6年
「モデル実験」と「自然の働き」を結びつける授業展開を目指して
〜「大地のようす」の授業を通して〜
埼玉県小学校 A教諭

 

1.研究テーマと単元のねらい

 本研究では,「「モデル実験」と「自然の働き」を結びつける授業展開を目指して」というテーマを設定して取り組んだ。本単元は,自然の壮大な時間的・空間的広がりの中で大地が作られてきたということをわずかな指導時間の中で学習することが求められる。しかし,崖や切り通しなど露頭を児童に提示するのに適切な場所が地域的にない場合が多く,写真やビデオなどデジタル資料に頼らざるを得ない状況が多々あり,科学的な見方,考え方を養い,自然観を十分に育成するような授業内容を作り上げることが困難な単元であると思われる。

 そこで,本研究では地層のでき方,特に流水による土砂の運搬・堆積の理解を深めるために,少人数で流水堆積実験に取り組んだ。そして,その実験装置は自然の壮大な時間的・空間的広がりの一部をモデルとして成立していることを理解させるため,『「モデル実験」と「自然」の間を繋ぐ活動』を工夫する授業展開を計画した。この『「モデル実験」と「自然」の間を繋ぐ活動』として,「地層のでき方を紙芝居にまとめる活動」を行った。この紙芝居にまとめる活動を通して,実験と自然の働きが結びつき,実感を伴った流水堆積実験になるのではないかと考えた。

 

2.『「モデル実験」と「自然の働き」を結び付ける活動』について

 「モデル実験」と「自然の働き」を結びつける活動のイメージは,以下のようなものである。

 

3.「モデル実験」と「自然の働き」の間に「紙芝居の活動」を挟む ねらい

物語にすることで,「いつ」「どこで」「どんな自然の働きが生じ,どうなるか」を具体的・視覚的にまとめることができ,時間的・空間的な広がりの理解に役立つのではないか。
紙芝居の枚数を制限することで,地層ができるまでの様々な自然の働きのうち,重要な働きのみを児童は自然と選び出すことができるのではないか。
紙芝居は物語にする必要があるので,地層ができるまでの自然の働きの順序性が明確となるのではないか。
紙芝居を元に,流水堆積実験に必要な装置の選定や実験計画を立てることができ,なぜ水槽に土を流し込む実験をするのか等を理解した上で実験に移行できるのではないか。

 

4.単元計画

 

5.出来上がった紙芝居

 

6.紙芝居をもとにした実験計画 および 実験

 

7.単元の最後に行ったまとめノート

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8.今後の課題

全児童が紙芝居作りに主体的に参加できたか
   
  今回3人の小グループで紙芝居作りを行ったが,ある特定の児童が率先して紙芝居を作り,全児童が同様に学習を深めることができたかどうか,という課題が残された。よって,小グループによる問題解決学習の利点と,個人の学習の深まりのバランスが取れるような学習形態の工夫が必要と思われる。
   
学習の深まりを評価できたか
   
  個人の学習の深まりをどのように評価するのか,といった課題も残された。今回は紙芝居を書いた後に,「どんなことに注意して紙芝居を作りましたか。」という質問をしたが,目標であった「地層のでき方をいかに推論することができたか」については的確に評価することが難しかった。
   
紙芝居作りの提示の仕方
   
  紙芝居の活動をより効果的なものとし,児童一人ひとりの学びを確かなものとするために,課題の提示の仕方に課題が残った。例えば,「紙芝居の枚数」,「作成時間」,「作成する人数」などである。紙芝居の枚数は,要点をいくつに絞り作成するかにかかっており,重要なポイントである。時間においても今回は約20分の時間配分であったが,より多くの時間を設定する必要もあるかもしれない。人数においても,個人活動にするか,グループ活動にするか,グループ活動であれば何名ぐらいが妥当であるか検討する必要があると思われる。




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