授業実践研究
領域と等高線
─ 平面から空間へ ─
東京都立石神井高等学校
黒 澤 正 信

1.はじめに

答え 次の関数のグラフをかけ.

 (1)x+y=0
 (2)x2+y2=25
 (3)(x+y)(x2+y2-25)=0
 (4)(x+y)(x2+y2-25)=60

 答は図のようになります.(1)と(2)をあわせて(3),(3)の外側と内側に図のように(4)をかくことができます.(4)のグラフは,直線y=xについて対称になります.

2.不等式

波 4次不等式(x-1)(x-2)(x-3)(x-4)>0を解くときに,数直線を引いて,数直線上の 1,2,3,4に印をつけて,数直線を5つの部分に分けて,いちばん右の部分から順に正と負に順になることはよく知られています.
 このことを利用して

 (1)y=(x-1)(x-2)(x-3)(x-4)
 (2)y=(x-1)2(x-2)3(x-3)(x-4)2

などのグラフの概形をかくと,図のようになります.もちろん極大値や,極小値などは計算してもわからないものが多いと思います.
 このようにして積の形で表された不等式を用いて関数のグラフをかくことができることを生徒に理解させておきます.
(1)                (2)
グラフの概形(1)グラフの概形

3.等高線

 y>2x+1とか3x2-2y+1≦0の表す領域を図示する問題を教科書どおりに終わらせてから本題に入ります.
 f=(x,y)-kの形のグラフをかいてみましょう,と言っても簡単なものです.

 (1)2x-y+3=0,±1,±2……
 (2)y-x2+1=0,±1,±2……
 (図1図2

 “=0”が海抜0mとして考えると,海抜2m以上の領域はどこですか? などという問題については,すぐに答が出てきます.
 ここでは,2x-y+3 ,y-x2+1それぞれについて,座標平面上の各点で「高さ」が存在することを認識させます.
 次に積の形で表された不等式の等高線をかくことを考えます.少し準備をします.

 (x+y)(x2+y2-25)=0,±10,±20……

のグラフをかいてみます.
 「=0」のグラフをはじめにかいておきます.次に座標平面上の格子点ごとに左辺の値を計算してその点の位置にかき入れておきます.たとえば (5,5) では

 (x+y)(x2+y2-25)=10×25=250

となります.以下 (-5,-5) まで

 (5,4)   9×16=144
 (5,3)   8×9=72
 (5,2)   7×4=28
点
 (-1,-2)  -3×(-20)=60
点
 (-5,-5)  -10×25=-250

各格子点ごとに値をかいておきます.対称性を利用すると値を求めるのにそれほど時間を要しません(図3).
 図3の各格子点の数値を利用して,図4のような形ができ上がります.
 なお,z=(x+y)(x2+y2-25) の x2+y2≦25 における最大値・最小値は,

 x=r cosθ,y=r sinθ とおいて
 z=(r3-25r)ルート2sin(θ+4/π)より
 x=5/6,y=5/6 のとき最小値 -9/250
 x=-5/6,y=-5/6 のとき最大値 9/250
となります.

 9/250≒68.04ですから (2,2) と (-2,-2) の非常に近いところで最大値・最小値をとります.
 生徒には,このあと陸と海とを区別して,高山,深淵などわかるように色を塗ってくるようにと指示をしておくと,なかなかすばらしい作品がでてきます.
 このような方法でいろいろなグラフを考えることができます.
2次曲線 ax2+2hxy+by2+2gx+2fy+c=0 は,
 h2-ab<0 のとき 楕円,
 h2-ab=0 のとき 放物線,
 h2-ab>0 のとき 双曲線であるから
 (y-2px)(y-2qx)=k…@ のグラフは,
 4pqx2-2(p+q)xy+y2-k=0 より
 (p+q)2-4pq2×1=(p-q)>0 (pq)
であるから,双曲線になります.(k0)
したがって,(ax+by+c)(dx+ey+f)=k のグラフは適当に平行移動して考えると@の形になるので必ず双曲線になることがわかります.
 このことを利用すると(x+y-1)(2x-y+3)=0,±2,±4 ……などのグラフは,“=0”のとき2直線,“0”のとき双曲線となることがわかります.
 手作業で同じことをするのは,手間がかかるので,コンピュータの力を借りることになります.(図7に掲載)

4.コンピュータ

 「SCREEN3」これで画面モードが640×400になります.BASICの時代はすでに終わり,今は……というかも知れませんが,けっこう役に立ちます.
 プログラムの10から70までは,座標軸を引いてx,y,0を座標平面上に打つだけです.50,60,70は省略してもよいと思います.80行のA=【ア】の形ですが,アの値が大きければ画面が狭くなりグラフは大きくなります.90から140で媒介変数をTとして,
-6.001≦T≦6の間でTを変化させグラフをかくプログラムです.

 100 X=【イ】 110 Y=【ウ】

イ,ウに式を入れるとグラフをかくことができます.また90のSTEP0.01ですが,この0.01を小さくするとグラフがゆっくりかけ,点が密になります.この値については,コンピュータの性能,ソフトの選び方によって時間が相当ちがいます.表2のプログラムで比較すると,2つのソフトで一方は5分,他方は14時間(いずれもSTEP0.01)とすごい開きがでました.イ,ウの欄に,

 X=sin(23*T) Y=sin(55*T)

とすると,2〜3分で,ゆっくり画面が動いてきます.図5はスタートさせて20秒くらいたったところです.図6は完成図です.なおSTEP 0.001としました.
 さて,今度はf=(x,y)-kのグラフをかくことを考えます.プログラムの90以降を表2のように変更します.
(x+y)(x2+y2-25)=0,±10,…±60のグラフがかけます.

 120行で  K=【エ】

のエの部分をいろいろな形にすることによって,様々な関数のグラフをかくことができます.表2の結果は図4に示してあります.
 プログラムを実行するときに,画面がカラーであり,動きがよく見えると生徒はより興味を持つようです.動きをよく見せるためには,90と100のSTEP【オ】のオを大きくします.ただし大きくしすぎると画面が粗くなり見にくくなります.カラーで表示するためには,150 PSET(M,N),【カ】のカに数字を書き込みます.この数字は式でもかまいません.ソフトによって使える数字が異なってきますが1から9くらいまでは,だいたい使用できるようです.私の学校のソフトは1番から15番くらいまで使用できるので,

 150 PSET(M,N),(I+70)/10

などと入れておきます.ネオンサインのような画面になります.
 いろいろな積の形で表された関数の等高線(?)を引いてディスプレイ上に表示することができます.その際色をつけておくと,正領域がどこで,負領域がどこかということが画面上ではっきり見分けることができます.
 さて120行ですが

 120 K=(x+y-1)*(2*x-y+3)-I
 120 K=(x+y-3)*(2*x-y+1)*(x-5*y)-3*I

などとしておくと,それぞれ図7図8のような形になります.
 このようにして,f(x,y)の等高線を引くことができます.プログラムによっては,ディスプレイに現れる時間が長くなるので注意する必要があります.

5.おわりに

 以上のような考え方を用いて,領域の考え方を空間的にとらえることができます.
 (x+y)(x2+y2-25)=0,±10,±20…±60 は,図4の形を見るとウルトラマンの顔のように見えるけど上の目はひっこんでいて,下の目は出てるからウルトラマンではないんです.双曲放物面(図7)なども馬の鞍みたいな形だなと生徒はわかるようです.
 (x+y)(x2+y2-25)>20 を図示せよ,とテストに1回だけ出題したことがありますが,正答率は80%以上でした.

 空間図形は黒板にかくのは困難です.うまくかいたつもりでも生徒はなかなか理解してくれません.平面上に等高線をかくことによって少しでも立体感が身につけば,原点から天井にまっすぐ伸びたz軸を感じさせられればいいと思っています.


図1図2

図1


図1図2

図2

図1図2

図3

図1図2

(x+y)(x2+y2-25)=k

図4

図1図2

図5

図1図2

図6

図1図2

図7

図1図2

図8

表1
10 SCREEN 3
20 CLS 3:CONSOLE ,,0,1
30 line (0,200)-(639,200)
40 line (319,0)-(319,399)
50 PUT@ (300,0),KANJI(&H2379)
60 PUT@ (620,180),KANJI(&H2378)
70 PUT@ (300,210),KANJI(&H2330)
80 A=20
90 for T=-6.001 to 6 step .01
100 X=T
110 Y=X^2-1
120 M=A*X+319:N=-A*Y+200
130 pset (M,N),int((I+90)/20)
140 next T
150 end

表2
90 FOR X=-6.001 TO 6 STEP .01
100 FOR Y=-6.001 TO 6 STEP .01
110 FOR I=-60 TO 60 STEP 10
120 K=(X+Y)*(X^2+Y^2-25)-I
130 IF ABS(K)>0.5 GOTO 160
140 M=A*X+319:N=-A*Y+200
150 PSET (M,N)
160 NEXT I
170 NEXT Y
180 NEXT X
190 END

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