4年
「空気の温まり方」を目で見よう       
−「物のあたたまり方」の指導を通して−        
神奈川県川崎市立西有馬小学校
井上 晴夫
1.はじめに

 理科では『見えないものをいかに視覚化するか』が話題になることがよくあります。この単元は「金属・水および空気の温まり方を,身の回りの現象と関係づけながら工夫して調べ,意欲的に追究できるようにする」という目標で,日ごろ,温めて生活に役立てているものが,実際にはどのような温まり方をしているのかを科学的に説き明かすという内容です。

 目には見えない,物が温まっていく様子をいかに視覚化するかが与える感動,学習意欲につながる大きなポイントといえます。

2.空気の温まり方を目で見たい

 金属や水の温まり方は子どもにも予想しやすく,したがって子どもの考えた方法でも十分実験できるところです。しかし空気の場合はどうでしょう。「空気は水と同じような温まり方をするのではないか」とは容易に推論することができますが,いざそれを確かめる,しかもはっきりと目でとらえるとなると,なかなか良い方法を考えつかないのが実情です。

 啓林館の教科書では,ストーブで教室を温め,各部の温度を測るという方法がとられていますが,実際やってみると温度差が微妙だったり,ストーブではなく測定している子どもたち自身の動きによる空気の流れが邪魔をして,なかなか教師も子どもも納得する結果が得られません。

 もう1つ,教科書の指導書にダンボール箱を教室に見立てる方法が記載されています。ハンダゴテを熱源とし,線香の煙の動きで空気の温まり方を調べようというものです。モデル実験となっていますが,ちょっと試してみると水と朱液同様,対流の様子が良くわかり,比較的簡単に作れそうなので,これにさらに自分なりの工夫を加え,グループ実験として取り組んでみることにしました。(11月中旬)

3.実験装置Aの作り方

 ☆材料と道具

 B4のコピー用紙が入っているダンボール箱(中の用紙を取り出すときは,開封口から開けるのではなく,写真のように側面の接着されている面から開けて取り出す。)

 カッター 版画用板(26×2) 墨汁 すずり 筆 ラップ(幅30)

 セロハンテープ ガムテープ

(1)ダンボール箱を2つに切る。1つの箱から2つの実験装置を作ることができる。切った断面を《窓1》とする。

(2)中のコピー用紙を取り出すときに開けた3つの耳の部分を,2cm程残してカッターで切る。この部分が《窓2》になる。

(3)残した部分を内側に90゜折り,支えの無い角に版画用板を柱のように立て,ガムテープでとめる。窓1,2ができる。ハンダゴテを入れる2cm×2cmの穴をカッターで,線香を入れる穴をキリであける。適当な場所にあけると実験のときに手で持たなくてすむ。

(4)箱の内側を墨汁で黒く塗りつぶす。箱を立ててラップで窓1,2を覆うように密閉し,セロハンテープでとめる。ラップの幅が30cmなので,26cmの箱の高さと両側2cmづつ の余りで,ほぼぴったりと覆うことができる。
窓2は横から懐中電灯で照らす窓である。窓1は観察窓。

4.まとめ

 子どもたちには実験方法をグループ毎に考えさせていたので,まずそれを発表してもらった。危なくなく温まり方の様子がわかりそうな方法が1つあったので,話し合いの結果少し改良して,その実験を先にやってみた。

 装置Bは写真のように簡単なものである。暗幕のないところで実験してみたが,ビーカーの中で煙がまさしく対流しているのが良く見られた。子どもたちも一様に驚き・感動の声をあげた。アルコールランプなしでも良い結果が得られた。

 そのあと暗幕をひいて教師の手作り教材Aで実験した。いろいろと試しているので,温まり方はよくわかるのであるが,その前に行った1つのグループが考えた方法がすばらしかったので,感動は薄かったようである。思いがけず2つの方法が紹介できた。装置Bは自信を持ってお勧めする。

 装置Aを6個作るのに約40分かかった。作ってしまえば何回でも使え,ハンダゴテや線香の位置を変えることができ,変化に富んだ暖房効果の実験ができる。また横から懐中電灯を照らすための窓2が上にくるように縦に置くと,窓2のラップの上に氷などの冷却剤を置くことができる。つまり冷やされた空気の動き(冷房効果)を見る実験装置に早変わりする,と考えて試行錯誤を繰り返しているが,まだ良い結果は得られていない。このホームページの読者にも是非挑戦してほしい。


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