6年
すべての児童に確かな学力をつけるコース別学習        
佐賀県太良町立多良小学校
榮岩 和浩

1.はじめに

 本実践では,コース別学習に取り組んだ。通常2クラスの学年を,児童の自己選択によって発展,標準,基礎の3つのコースに分けた。発展コースでは,難易度や場面の違う2種類の問題を自己選択によって取り組ませ,解決した問題ごとに小グループに分けて話し合わせた。その結果,多くの児童が問題内容を把握した上で自力解決ができ,話合い活動にも積極的に参加して自分の考えを分かりやすく表現できるようになってきた。


2.コース別学習とは

 コース別学習ではコースごとに指導計画を立てる。学習内容を十分理解できていない児童は,基礎的・基本的な内容を繰り返し学習したり,ほかの場面や方法でもう一度学習をやり直したりする。十分理解できている児童は,更に発展的な問題に取り組む。また,個人差に応じたレベルの問題提示をすることによって,すべての児童に自力解決をさせることが可能になる。


3.単元名 第6学年「整数の性質を調べよう〜倍数と約数〜」


4.単元の目標

 倍数や約数の意味を理解し,それらを求めたり,それらを使って問題を解決することができる。


5.指導計画(全11時間)

主な学習内容
振り返りチェックテスト・コースガイダンス
  問題選択コース【発展】 運動会コース【標準】 お買い物コース【基礎】
倍数,公倍数,最小公倍数 倍数の意味と見つけ方 倍数の意味と見つけ方
発展問題 公倍数,最小公倍数の意味理解 公倍数,最小公倍数の意味理解
最小公倍数の求め方の工夫 最小公倍数の求め方の工夫 最小公倍数の求め方の工夫
公倍数の利用 公倍数の利用 公倍数の利用
約数,公約数,最大公約数 約数の意味と求め方 約数の意味と求め方
完全数(発展問題) 公約数,最大公約数の意味理解 公約数,最大公約数の意味理解
最大公約数の求め方の工夫 最大公約数の求め方の工夫 最大公約数の求め方の工夫
公約数の利用 公約数の利用 公約数の利用
10・11 学習内容の適用と習熟 学習内容の適用と習熟 学習内容の適用と習熟


6.授業記録(8/11時 問題選択コース 20名)

学習活動 教師の発問・支援(◇)児童の反応(◆)
問題を知る。
 
 
 
A 24と36の公約数の見つけ方を考えましょう。
B 18と24の公約数の見つけ方を考えましょう。
 
 
課題をつかむ。
 
この2つの問題ではどちらが簡単だろう。
   
数が少ないからBが簡単そうだ。
   
A問題選択…7名 B問題選択…13名
 
速く,簡単に公約数を見つける方法を考えよう。
 
問題を選択し自力解決をする。
 
 
問題A 問題B
1 数直線や表に表す。
2 24と36の約数を全部求めて見つける。
3 36の約数だけ求めて,24をそれらでわる。
4 24の約数だけ求めて,36をそれらでわる。
1 数直線や表に表す。
2 18と24の約数を全部求めて見つける。
3 24の約数だけ求めて,18をそれらでわる。
4 18の約数だけ求めて,24をそれらでわる。

 
早くできた児童には,もう一方の問題をやってみるよう助言する。
   
解決の方法が思い付かない児童には数直線をかいたヒントカードを与える。
 
解決の方法についてグループで話し合う。(なるほどタイム)
 

 
グループの代表が発表し合い,交流を行う。(なるほどタイムU)
 
 
どちらの問題も解決できた児童には,話し合いたいグループを選択させる。
   
グループ分け   A問題 3グループ(4名,4名,4名)
    B問題 2グループ(4名,4名)
   
話合いのポイントを頭に入れて話合いを進めよう。
   
  わかりやすい
  簡単
  いつでも使える
話合いのポイント
   
一人の考えではなく,いろんな人の考えをミックスしてかいてもいいし,代表は一人でなくてもいいよ。
   
それぞれのグループ代表にホワイトボードにかいた考えを説明させる。
   
   
問題A 問題B
 
本時の学習についてまとめる。
 
数の大きい方の約数を先に求めているグループと,小さい方の約数を先に求めているグループがあるけどどちらがいいんだろう。
   
公倍数のときは大きい方の数を先に求めたからそれと同じじゃないかな。
   
いや,小さい方の数が約数が少ないから速く見つけられると思うよ。
 
公約数は小さい方の約数から求めた方が簡単に求められる。
 
本時の学習を振り返る。
 
 
今日の学習を振り返って,分かったことや感想を書こう。
 



7.成果と課題

問題を自己選択して取り組むことによって,児童は主体的な学習をすることができた。また,問題が複数あることは学ぶ意欲を喚起させることにもなり,早くできた児童はもう一方の問題に挑戦し,時間を有効に使うことができていた。
   
グループでの話合いでは全員が発表するため,常に発表を意識して自力解決に臨み,意欲的に話合いに参加していた。友達同士で質問やアドバイスをする場面がよく見られた。小グループ活動の後の全体での交流活動だったために,児童は自信をもって発表したり質問したりすることができ,話合いが活性化した。主体的に考え,話合いや交流活動に参加することにより,表現力を高めることができた。
   
1単位時間にグループでの話合いの後に全体での話合いを行うことは時間的にかなり厳しかった。児童の実態や学習内容に応じて,どちらかを充実させるような柔軟さも必要だと感じた。

【 参考文献 】伊藤 説朗編 『コース別指導による確かな学び 理論編』 明治図書

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