私の実践・私の工夫(算数)

5年
子どもの発想にそった学習展開(円の面積)             
〜習熟度(どんどん)コースでの取り組み〜                  
滋賀県 小学校
1.単元名  「円」

2.指導によせて

 <単元観>

 円の面積についての一般的な指導の流れは次のようなものである。

  (1)  円に内接する正方形をかき,半径×半径の2倍よりも面積は大きいと推測する。

 さらに,円に外接する正方形をかき,半径×半径の4倍よりも面積は小さいと推測する。

 (1)
  (2)  半径10cmの円を,1cmの方眼紙の上にかき,升目を数え,円全体の面積を導き出し,半径×半径(10×10)の何倍になっているかを考える。


 (2)

  (3)  円を直径の線で,8分割,16分割,32分割,64分割し,それぞれの分割したおうぎ形を交互に並べていくと,次第に長方形に近づくことがわかる。

 そこで,長方形の面積に習って,縦=半径,横=直径×円周率÷2に置き換えて,計算の式を立て,式を整理していくと,半径×半径×円周率という円の面積の公式が導き出される。

 これらの指導の流れは,理にかなっており,子どもの思考に無理なく入るものと考えられる。しかし,ともすると児童の発想を無視した一方的な学習の流れになりやすい傾向を持っている。

 そこで,本実践では(1)と(2)の間に,自分なりに既習の面積の求め方を利用して,円を分割し,円の面積を求めるという学習活動を入れてみた。

 このことにより,(1)で円の面積は,半径×半径のおよそ2倍から4倍の間にあるという見当をつけた児童にとって,「本当は何倍になるのだろう」という課題が生まれるとともに,「なんとか正しい数値を導き出してみたい」という意欲が生まれる。

 それをすぐさま方眼紙で数えなくても,自分なりの方法を考えることにより,様々な求め方があることがわかり,それを交流し合うことによって,より正確な求め方を導き出すことができると考えた。

 さらに,統計的な見方考え方を高める上でも,円の面積により近い求め方を交流し合うことにより,数値の正確さを見当するよい材料になると考えた。

<児童観>

 本グループの児童は,少人数学習でいわゆる習熟度を加味した学習タイプ別コースによる編成によって構成されている。

 男子18名女子16名計34名。名称は「どんどんコース」で,比較的算数を得意とする児童や,算数科の学習を深く追究してみたいと考える児童が中心となっている。

 そのため,発言や取り組みは意欲的であり,難しそうな課題に対しても挑戦的な姿勢で臨むことが多い。

 交流でも,自分なりの考えをしっかり発表できる児童が多く,互いの考えのよさを認め合うことができる。

3.単元の目標

 ・円の直径や円周を測る活動を通して,円の学習に関心をもつ。(関)

 ・円の直径と円周の関係や面積の求め方を考えることができる。(考)

 ・公式を使って円周や面積を求めたり,円周から直径を求めたりすることができる。(表)

 ・円周率の意味や円周や面積を求める公式を理解することができる。(知)

4.指導計画 全8時間(本時4/8時間)

時間学習活動評価規準
第1次

1時間
円周と直径の関係について考えることを通して,円の学習についての見通しを持つことができる。

同心円を3つ描き,直径の長さが変わることによって,何が変わるか予想する。

円周の用語を知る。

円周は直径の何倍かを予想する。
円についての学習に意欲をもち,見通しを持つことができたか。
1時間 円周と直径の関係について調べ,円周率について理解する。

前時の復習をし,円周の長さは直径の何倍かを考える。

各自の方法を考え,交流する。

円を切って,ころがして測ったり,ひもで測ったりしながら,円周の長さを求め,直径で割る。

円周を直径で割ると,どんな大きさの円もほぼ3.14倍になる。

直径に対する円周の割合3.14を円周率として使うことを知る。
筋道だった考え方で見当づけができ,いろいろな工夫をしながら,実測できたか。
1時間 円周率を用いて,円周や直径の長さを求めたりすることができる。

直径から円周を求める問題を考え,立式し,求める。
円周=直径×円周率の公式を作る。

円周から直径や半径を求める問題を考える。
公式を適用し,問題を解くことができたか。
第2次

1時間
円のおよその面積を求めることができる。

円の面積を求めることを知る。

円のおよその面積を考える。
半径×半径の2倍<円の面積<半径×半径の4倍

自分なりの方法で,もっと正確に半径×半径の何倍になるかを求めることを予告する。
円の面積について既習事項との関わりで見当をつけることができたか。
1時間

本時
円のおよその面積を詳しく求めることができる。

一人ひとりが,自分なりの方法で円を分割し,円の面積を求める。

求めた方法を交流しあい,より正確な求め方について検討する。

互いの求め方のよさをみつける。
既習事項を生かしながら,自分なりの方法でさらに詳しく円の面積を求めることができたか。
1時間 円を等分に切って並べ替え,既習の図形(長方形)を形作る活動を通して,円の面積の公式を導き出すことができる。

円を同じ大きさのおうぎ形に切って並べる。

できた長方形から,円の面積の公式を考える。
具体的な活動を通して,意欲的に円の公式を作ろうとしたか。
2時間 円周・円の直径・円の面積を求める問題を通して,円についての理解を深めることができる。

半径から円周を求める問題を考える。

半径から円の面積を求める問題を考える。

円周から,直径や半径を求める問題を考える。

運動場のトラックの長さや,面積を求める問題を考える。

単元末評価
既習の知識や考え方を使って,自分なりに解決できたか。

5.本時の目標

 ・既習の図形の面積の求め方を使い,円の面積を詳しく求めることができる。

 ・求め方を交流しあい,よりよい求め方を考えることができる。

6.本時の展開

学習活動予想される児童の反応指導上の留意点
前時の復習をする。 円の面積は

半径×半径の2倍より大きい

半径×半径の4倍より小さい
前時の図形を使いながら,2倍〜4倍になることを確認する。
既習の図形を使って,円の面積をさらに詳しく求めよう
円を1cmの方眼に分け,内接する方眼と線上の方眼に分けて数を数え,線上の方眼を0.5平方センチメートルとして計算し,円の面積を求める。

計算例

69+17×0.5=77.5
77.5×4=310
半径×半径の約3.1倍

円に内接する正方形や,長方形で分割し,円の面積を求める。

円に内接する三角形を測り,その合計で円の面積を求める。

円をおおぎ形に分割し,分割したおうぎ形を三角形と見て,面積を求める。
各自に半径10cmの円を描いた画用紙を渡す。
直径で4分割し,1区画ずつ自分なりの方法を考え,4倍にして計算で面積を求めるようにする。

次の方法については,別の区画で考えるようにさせる。
求めた面積について,交流しあう。 それぞれの面積の求め方がわかる。

どうも円の面積は,半径×半径の3倍近くになるようだ。

円周率と同じになるかもしれない。
OHCを使い,各自の求め方を交流しあう。

より正確な求め方を話し合い,理由についても考える。

7.結果と考察

 それぞれが求めた求め方は次のようなものであった。

 (1)


 (2)


 (3)


 (4)


 (5)


 (6)


 (7)


 (1)では,予想通り1cm方眼に分けて,面積を求める方法を考える児童が出できた。さらに,より正確を期すため,0.5cm方眼に分けて求めようとする意欲が見られた。

 (2)では,円の中に正方形や長方形を敷き詰めて,一つ一つの面積を求め,それを合計しながら,全体の面積を求めている。

 (3)では,前時学習した円に内接する正方形を元にして,さらに残りの部分に三角形を敷き詰めていき,可能な限り正確な面積を求めようとしている。測定のミスや,若干の計算ミスが見られるが,その発想の根底には,円周を求めていくときに,正六角形,正十二角形,というようにして求めた学習活動を想起して,それを面積にも応用できないかと考えている点がよい。

 (4)では,(3)と同様な考え方で求めようとしているが,正十二角形などに分割したときに,三角形の垂線が,円の中心から降りてくることに着眼しており,より正確な数値を導き出そうとしている。

 (5)では,コンパスを使いながら,円周を区切っていき,できたおうぎ形を三角形と見立てて,円の面積に迫ろうとしている。

 (6)では,内接する四角形の面積と,残りの部分を方眼に分けて面積を正確に求めようとしている。

 (7)では,円周を約1cmずつに区切り,円の中心と結ぶときにおうぎ形ができる。その扇形を三角形と見立てて,面積を求めて,円全体の面積を求めようとしている。

 このように,子どもたちは様々な既習事項や考え方を用いて,円の面積に迫ろうとしていた。さらに,他の児童の発想を生かしながら自分なりの独自の考え方を求めようとし,交流の場面でも,互いの考え方のよさやよりよい方法を比較することができた。その中で,ある児童が「先生,どうも円の面積は半径×半径の3.14倍になるのではないか」「円周の時も3.14倍が出てきたように,円の面積でも3.14を使うようだ。」といった見通しまでもてるようになった。

 実際に,一人ひとりの取り組みを発表する中で,教師が持ち出さなくても子どもたちの発想の中に,方眼に分けることなどアイデアは自然に生まれてくるものであることが明らかになった。さらに驚かされたことは,円を細かなおうぎ形に分割して面積を求めていく方法が考えられたことである。

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