2年
算数のよさを実感させる指導       
〜第2学年 「三角形と四角形」の指導を通して〜       
千葉県市川市立市川小学校
清田 博之

1.研究テーマ

 児童・生徒が算数数学の有用性についてわかるようにするにはどのように教材を組織し指導したらよいか

2.提案の趣旨

算数のよさを強調する意義

 最近の児童の傾向として,自分なりに試行錯誤して数学的なアイディアを獲得したのではなく,受身の姿勢で知識として洗練された考えを手に入れていることが多いために,その「よさ」について実感できず,全く未知の事象に出会った場合に思考を停止してしまう場合が少なくないように思われる。

 もし,児童が算数の「よさ」を実感することができていれば,どのようなことが期待できるだろうか。「前に学習したあのアイディアは便利だったから,また使えないかな?」と積極的に獲得したアイディアを使おうとする姿勢が見られるはずである。そして,「前に学習したことのうち,どのアイディアが使えるかな?」と考えてみたり,「条件を変えても成り立つかな?」と自発的に発展させて考えてみたりするなど,「学び」を新たなる「学び」へとつなげていくことができるようになるのではないだろうか。


3.実際の指導

T.単元名 第2学年「三角形と四角形」

II.指導の実際

(1)第1,2時の指導

 分類・整理する目的とその手法を知る活動

 児童は何の為に図形を分類・整理するのか,その目的を理解していないことがほとんどである。教師側から一方的に「仲間わけ」をすることを指示され何の目的意識も持たずに取り掛かることが多い。分類・整理することにより,より深くその対象を理解することができるからやるのであるが,その目的意識をしっかりと持たせたいと考えた。また,児童は調べようとする対象物について,その性質を全て取り上げようとしがちである。まず,1つの観点にしぼり仲間分けしたのちにちがう観点で仲間分けをしてそれを組み合わせることで,その対象物の特徴をよく知ることができるようになることを実感させたい。そこで,次のような手立てをとった。

≪手立て1―A(よさを際立たせる)≫
 図形の仲間わけの前に分類整理の必要性が実感でき,その手法が身につくクイズを取り入れた学習活動を行った。

先生当てスリーヒントクイズ

ルール
8人の先生の中から一人の先生を当てる。
   
質問は3回までできる。
   
質問は「はい」「いいえ」で答えられる質問に限る。
   
まぐれ当たりではなく,必ずその質問をすれば当てられるように考える。

 児童になじみの深い8人の先生方の写真を拡大して提示し,そのうちの一人を言い当てるにはどうしたらいいかを考えさせた。

内訳 男4人・女4人 眼鏡あり4人・なし4人 ピースあり4人・なし4人

  ピースサインあり ピースサインなし
「男の先生ですか」

「ピースサインをしていますか」

「眼鏡をかけていますか」

のように3つの違う観点で仲間分けをしてそれを組み合わせることで8人の先生を分類・整理することを楽しみながら実感できた。「○○先生は,女性で眼鏡をかけていて,ピースサインをしていない」というように定義づけられることも実感できた。この際,ただ当てられたかどうかを問題にするのではなく,その質問をすることによってどのように仲間分けをすることができるのかを写真を動かしながら振り返らせた。

≪手立て1―B(よさを際立たせる)≫
 8種類の図形を提示して,図形当てスリーヒントクイズをやり,必ず図形を言い当てる為の質問を考えさせた。
 (構成要素に目をつけるよさ)


 提示した図形は上記の8つ

 先ほどの先生当てクイズの要領で,今度は図形を言い当てる為の質問を考えさせた。児童から出てきた反応は以下の通りである。

線が全部つながっていますか。   曲がった線はありませんか。
         
山に似た形をしていますか。   4本の線でできていますか。

 このうち,「山に似た形をしていますか」という質問を取り上げ考えさせた。「人によってどれが山に似ている形と考えるかはちがうよ。」という反応が出て,そのような曖昧な質問はきちんと分類するときにはよくないということを全体で確認をした。(構成要素で図形を捉えるよさを際立たせる

 そのあと,児童からでた質問でどのようなグループに分けられるのかを確認していった。

「全部線がつながっていますか」
(ア,ウ,カ,キ)と(イ,エ,オ,ク)
  「曲がった線がありますか」
(イ,ウ,エ,キ)と(ア,オ,カ,ク)
         
「3本の線でできていますか」
(ア,エ,オ,キ)と(イ,ウ,カ,ク)

 そして,この3つの質問を組み合わせることで必ず8通りの図形に分類できることを確認した。このあと,改めてこの3つの質問を振り返らせて共通点を考えさせてみた。

 「3つの質問に共通することはないですか。」児童からは,「3つの質問とも線のことを尋ねています」という反応が返ってきた。

児童のノート(学習感想より)

ぼくは見た感じで仲間わけをしていたけれど,それだと人によって違うグル−プに入れてしまうことがあるんだと気づきました。
   
線に目をつけて仲間分けすれば,簡単に仲間わけすることができるということを知りました。
   
このクイズで出てきた図形は8つだけだったけれど,もう1回質問することができるのなら16個の図形を分けることができると思います。
 この後,3つの質問をもとに「キ」を三角形,「ウ」を四角形とよぶことを指導した。そして,3つの質問からそれぞれについて定義づけをした。

三角形:「直線3本でできていて,線が全部つながっている」
   
四角形:「4本の直線でできていて線が全部つながっている」

(このあと,「3,4本の直線で囲まれた形」という表現を指導した。)

(3)第3,4時の指導

≪手立て2(よさを活用する)≫
 前時で作り上げた定義を基に多くの図形から三角形と四角形を判別させた。

 凹型四角形や三角形や四角形と似て非なるものをとりあげ判別させた。その際,その理由も考えさせた。

「この形は,何の仲間になるんだろう」

「四角形です」

「とんがっていて,本当に四角形なのかな」

「だって,全部囲まれているし,直線だし4本だから。」

「これも,三角形に似ているけれど上に短い線があって全部で4本の直線で囲まれているから四角形」

 このあと,Suicaのカードのように角が丸まっている四角形に似た形なども取り上げて,なぜこれが四角形とはいえないのかを考えさせた。

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