6年
校区の空気はきれいなのだろうか?     
−ヒトと自然・総合的な学習の時間での取り組み−        
兵庫県姫路市立船場小学校
上阪 明弘

1.はじめに

 6年生最後の単元である,「ヒトと自然」の内容について,総合的な学習の時間での「環境」への取り組みと関連させました。校区は姫路市の中心部に位置し,国道が東西に走りビルやマンションが立ち並び,ごく一部に田畑が残されているだけで,決して自然環境に恵まれているとはいえません。

 このような自分たちの住んでる地域の状況を考慮しながら,毎日何気なく吸っている空気が本当にきれいなのか?自分たちで考え,判断し,これから自分たちはどんなことができるのかを考えることにしました。その取り組みの中で,空気の汚れの調査・実験に関してグループごとに視点を変えて活動しました。

2.活動計画(総合的な学習の時間)…60時間

  (1) 「校区の空気はきれいなのだろうか?」活動計画

校区の空気を感じてみよう8時間


空気について調べてみよう


10時間


実験・調査をしてみよう


22時間


結果をまとめてみよう


13時間


発表会(ポスターセッション形式)


3時間


活動を振り返って


4時間

3.空気の調査・実験内容

 「校区の空気はきれいなのか?」というテーマについて,クラス34名が様々な視点から8グループに分かれて,実験・調査に取り組みました。ここではその中の2つのグループを取り上げてみました。

  (1) グループA(空気の汚れ【窒素酸化物(NOx)】測定)

 方法

ナイロン袋(透明)の中に校区の各地点(国道沿い,トンネル内等)の空気を取り込み, 気体検知管でNOxの濃度を測定。


ナイロン袋(透明)の中ディーゼル車の排気ガスを取り込み 気体検知管でNOxの濃度を測定。


市役所環境保全課にインタビュー(姫路市の排気ガスの基準,校区にある自排局〈国道沿い〉の記録,姫路市の取り組み等)

結果・考察

 児童の予想に反して校区内のNOxの濃度は0ppmが多く,トンネル内で唯一反応を示しました。また,姫路市の記録でも船場校区のNOxの濃度は基準を越えた日が年間で2〜3日と,国の基準ではきれいと言わざるをえませんでした。しかし,ディーゼル車の排気ガスは濃度が高く,透明なナイロン袋に取りこむと見た目にも黒い汚れがはっきりとわかります。さらに,国道の交通状況を考えると決してきれいとは言えないのではないかと子どもたちは感じました。結果にNOxが現れないのは,風に運ばれてしまうなど大気中に拡散してしまうからと考えました。

  (1)

 グループB(両面テープを利用した空気の汚れ調査+マップ作り)

 方法

1回目 校区の各地点に白い布を配置し,1週間後にその汚れ具合をチェックし,空気中の汚れを調査。


2回目 両面テープを電柱や看板などに貼りつけ,1週間後に付着した汚れをチェックし,空気の汚れを調査。


3回目 両面テープを利用し,片面をはがして電柱や看板・自動車のマフラーなどに貼りつける。すぐに外してテープに付着した粉塵などの汚れ具合を見る。もう片面をはがしてマップに貼り校区内の各地点の比較をする。


ディーゼル・ガソリン車のバンパーに両面テープを貼りつけ,2日後に外し排気ガスの汚れチェック。

結果・考察

 1・2回目の実験は,布やテープが雨などの影響ではがれてしまうなどあまり成功しなかったので方法を変更し,3回目の実験を行ないました。校区内の各地点でのテープにはあまり付着していませんでしたが,トンネル内の結果は黒い粉塵(PM)が大量に付着しました。また,ディーゼル車は2日たつと真っ黒に汚れが付着し,ガソリン車も汚れました。このことから排気ガスが空気に大きな影響を及ぼしていると考えました。粉塵などは風などで広がってしまい結果としてはっきりでにくかったので,子どもたちは空気がきれいとは言いきれないと判断しました。

終わりに

 大気汚染・温暖化・CO2問題・フロンガス等世界的な規模での問題は数多くあり,インターネットでも気軽に調べることができます。しかし,今回自分たちの住んでいる地域の空気がきれいかどうかを調べるにあたり,どのように調べたらいいのか?実際に自分たちでできる調査・実験にはどんな方法があるのか?と授業のスタートから困ってしまうグループがありました。

 上記した実験以外にも子どもたちで考えて取り組んでみました。「校区の空気がきれいなのか?」という理科的な要素も取り入れ,結果をもとに筋道を立てて判断・考察をするためにいろいろな方法を考えました。しかし,思っていた程反応が現れず,また基準も越えていないので結果としてはきれいな空気でしたが,校区の状況から,簡単に「きれい」とは言い切れないのではないかと考えました。

 今回取り組んでみて,子どもたちは空気に対して身近に感じ,問題意識を持つことができたのではないかと思います。しかし今回の授業において,身近な環境に目を向けた場合の実験・調査方法をどのようにすればいいのかが課題として残りました。今後はいろいろな関係機関等からも,学校での取り組みに役立つ調査方法などを調べていきたいと思います。


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