4年,5年
水生生物の観察         
静岡県富士市立原田小学校
竹内 勉

4年生 生き物のくらし「生き物の1日のくらし」
〜ホタルを産卵させて観察しよう〜

5年生 受けつがれる生命「魚のたんじょうと育ち」
〜メダカの産卵の場面を授業中に観察しよう〜

1.はじめに

 学校の周辺では,富士山の湧水が豊富に湧き出し,校内にもせせらぎ園という湧水を生かした自然園がある。ここでは初夏になると,ホタルが美しい舞を見せてくれている。また,学校の南東方向には浮島沼が広がっていて,絶滅が心配されるクロメダカが生息している。
 このような地域性を生かした水生生物を扱い,子どもたちが夢中になって取り組む姿を願って,実践したことを紹介する。

2.観察実験の方法

 ホタルの産卵と観察

 本校のせせらぎ園には,5月〜6月にホタルが舞い,子どもたちの関心を集めている。夜は親子で見に来て,昼は「ホタルはどこかなあ」とせせらぎ園の中を探し回っている。4年生が生き物の1日のくらしをとらえるため,ホタルは教材として価値があると考える。

 せせらぎ園を舞うホタル
夜たくさんのホタルがせせらぎ園を舞う。ホタルは昼中は木の葉の裏に止まっているので,採集するのは昼の方が楽である。
 産卵かご
雄:雌が2:1になるようにかごの中に入れる。産卵床のスギゴケに,たらこをほぐしたような卵をびっしり産み付ける。


 飼育槽と幼虫
飼育槽には蓋をして,できるだけ暗くなるようにする。幼虫が窒息しないように,エアーポンプで空気を入れる。
 カワニナを食べるホタルの幼虫
ホタルの幼虫は,カワニナの中身をスープ状にして食べる。食欲旺盛なので,カワニナをどれだけ入手できるかが,成育を左右する。

子どものノートより
 ホタルの幼虫は,ヒルとムカデが合体したみたい。これがホタルになるなんてびっくり!

子どものノートより
 カワニナ1匹に,何匹も幼虫が食いついてこわい。ぼくはカワニナでなくてよかった。

 ※水換えは,湧水を使用する。1週間に2〜3回,水が汚れてきたら行う。

 メダカの産卵の観察

 「魚のたんじょうと育ち」のねらいである「生命の連続性」という考え方を育てるために,メダカの産卵場面を観察するのは,とても価値あることだと思う。写真やビデオによる手段もあるが,実際に産卵する場面を授業中に観察できれば感動もひとしおである。感動だけに終わらず,交尾という行為に秘められた巧みな受精の仕組みも観察させたい。

◎事前準備や約束

 ・水温は22〜25くらい(5〜6月)がよく,水温が上がりすぎると産卵しなくなる。
 ・アクリル板で作ったV字のミニ水槽で雌雄を見分け,数日間一緒に飼育する。産卵するようになったら,実験の時期が来たと判断する。
 ・自然のメダカは,夜が明け始めた頃に産卵するので,静寂な雰囲気を保つようにする。観察するときの頭の動きや,鉛筆を置く音にも敏感である。


V字のミニ水槽にいるメダカ

◎実験開始

 水槽を段ボール箱で覆っただけだと隙間から光が入り,メダカが夜明けを感じ取ったらしい。箱を取ったら,すでに産卵していた。 子どもたちが持ってくる水槽は,上に向かって少し広がっているため,下敷きで仕切っても隙間ができてしまい,箱を開けたら雄と雌が一緒にいた。仕切りが不十分だった。



段ボール無しでも成功した実験装置

 ペットボトルの底を切り落として,その中に雌雄の一方を入れておいたら成功した。箱を取ってペットボトルをはずしたら,5〜15分で産卵した。10グループのうち8グループが産卵を観察できた。 後日,段ボールで覆わずに実験してみても,産卵行動が見られた。ペットボトルで雌雄の一方を囲うだけでも十分であることが分かった。

 本時限の中で二度の交尾をさせることはできないので,ビデオに録画しておき,VTRを何回も見ながら,見落とした部分を追究した。雄が背びれや尻びれで雌を包み,その中で放精や産卵をしている様子を確かめることにより,水中で効率よく受精させているのがよく分かった。
生命の連続性に重きを置いた本単元では,産卵の瞬間をぜひ子どもたちに見せてあげたい。

子どものノートより
 サケの産卵では,川の流れの中で卵に精子をかけていました。メダカの場合は,メスをだっこしたオスのひれに囲まれている,せまい所で受精させていました。囲まれた中の方が受精しやすいし,敵にもおそわれにくくて安全です。産卵の仕方が違うのは,サケは大きくて強いけれど,メダカは小さくて弱いので,しっかり受精させて子どもをたくさん増やさなくてはいないからだと思います。あんなに小さなメダカが,こんなにすごいことをやっているなんて驚きました。

3.終わりに

 メダカもホタルも自然界ではか弱い生物である。だからこそ,その生態は巧みで神秘的だ。視聴覚機器で様々な情報を入手できる時代である。しかし,本物ならではのよさを子どもたちに伝えていけるように,これからもいろいろな方法を探っていきたい。

参考資料:・親子で楽しむ ホタルの飼い方と観察(ハート出版)
・教材研究の事典(初教出版)
・富士市理科実践会実技研修会資料


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