6年
電流のはたらきの実践例         
〜単元の導入〜         
大阪府岸和田市
池田 清孝
1.はじめに

 理科の授業をしていていつも考えるのは,子どもたちが自分で問題を持つか,ということです。けっこう不思議な現象を目にしても,あまり「不思議だ!」「なぜだろう?」と感じない子もいて,クラス全員が問題意識を持ち追究活動をするのも難しいなと感じています。

 でも,そうとばかりは言っていられません。普段から生活の中でも不思議を発見する目を育てていく事が大切だと感じています。さて,ここでは「電流のはたらき」の単元の導入での実践を報告します。子どもたちがどれぐらい問題をみつけるかがポイントです。

2.導入で使った初期事象

 下の様な電磁石を使った装置を,初めは箱の中に入れて提示しました。手元でスイッチを入れる(エナメル線の端と端を合わせる)とカチッ,カチッと音がします。子どもたちは何の音なのか興味を持ち始めます。「はりがねで鉄をたたいている音」だとか「ばねをはねるとベルに当たって音が鳴っている」等の考えが出された後,箱の中身を公開。電池につながれた線の両端を合わせるたびに,鉄板がくぎの頭に当たって音が鳴るのです。

3.子どもたちの反応(ワークから)

 (1) 初期事象を見て

なぜ針金と針金を合わせると音が鳴るのか。


たんじゅんなしくみで音が鳴るなんですごい。思ったより簡単なしかけだ。


なぜ針金に鉄の板がくっつくのか。


なぜクギに鉄の板がついたのか。


どうして磁石みたいにくっつくのか。


くぎじゃなくても音が鳴るのか。


なぜ電流を流すと鉄が磁石になるのか。


なぜ電流を流すと音が出るのか。


どうして電池がいるのか。


しくみがよくわからない。


自分でも作ってみたい。 など

ここでは,まだしくみがよくわからない子もあるし,磁石のはたらきだと見当をつけている子もある。


「しくみがわからない」「作ってみたい」の声を受けて,まず制作活動に入りました。材料を配り,教室の前においた実物を参考に製作を開始。しくみは単純なので,できるだけ説明はできるだけ少なくし,必要に応じ個別に助言した。


 (2)

 製作した後

最初は簡単だと思ったけど,ストローに巻くのはむずかしかった


初めはなかなか音がならなかったけど何回もやっている内に鳴るようになった。


なぜ,コイルが熱くなるのか。


エナメル線以外のものではどうだろう。


電池を4個にすると火花がちった。


音はくぎが鉄を引きつけていると思う。


なぜくぎが磁石になるのか。


くぎと鉄板が遠いとうまく鳴らない。


電池からでる電気がくぎと鉄板を磁石にしたと思う。


くぎと鉄板なのに本当に磁石と同じはたらきがある。おもしろい。


1回鳴らすと,くぎに鉄板がくっついたままはなれない。どうしてかな。


なぜ,くぎにエナメル線を巻いただけで鉄の板とくぎがくっつくのか。

子どもたちはこちらの予想したより早く装置(うちのクラスではカチカチ鳴るからと「電気カチタネット」と名付けた)を作り,友達の乾電池を借りて増やしたりもしていました。初め「しくみがわからない」と言った子どもたちも乾電池をつなぐと鉄板がくぎの頭に当たって音が鳴っていることを確認できた。

4.学習問題

 導入時と製作後のワークから見ると,この装置から子どもたちはこの単元の内容に関わるいろいろな問題を見つけだしていることがわかります。個別に追究活動に入って交流する方法もあると思いますが,本学級ではワークの内容を出し合って問題作りをしました。

〔学習の大まかな流れ〕

 ・なぜ音が鳴ったのか
 電池をつないだときに鉄がくぎにくっついた(引きつけられた)

 ・

くぎが磁石になったのか,それともコイルが磁石になったのか→砂鉄や方位磁針で確認

 ・

くぎ以外のものをコイルに入れても磁石になるのかな→芯にする材料を変えて

 ・

なぜコイルに電気を流すだけで鉄は磁石になるのか→コイルにできる磁力→鉄の磁化

 ・

くぎにもっとエナメル線を巻いたら強い磁石になるのか→巻き数を変えて実験

 ・

電池(電流)を増やしたら強い磁石になるのか→電流の大きさを変えて

 ・

なぜコイルが熱くなるのか→電熱線での発熱の実験

5.製作について

 材料 ラワン集成材 (180mm×60mm×15mm)
ストロー (50mm)
ブリキ板 (200mm×20mm×0. mm)
鉄 釘 (75mm)
エナメル線 (3m程度)

 製作 

ストローに巻いたコイルに鉄釘を通し,土台の板に打ち込みます。鉄板は適当に曲げ,試行錯誤によって釘との間隔を調整していました。板への取り付けはセロハンテープで貼り付ければ十分です。

6.おわりに

 先輩の先生にこの方法を紹介してもらったときには,こんな小さい音だけで子どもたちは興味を持つのか,自分で作ってみたいと思うのか不安でしたが,製作に入ると喜んで作り,鉄板の曲げ具合を変えたり,飽きずにカチカチと鳴らしたりしていました。そして,その過程でいろいろな疑問や問題を見つけることができたと思います。問題の出た後の展開の仕方は,学級の実態や学習形態に合わせて変化させることができると思います。


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