3年
目に見えない磁力を子どもに理解させるための私の工夫         
広島県賀茂郡河内町立入野小学校
栢野 浩未

1.はじめに

 小学校では3年生から電気と磁石の学習がはじまる。電気や磁石の学習は,興味をもって取り組む子どもが多い。しかし,この単元の学習内容である電気や磁石の力は,それがどのように働いているかを直に目で確かめることは困難である。学習場面では,実験を行い,その結果を解釈できなければ科学的に正しい概念に到達し得ないために,子どもたちにとって理解が困難な学習内容であると指摘されている。

 そこで,目には見えない磁石の力を子どもに理解できるように工夫した第3学年「磁石」単元の実験を開発したので,これを報告する。

2.実験器具の作成

 自作したのは,写真1のような簡単な上皿天秤である。天秤の中心で支点の役目をしている部分は,材質がプラスチックの凹型のものに,木材で半円になったものを組み合わせることによって,紙カップが上下に動く仕掛けにしている。(ホームセンターへ行くと安価な材料費で制作できて,たくさんの実験器具を用意することが可能である。)


写真1  自作天秤

写真2

図1

天秤ののせ台の裏側に磁石をつけている。磁石の極どうしを近づけるとどうなるだろう?


写真3
自作天秤を使って実験しているところ


3.単元の目標

  1)  磁石を使い,磁石に付く物や磁石の働きを調べ,磁石の性質についての考えをもつようにする。

  2)
 ア. 物には,磁石に引き付けられる物と引き付けられない物があること。また,磁石に付けると磁石になる物があること。

 イ. 磁石の異極は引き合い,同極は退け合うこと。

4.授業の概要

時限授 業 の 概 要
 1,2 磁石につくものはなーんだ? (導入,磁石につく物とつかない物)
磁石の力は,磁石と鉄の間に鉄でない物をはさんでも働くかな? (磁力の存在)
磁石が引きつける力は,磁石の場所によって違うのだろうか? (N極とS極の存在)
5,62つの磁石の極どうしを近づけるとどうなるだろうか? (磁力と極)
7,8自由に動けるようにした磁石は,どんな動きをするだろうか?(磁石が止まる向き)
磁石の極を見つけるにはどうすればよいだろう? (磁石と日常生活との関連)
磁石についたくぎにべつのくぎがつくのはどうして? (磁化)
10磁石を使ったおもちゃをつくろう! (ものづくり)
11じしゃくのおもちゃを発表しよう (プレゼンテーション)
12磁石新聞を作ろう (磁石学習のまとめ)

5.主な学習の様子

<第5,6時:磁力と極>

 第5,6時の授業では,磁石と磁石の間に磁石の力(磁力)が働いていることを理解させるために,両側の上皿の底に磁石をつけた天秤(写真1)を用意して,「さらの真下にじしゃくをおくとてんびんはどうなるだろうか?」という課題を設定して実験を行わせた。実験は,上皿の底に磁石を付けた下にさらに別の磁石を出し入れさせ,引力や斥力の力を測定させた。

 児童はシーソーで遊んだり,算数の単元「重さ」では,てんびんを使って重さを測定することを知っている。児童は,自作の天秤を見せたときに天秤が磁石の力でどうなっていくのか,興味深く見て考えていた。(写真3)班ごとに天秤を自作させて実験を行なわせた。磁石の力がどれ程なのか,分銅を使って実験した。この実験の話し合いでは,磁石の見えない力がどのように働いているのか,意見の異なる友だちの考えを聞かせ,考えさせるためにジグソー学習を取り入れた。

<第11時:プレゼンテーション>

 第11時の授業では,磁石を使ったもの作り発表会を行った。児童の作品は,生活の中で使える物を意識した作品が多かった。

 この学習時間の後,外で遊べない休憩時間には,手作りおもちゃで友だちと遊んでいる姿がある。じしゃくおもちゃを何回も作りかえている子どももいる。友だちのおもちゃの工夫しているところやアイディアに感激して楽しそうに遊んでいる姿があった。


写真4

写真5

6.終わりに

 子どもたちが楽しみながら理科授業に参加している姿がよく見られた。話し合いの場面では,実験結果を自分の言葉で説明したり,友だちに自分の考えに理由をつけて相手を説得しようとする姿も見られた。集団の中での実験や話し合いを通した相互作用によって,子どもたちの考えがより科学的なものにかわっていったように思う。3年生での電磁気に関する学習が4年生,6年生へ少しでもつながって行くことを期待し,これからも子どもたちの学びを支援する教材開発を行っていきたい。

写真6

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