6年

基礎・基本を定着させる授業展開の工夫  
京都府福知山市立雀部小学校
葦原 宏

1.単元名   分数×分数,分数÷分数


2.単元の目標

(1) 分数に分数をかけたり分数でわったりする計算の仕方を,進んで考えようとする。 (関心・意欲・態度)
(2) 分数に分数をかけたり分数でわったりする計算を,筋道立てて考えることができる。 (数学的な考え方)
(3) 分数に分数をかけたり分数でわったりする計算ができる。 (表現・処理)
(4) 分数に分数をかけたり分数でわったりする計算の意味を理解している。 (知識・理解)


3.指導計画 (全13時間)

第一次 分数をかける計算  ……………………4時間
第二次 分数のかけ算を使って …………………3時間
第三次 分数でわる計算  ………………………3時間
第四次 分数のわり算を使って …………………1時間
第五次 どんな計算になるのかな ………………1時間


4.単元における基礎・基本について

(1) 分数×分数,分数÷分数の仕組みや意味が面積図を使って理解できる。
(2) 分数×分数,分数÷分数の計算の処理ができる。
(3) 割合を表す分数や分数で表された時間の意味が理解できる。  
(4) レディネスとして必要なこと
 
具体的な量分数 が理解できる。  
分数の加減計算や約分・通分の意味を理解し,その処理ができる。
単位分数がいくつあるかを考えることができる。
分数×整数,分数÷整数の意味は,整数における乗法除法と同じ考えで理解できる。
分数×整数,分数÷整数の計算の仕組みや意味を,面積図を使って理解できる。
割合や単位量あたりの考え方ができる。
基本的な乗法,除法の意味が理解できる。


5.指導にあたって

 本学級の児童は,算数科の課題に対してすぐに理解できる児童と,そうでない児童との差がみられ,学力の二極化が顕著である。

教師の思惑


 問題解決の手立てとなる既習事項や図を自分なりにもちながら学習をすすめ,一人一人の考えを生かし,練り合いの中から問題解決の手立てを獲得させたい。

児童の実態(6年生「分数の計算」)

通分や約分における最小公倍数の理解が不足している。
題意に即した演算決定が苦手である。
図を使って考えをまとめることができる。
既習事項の獲得状況では,学力差が大きく,全体的に算数は得意でない。
 本単元における

教師の思惑

児童の実態

鑑み,習熟の程度に応じた少人数指導を展開する。

 基礎的な学習のグループでは,面積図や線分図のかき方,単位分数の見つけ方,問題場面の把握や分数の計算のしくみをスモールステップで押さえていきながら,分数×分数や分数÷分数の計算のしくみが確実に定着することをねらう。また,問題場面に応じ,実際に活動したり,面積図を塗り分けたり,空操作をしたりする具体的な算数的活動を大切にする。発展的な学習のグループでは,既習事項を使い,自力解決主体の学習展開を進め,分数×分数や分数÷分数のしくみの法則性を捉えさせることをねらう。したがって,指導に当たっては式や面積図,線分図,関係図等を使って多様な求め方で問題解決をする時間を十分確保し,児童同士の練り合いを大切にしたい。どちらのコースでも,少人数という点を生かし,きめ細やかな指導で知識理解の定着を図るだけでなく,一人一人が自分の考えに自信を持ち筋道立てて説明したり, 友達の考えを想像して説明し たり,自分の考えと比べながら聞いたりすることで練り合いの力を高めたい。

 自力解決の場面では,既習事項とのつながりを意識し,小数の計算と同じように,かける数やわる数が分数の場合でも,その大きさを1と比べたり,問題場面を空操作したりすることで答えの大きさを予測させたい。また,今までの分数の学習で用いてきた分数スケールを重ねることによってできる面積図の理解を図り,その面積図や線分図をもとに計算のしくみを視覚的にとらえさせる。さらに除法の性質を利用し,既習の式に変換することで分数の除法の意味と計算の仕方を理解させたい。


6. 授業の実際

6年生 分数のかけ算とわり算 本時 8/13時間  (習熟の程度に応じた少人数学習)
分数のわり算(分数÷単位分数)の意味を理解し,計算できる。
◇基礎的な学習グループ ◇発展的な学習グループ

スモールステップの課題を設定して教師とともに考える学習を展開する。 面積図をかく活動を通して,÷1/3 は,×3と同じであることを見つけたり,計算の結果を確かめたりする算数的活動を通して,分数÷単位分数の計算の仕方を理解していく。(Bパターン)

自由な発想で解決方法を思考し,自分の考えを表現していく。互いの考えを出し合い,練りあうことを通して,同分母分数の加法と通分という 2 つの既習事項から,新たな計算方法を導き出す探究的な算数的活動を展開していく。(Aパターン)
既習事項の復習をする。
整数÷整数,分数÷整数の復習をして,

ことばの式

にまとめる

ぬれる面積

÷

ペンキの量

ぬれる面積

問題場面を理解する。

  ペンキの量のちがいを視覚的にとらえさせる。
 

既習事項の復習をする。
分数÷整数

問題場面を理解する。

既習の計算と同じところとちがうところを見つける。

面積が大きくなるか小さくなるかの見当をつける。
【問題】 uのかべを dlでぬれるペンキがあります。1dlでは何uぬれますか。

立式する。

本時のめあてを提示し,理解させる。


立式する。
本時のめあてを提示し,理解させる。
面積図を書き,計算の仕方を考える。
(探究的な算数的活動)


増加する様子を連続量として表現するために可動式にする。

面積図から計算の答えを導く。
前単元の学習の記録(掲示物)を手がかりに


『÷は,×3と同じ』であることを見つける。

を埋める方法で計算の仕方をまとめる。
わる数が分数になっても
考え方は同じなので  

ことばの式

 に
あてはめればよいことをまとめる。

適用題を解く。



自分なりの方法で自力解決させる。
(探究的な算数的活動)


計算の仕方を交流する。

共通点から『÷は,×3と同じ』であることを見つける。

本時の学習をふりかえり,算数作文を書く。
次時の予告を聞く。
たしかめプリントをする。
本時の学習をふりかえり,算数作文を書く。
次時の予告を聞く。



次時の予告を聞く。
10 本時の学習をふりかえり,算数作文を書く。
11 次時の予告を聞く。


7.授業を終えて
 基礎的な学習のグループの児童は,面積図をかく算数的活動をくぐって,「 ÷  は,×3と同じ」を実感的に理解した。発展的な学習のグループの児童は,友だちの多様な考えを練り合う探究的な算数的活動をくぐって同じように理解することができた。どちらのグループも,次時の「分数÷分数の一般化」に向けて『分子が 1 じゃなかったらどうするのだろう』と疑問を持ち,学習をつないでいけた。

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