4年
一人一人の確かな学びと個に応じた指導を目指して
             〜「電気のはたらき」の実践をとおして〜                
熊本県人吉市立人吉西小学校
井上 竜作

1.はじめに

 小学校理科においては,子どもの問題解決の能力や自然を愛する心情,科学的な見方や考え方を育成することを目指しています。私は理科という教科を教える上で,「子どもたち一人一人が新たな事象と出会うことが大切である。」「更に,それを生かして子どもたちが見通しをもって主体的に学習を進める中で,確かな学力が身についてくるのだ。」と考え,授業を行っています。そのためには,一人一人の子どもの実態を適切に把握し,個に応じた指導を行っていく必要があると思いました。

 4年生は,自然の事物・現象に対する興味・関心が高く,理科の学習にも慣れてきて,観察・実験に意欲的に取り組み,科学の楽しさを実感できる時期であると思います。

 本学年では,「自然の事物・現象の変化に着目し,自然の事物・現象の性質や変化,規則性,関係についての見方や考え方を養うこと」がねらいであります。また,その変化とそれにかかわる要因を関係付けながら調べ,問題を見いだし,見いだした問題に興味をもって探究する活動,つまり「見通しをもって行う活動」が重要になってくると考えます。

 その中で,「電気のはたらき」の学習における「導入の工夫」・「見通しのもたせ方」・「個に応じた指導の工夫」の実践を紹介したいと思います。


2. 児童の実態

 子どもたちの実態として,3年生の学習内容について,「豆電球と乾電池のつなぎ方」や「電気を通すもの」はよく理解していましたが,「磁石の性質」と勘違いしている子も数人いました。

 本単元で学習する「電気」については,生活の中でいろいろな形で利用されていることを子どもたちは理解していました。電池やモーター,光電池等はおもちゃや家庭用電化製品など日常生活の中ではなじみ深いものとなっています。また,「直列つなぎ」「並列つなぎ」という言葉は理解していませんが,乾電池を増やせば動きが速くなったり,力が強くなったりすることに気づいている子どもが半数近くいたことがわかり,子どもたち一人一人の中に,様々な概念があることを改めて感じました。


3.授業の実際

(1) 導入の工夫から個に応じた指導につなげるまで

 導入として,実態調査の結果から3年生で学習したつなぎ方の経験を用いて,「乾電池1個とプロペラ付きモーター」をつかってモーターを回して遊ぶ活動を行いました。

 その結果,子どもたち全員が楽しく活動できました。

 また,モーターを回す活動の中で,「電気はどう流れているのか。」という課題を与え一人一人自分の考えを回路図に書き込ませて,まとめではそれぞれの意見を出し合い全員で電流の流れについてまとめました。そして,これから「電気のはたらき」について学習することを伝え,学習内容の見通しをもたせました。

(光の量を調節しながらの実験)

 

 このように,これまでの学んだ経験を復習し,学習活動することで,自らの課題を持ち,学習意欲を持たせることができたと思います。

 そこで,これまでもっていた概念をもとにし,一人一人に「一番速く回すにはどうしたらよいか」という課題を与え,主体的な課題解決活動の中での個に応じた指導へつなげていきました。


(2) 見通しのもたせ方と課題の共有

 「電気のはたらき」の第4次で,乾電池2個とモーター付きプロペラ,電流計を使って,「電流が一番流れる回路をみつけるよう。」という課題を提示し,解決の見通しを考えさせました。

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個人で考えたワークシート

 まず個人で考え,ワークシートに予想と理由を書かせました。

 すると,一人一人がしっかり課題を持ち,自分なりの予想をしっかりたてることができました。

これにより,解決の見通しをもたせ,課題をいくつかのパターンに分けることができました。また,同じ考えを持つ者同士をグループ化し,課題の共有を行うことができました。
 次に同じ考え同士の友達と3〜5名のグループを組んで実験を行いました。
 

グループでの活動の様子
 その後,自分たちの結果の発表を行い,それをもとに他と比較・検討して,電池のつなぎ方を一斉にまとめました。
数人のグループに分け,1グループに1実験セットと1実験台を与えました。

自分たちのグループにおいて,問題解決に向けての活動を集中し,主体的に行うことができました。

 

(3) 個に応じた指導の工夫 (補充・発展のコース別指導)について

 基礎・基本の確実な定着を図ることと,学習内容をより深く理解させるために,つなぎ方のまとめとテストを実施後,補充と発展の時間を設定し,コース別学習を行いました。

 コースの選択については,まずそれぞれのコースの内容を説明した上で,今の自分の基礎・基本の定着度を認識させるために,これまでの学習のまとめやミニテストの結果を振り返らせ,コースを子どもたちに選択させました。

 その結果,Aコース(補充10名)「乾電池のつなぎ方による電流の強さをもう一度自分たちで実験してわかるコース」とBコース(発展17名)「自分たちで木炭電池を作り,光電池や乾電池と同じはたらきを持つことがわかるコース」に分かれました。

Aコース(補充)
電池1個とモーターのつなぎ方,直列回路・並列回路のつなぎ方を電流の強さと関係についての学習
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実験セットでつなぎ方を復習している様子

Bコース(発展)

木炭と紙,食塩水で木炭電池をつくり,光電池や乾電池と同じはたらきを持つことを学習

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木炭電池でモーターを回している様子

人数が少ない分,どちらのコースも一人一人が自分の活動を行うことができました。特にAコース(補充)では一人に1セット実験器具を用意することができ,集中して学習することができました。また,その中でも,ヒントコーナーを設置したり,教師の合格チェックをもらったりと,個に応じた指導を行いました。また,Bコース(発展)でもそれぞれが木炭電池を作り,極を探したり,乾電池とつないでみたりと自分たちの課題に取り組み,充実した学習活動を行うことができました。


4.評価と課題

 導入の工夫として,実際に回路を作らせ,それを使い遊ぶ活動を行うことで,子どもたちの学習意欲や電気のはたらきに対しての興味関心が高まり,自らの課題を持つことができたと思います。

 また,課題を一人でしっかりと考えさせることで,子どもたち一人一人に明確な課題意識を持たせることができ,見通しをもった活動ができました。

 更に,補充と発展,2つのコースに分け,2人体制で指導に臨むことより,少人数指導が可能になり,指導がより行き届くようになります。この補充と発展のコース選択については,これまでのしっかりとした評価の積み重ねが重要で,それを子どもたち一人一人が納得し,自分で判断できるような日々の指導が必要であると思います。また,お互いのことを認め合える雰囲気づくりを作っていかなければならないでしょう。また,限られた指導時間の中で補充・発展の時間や活動場所を見いだすことがこれからの課題ではないでしょうか。


5.おわりに

 この「電気のはたらき」の学習において,実験セットを用意したり,ワークシートを作ったりと教材の準備が大変でしたが,その分,子どもたちの反応も大きく,子どもたちが生き生きと活動をしてくれて,理科の楽しさや奥深さを改めて感じることができました。今後も一人一人が輝く授業を目指し,研鑽に努めていきたいと思います。


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