4年
実験の工夫で温度変化を体感的に           
栃木県那須郡塩原町立上塩原小学校
郡司 修
1.はじめに

「もののあたたまり方」の単元では,

(1)金属は熱せられた部分から順にあたたまることをとらえることができる。
(2)水や空気は熱せられた部分が移動して全体があたたまることをとらえることができる。

の2点を理解させることがねらいになっている。直接目に見えないもののあたたまり方を,いろいろな素材を使って,目に見えるようにして調べたりする活動が中心となっている。

 温度の変化は、直接目に見えないので,温度上昇による物質の溶解,色の変化,器具による測定などに頼らなくてはいけない。この実践では,なるべく身近な素材を使って,もののあたたまり方の様子をとらえようとするものである。

2.金属のあたたまり方を調べる

 金属のあたたまり方は,金属に蝋を塗ってその溶け方を見る方法が,一般的である。しかし,蝋が溶けるのは一瞬であり,見落とす児童も多い。

 ●  蝋よりも身近で,溶ける様子が見やすい素材はないか。

 チョコレートを試したが,焦げてしまいよく見えにくい。これは失敗であった。他の素材を今探している。

 ●  温度を素早く測定する方法はないか。

 赤外線で測る非接触式の温度計を使って測定する。これは,瞬間的に温度が測れ,便利である。しかし,工夫しないと測定したい場所にうまくレーザー光線をあてることができずにずれてしまいがちである。



 ●  一瞬の出来事を繰り返し見る方法はないか。

 子どもは,別のことに気を取られて大切な部分を見落とすことが多い。そこで,ビデオカメラで撮影することにした。こうすれば,大切な部分を繰り返し見ることができる。また,ビデオ画像をコンピュータに取り込むことによって,簡単に見られるようにしておくこともできる。また,最近のデジタルカメラは,動画撮影が簡単にできるので,こういう場面にも使えると思う。

3.水のあたたまり方を調べる

 水のあたたまり方は,サーモテープの色の変化を見たり対流の様子を朱液で見たりして調べる。そして,対流の原因を「温度の高い水は軽くなって上に移動するから」と理由づけるものである。

 しかしながら,温められた水が軽くなって上に移動することを調べるのは,簡単ではない。乳酸飲料の容器にお湯を入れて浮かせるのだが,実は冷水でも浮くことが多い。

 ●  温められた水が軽くなり上に行くことを見る方法はないか。

 そこで,温度の高い水と温度の低い水を混じり合わないようにして,2層にすることにした。ブドウのジュースとリンゴのジュースを,温度を変えて2層にしたものが下の写真である。


 左は,温度の低いリンゴジュースに温度の高いブドウジュースを混じり合わないようにしたもの。真ん中は,温度が同じ2つのジュースが混じり合ったもの。右は,温度の低いブドウのジュースに温度の高いリンゴジュースを混じり合わないようにしたもの。

 2つのフラスコを使う実験も以前に見たことがあるので,試してみてはいかがだろうか。

 ●  水をあたためると,上の方が温度が高いことを体感させられないか。

 風呂の水の例を話しても今の児童には,通じない。それは,上から湯を入れる風呂が多くなったためである。特に本校の児童の家庭には,温泉が入っている。下からあたためる風呂は少ない。

 そこで,市販の対流実験装置(UCHIDA製)を利用して,水のあたたまる様子を観察させた。これは,小さな水槽の中のヒーターを4.5Vの電圧を加え,加温するものである。加温の様子は,上部の黒く見える液晶の色の変化で見えるようになっている。



上の写真の緑色に変化した場所が,温度が高いことを示している。

 また,体感させるために35cmほどの水槽に水を入れ,熱帯魚用のヒーターを最高温度の30℃に設定し,2時間ほどあたため,上の方と下の方の温度を測り,その違いを知らせその後に手を静かに入れて上と下の温度が違うことを体感させた。

4.空気のあたたまり方を調べる

 空気のあたたまり方については,教科書にあるような温度計を使った測定で,部屋の上の方は温度が高く,下の方は温度が低いことが十分に分かる。
 また,前出の赤外線で測る非接触式の温度計で,部屋の各部を測ることができる。

5.最後に

 直接見ることが難しい温度の変化を体感的に理解させようとして,あれこれ試行錯誤したことを書き並べた。教科書の方法に加えて,上記の方法を試して頂けたら幸いである。

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