れ

角の大きさの表し方を調べよう(10時間)

角についての基本的知識や測定の仕方を身に付ける段階
どっちの角が大きいか勝負するときに,微妙な差は見ても分からないなあ。mldlのように小さい単位があったら,いいのになあ。

ぐるりんゲームで勝負を行う中で出てくる問題を話し合いながら,角度の基本的な知識を習得して,測定することができる。

回転してできた角の大きさを調べる。直角の何個分かで考える。

角度の単位「度(°)」の読み方,書き方を知り,分度器の仕組みを調べる。

分度器を使って角を測る。工夫した測り方を考える。

開きの量として角を見ることができる 分度器を使って角度を測ることができる
角度の測定方法を用いて角度をかいたり,三角形をかいたりする段階

角度の測り方を基にして,角をかいたり,三角形をかいたりすることができる。

分度器を使って角をかく。

向かい合った角の大きさを調べる。

分度器を使って角を測る。工夫した測り方を考える。
ぐるりんゲームの角度をきちんと測るにはどうしたらいいのかな。間違えずに正確に測る方法を覚えたいなあ。

分度器を使って角をかくことができる 分度器を使って三角形をかくことができる
三角定規の角度を使って角度について考えを深める段階
三角定規の角度を組み合わせると角度ができるんだ。しかも計算で求められるんだね。ぐるりんゲームの角度も同じようにできるのかなあ。

三角定規の角度を調べ,三角定規の角を使って角度をつくりながら,角度が計算によって求められることを理解する。

三角定規の角度を調べる。

三角定規を組み合わせてどんな角度ができるか調べる。

三角定規の角の大きさが分かる 三角定規の角を組み合わせてできる角度が分かる
角について学習してきたことを活用する段階

いろいろな分度器を使ったり,身の回りにあるいろいろな角度を調べたりする。

全円分度器を作っていろいろな角をつくる。

坂道分度器を作っていろいろなものの角の大きさを測る。
ぐるりんゲームでできるような角度は身近なところにあるのかな。
 
外的な活動を通して角度に対する理解を深め,角の大きさについての興味を広げる


3. 授業の実践と考察<「ぐるりんゲーム」を用いた学習過程の工夫>

(1) 角についての感覚が拡張していく話し合い

 まず,隣りの友達と角度を競い合った。角度が大きい方が勝ちというルールである。始めて数分,子どもたちの中で次のような疑問が生まれた。

どっちが勝ってるの?

 

 子どもたちはこれまでに,「角度は2つの辺の開き具合によってできている」ということを学習してきている。しかし,180°を超える角度は,未経験であるがために起こった疑問である。ここで子どもたちの話し合いは次のように展開していった。

 大野,矢地,藤田の発言から,180°を超えるときの角度をどうするかということに話し合いが焦点化されてきた。また,亀村の発言からは,「2つの辺の開き具合」というきまりから,角が2つ存在することに気づき,全体に広めることができた。しかし,まだ完全に納得はできない。勝負を決めるためには,どこを測ればよいのか。

 教師は,この場面でのポイントを180°を超える角度の存在をはっきりさせることだと考えた。そこで,次のような発問を行った。

一本の線のようになったとき,
角はあるの?ないの?
  ある 4人


角は,「1つのちょう点から出ている2つの辺が作る形」だから。

中心をちょう点,スタートの線と針を辺と考えたら,あると思う。
  ない 11人


これは,まっすぐな線だから,角はないと思う。

三角形のときは,こんな形の角はなかったよ。

 「ある」と答えた子どもたちの意見も,「ない」と答えた子どもたちの意見とは,相反する意見だが,共に今までの学習や生活経験をもとにして,推論して考えようとしていた。その後,デジタルコンテンツを用いて,角は2つの辺とちょう点からできるから,まっすぐになっても,1回転しても角度であるということを確認した。

 ゲームをする中で出てきた子どもの素直な疑問を適宜学習過程に位置づけていったことで,既習の学習内容や生活経験を想起し,角に対する理解をより深めることができた。

(2) 普遍単位を求める子どもたち

 角に対する理解を深めたことで,1対1の勝敗の勝負ができるようになった。そのうちに,「クラスの中で順位をつけたい」という話になり,一発勝負の角度で順位をつける活動を行った。子どもたちは,既習の「直角」という単位を用いて1直角,2直角,3直角,4直角とだいたいの順位はつけることができた。しかし,もっと正確に測りたい,正確に順位をつけたいという願いから,普遍単位の有用性やその意味を活用して,算数の内容に関した考え方で解決しようとしていた。

<普遍単位の必要性を考える子どもたち>
C1: 直角を単位にしたら,だいたいみんながどれくらいの大きさかは分かった。
C2: でも,2直角なら2直角の中で比べるのがたいへん。透明じゃないから重ねられないし。正確じゃないよね。
C3: 小さいメモリみたいなのがあったらいいなあ。
C4: mldlみたいに,細かいメモリがあれば,微妙な差でも分かるね。

 まさに,数学的見方・考え方が表出した瞬間である。また,dlmlのような細かいものを測るための新しい物差しをイメージしたり,目盛りの取り方を豊かに表現したりすることができた。


4. 教材を「ゲーム」化したことの成果

「ゲーム」という言葉や活動が子どもの学習意欲を高め,普段は自分の考えをもてない子どもも自分の考えをもって学習に取り組むことができた。

「勝負の結果をはっきりつけたい」「早く勝負の結果を知る方法を考えたい」など,一人一人の切実な思いやつぶやきが多く出された。そうしたものを授業の中で適宜取り上げることで,角度の本質に迫る学習を展開することができた。

生活経験が乏しい角度であっても,ゲームという子どもが真剣になる活動を仕組むことで,その学習内容を深めることができた。

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