6年
児童の興味を持続させながら,     
見通しを持って追究するための指導計画の工夫     
神奈川県相模原市立富士見小学校
田巻 直人
1.はじめに

 本単元「水溶液の性質」で,育てたい資質・能力として

水溶液に興味を持ち,金属との反応や指示薬による仲間分け,および水溶液に溶けているものを調べる活動を通して,水溶液の性質やはたらきについての見方や考え方をもつようにするとともに,水溶液の性質やはたらきを多面的に追究する能力や,日常生活に見られる水溶液を見直す態度を育てる。

 
(1) 興味を持続しながら追究していく力
(2) 見通しをもって追究する力
(3) 日常の生活の事象に結びつけて考える力
の3点を設定した。


2.導入の工夫

 無色透明で見分けのつかない3種類の水溶液(塩酸・石灰水・食塩水)にBTB液を入れ,色が変化する様子を見せた。次に先ほどと同じように無色透明な液(水酸化ナトリウム水溶液)にアルミニウムを入れ,溶けていく様子を見せた。黄色や青色や緑色に変わる様子や泡を出しながら溶けていく様子は,子どもたちにとって手品のような驚きがありインパクトを与えるものとなった。

 この2つの演示実験をすることで,「水溶液って不思議だな」と興味関心をもつとともに,様々な疑問を出し合う中で,課題へと高め,いろいろな観点や方法で多面的に追究し,水溶液の性質や働きに迫っていった。


3.見通しを持つ力をつける(仮説カード)

拡大図へ  子どもたちの実態として,「課題が明確になっていないため,何のために実験をするのかわかっていない」「それがわかっていないので,その結果どうなのかという考察ができない」ということがあげられる。そこで本単元では,課題を明確にし,方向性をしっかりともたせるために,「○○○を調べるために○○○をする。結果として○○になったら,○○だといえる。」という仮説をたてさせることとした。それにより,実験結果から考察へと思考を深めることができると考えられる。水溶液の性質の学習では,仮説→実験→結果→考察という過程がつくりやすく,学習を通して見通しをもって追究しようする力が身につくと考える。





単元計画 【全14時間】※教師の支援  

第1次 【1時間】
 
3種類の水溶液(A:塩酸 B:石灰水 C:食塩水)にBTB液を入れ,様子を観察する。
水酸化ナトリウム水溶液にアルミニウム片を入れ,様子を観察する。
透明な液に色がつくなんてすごい。
黄色,青色,緑色になったよ。
入れた液は何だろう。
最初の透明な液は何だろう。
他の液でやるとどんな色になるだろう。
時間がたつとアルミニウム片が溶けてしまったよ。
あわがぶくぶく出ていたね。
透明な液は何だろう。
他の物も溶かしてみたいな。
他の液でも溶けるのかな。
第2次 【3時間】
他の液でやるとどんな色になるだろう。
水でやるとどうなるかな。 お酢でやってみたいな。 洗剤はどうだろう。 
いろいろな液でどんな色になるかためしてみよう。
どの液でやっても,3色の中のどれかだね。 水溶液には3つの仲間があるんだね。
リトマス紙を使って水溶液を仲間わけしてみよう。
BTB液以外でリトマス紙でも水溶液の性質を調べることができるんだね。  仮説カード
他にも何か調べることができるものはないのかな。
植物の汁で水溶液を調べよう。
紫キャベツでもアルカリ性や酸性,中性を調べることができるんだね。
水溶液は酸性,中性,アルカリ性の3つの仲間に分けることができるんだね。
第3次 【3時間】
最初の透明な液は何だろう。
透明だけど,きっと何か溶けていると思うな。蒸発させてみよう。 
水溶液を蒸発させてみよう。
Aの水溶液は何も残らないね。 BとCの水溶液は白いものが出てきたよ。
何も残らないということは気体が溶けているのかもしれない。

Aの水溶液は塩酸で塩化水素という気体が溶けていることを知らせる。
他にも気体が溶けている水溶液があるのかな。 炭酸ってそうじゃない。
炭酸水に溶けている気体を調べてみよう。
気体を集めてみよう。  集めた気体は何だろう。 仮説カード
気体検知管で調べてみよう。  石灰水を入れてみよう。   
二酸化炭素が水に溶けるか試してみよう。
どうやれば混ぜることができるかな。 仮説カード
へこむんだったらペットボトルでもできるかな。
水溶液には塩化水素や二酸化炭素など気体が溶けているものがあるんだね。
第4次 【3時間】
他の物も溶かしてみたいな。
最初に見た時はアルミニウムがあっという間に溶けてしまったね。
赤いリトマス紙が青くなったからアルカリ性だね。
※水酸化ナトリウム水溶液であることを知らせる。
水酸化ナトリウム水溶液は他の金属も溶かすことができるのかな。
他の金属も溶かしてみよう。
鉄を入れてみるとどうなるだろう。 銅もいれてみよう。 仮説カード
水酸化ナトリウム水溶液はアルミニウムを溶かす性質があるんだね。
他の水溶液でも溶けるか試してみよう。
この前実験した3種類の水溶液でやってみよう。 仮説カード
塩酸はなんだか溶けそうだな。 塩酸は予想通り溶けたね。 塩酸は鉄も溶けるんだ。
鉄やアルミニウムが溶ける水溶液もあれば溶けない水溶液もあるんだ。
溶けた金属はどこにいったんだろう。(塩酸)
仮説カード
蒸発させたら白い粉がでてきたね。これがアルミニウムかな。
塩酸にもう一度入れてみればアルミニウムかどうかわかるんじゃない。
もとのアルミニウムとは違う物質になったんだ。

水溶液には,金属を変化させるものがあるんだね。
第5次 【4時間】
【授業のポイント】 これまでに学習した水溶液の性質やはたらきをつかって,グループで考えを出し合い,見通しをもって実験を行う中で試行錯誤しながら,水溶液を見分けることができる。
 
いろいろな水溶液の正体をあばこう。
Aうすい塩酸 B石灰水 C水酸化ナトリウム水溶液 D食塩水


  ※ これまでの学習を振り返り,仲間分けができそうだという見通しをもてるようにする。

  ※ 見通しをもつ力をつけるために,行きあたりばったりで実験をおこなうのではなく,予想をたてて実験を行うようにする。

  ※ 実験をする際には塩酸など危険な水溶液も取り扱うので,十分に注意する。
特に水酸化ナトリウム水溶液は蒸発させると危険なため,再度確認する。

Aはリトマス紙が青から赤に変わったから,酸性だね。
BとCはBTB液が青色になったからアルカリ性ね。
Dは紫キャベツの汁で色が変わらないから,中性だね。
AとCは両方ともアルミニウムを溶かすね。
Aは酸性だから塩酸,Cはアルカリ性だから水酸化ナトリウム水溶液だ。
Dを蒸発させた白い粉を顕微鏡で見ると食塩の結晶だったから食塩水だ。
Bの水溶液に二酸化炭素を入れると白く濁ったから,石灰水だ。
水溶液にはそれぞれ決まった性質があって,それをうまく使うと分けられたよ。

身の回りのものでアルカリ性,酸性,中性を調べる試薬を作ってみよう。
身の回りのものでは紫キャベツの汁でアルカリ性,酸性,中性が調べられたね。
他にも身の回りの植物でできるんじゃないかな。
紫キャベツは紫色だから,紫色のものだったらできそうだ。
ナスでやってみよう。
ブドウでやってみよう。
身の回りにもアルカリ性,酸性,中性を調べることができるものがたくさんあるんだね。

発展
酸性雨って何だろう。
酸性雨についても調べてみよう。

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