授業実践記録
確認・補充を目的とした
まとめプリントの活用と可能性
青森県立青森南高等学校
和久秀樹
 
1.はじめに

 まとめプリントは授業で扱う例題や問等を1単元につき1枚の紙にまとめたものである。主に単元の学習終了後に用いており,このプリントを繰り返し解くことにより理解度を高め,基本事項の定着により「確かな学力」を身につけさせることを期待したものである。
 本稿では実際にこのプリントを使用した実践例とこのプリントを評価に用いた場合の可能性について現在考えていることを紹介したい。
 平成20,21年度の2年間,弘前大学教育学部で期限付き教員をしたとき,教員養成課程算数・数学専修の学生,及び理工学部数理科学科の学生を対象とした「数学科授業論」の授業でこのプリントを紹介する機会があった。学生にはこのプリントの良さを実感してもらった一方で,様々な問題点を指摘された。その問題点を解消しないままにこのプリントを紹介することになるが,ご覧いただく先生方と指導法や評価について考えていく機会となれば幸いである。
 なお,このプリントは現在でも授業や小テストに用いているが,1年時から3年間使用したのは平成15年度から17年度までの期間である。
 
2.まとめプリントとは

 高等学校普通科で学習する数学の全単元について1単元の問題をB4の紙1枚にまとめたものである(図1参照)。問題に関しては授業中に扱った例題や問が8割程度含まれている。
 内容やレベルに関しては最低限理解しなければならないものとしてのスタンダード的なものにするか,多少入試問題を意識した実践的な問題を入れるかどうか悩みながらの作成であり,各単元での難易度の差があることは否めない。しかし,「確認」「繰り返し」「振り返り」のツールとしての使用を常に念頭に置いて作成した。

 生徒が使用するメリットとしては以下のことがあげられる。

(1) 学習内容が一目でわかる。習熟の確認や到達度がわかりやすい。
(2) 問題の違いが比較しやすく,理解しやすい。(図2参照)
(3) 学習の流れが把握しやすく,数学の学習方法が確立しやすい。

また,教師が使用するメリットとしては以下のことがあげられる。

(1) 生徒の到達目標を設定でき,生徒に目標を持たせやすい。
(2) 指導法や授業の進度等を指導者同士で共有しやすい。また,途中で担当者(指導者)が交代しても,生徒の習熟度が把握しやすいためスムーズに連続した指導をすることができる。
(3) 1つ1つの問題を吟味することにより教員の質の向上が期待される。


図1
実際の大きさはB4である。このプリントは作成当初A3の厚紙に印刷し,カードにして提供しようと考えた。問題番号も意図的に右下にしている。

図2
同じADの長さを求める問題である。上下に問題を示すことにより解法の比較がしやすい。(「三角比」より)

 
3.実践場面

(1)1年生から3年間使用したとき
[1] 各単元の学習終了後,確認のために週末課題として使用した。
[2] 土曜日に行われていたセミナー(数学,英語各90分の講習)時に単語カード式の使い方を紹介した。(1年時のみ)
[3] 夏休み,冬休みの課題にした。全部だと問題数が多いので,基本編,応用編に分け,それぞれ問題を指定してやらせた。(1,2年時のみ)
[4] 全クラスで中テスト(週1回授業時15分,まとめプリントの類題)を行い,合格点に達していない生徒に対して放課後個別指導をした。

(2)単年度の使用
[1] 中テスト(授業時15分)のテスト範囲として用いた。
[2] 朝小テスト(毎週木曜日5分間)のテスト範囲として用いた。
[3] 授業時使用する問題集の補充問題として授業で用いた。
 
4.実践したことに対する効果・省察

(1)まとめプリントの使用の効果
 「まとめプリント」が生徒にとって数学学習の中心教材であることは意識されていた(3年間使用時)。数学を得意教科としていた生徒も振り返りのために何度も使用をしていたので,学年全体に「やれば力がつくプリント」という認識が強かった。合格体験記にも「まとめプリントで問題慣れをして,問題集で応用力をつけようという勉強をしていました」(東北大理学部数学科・AO合格)と書いている生徒もいたが,同様の学習法を取っていた生徒は多かった。

(2)まとめプリントの内容及び指導についての省察
 前述の通りこのプリントを,その単元の学習とほぼ同時進行で作成したので,難易度の差が出てしまった。そしてその内容を精査せずにここまで来ている。作成には問題の内容のみならず,様々なパターンの計算をさせたいために数値にも工夫したが(図3参照),問題の精査・精選の必要性を感じている。また,評価に使用する場合には,生徒の状況に応じた内容にしなければならないと思っている。
 指導に関しては,単年で用いると効果は薄く,1年時から3年間使用することにより効果があるものと考えている。

図3
この問題により1年時の段階でルートを含む因数分解を経験 させている。(「三角比」より)

 
5.今後の可能性

 内容の精査・精選により,より使いやすいプリントになると思っている。さらに「評価」としての使用も考えている。「学習評価」について本校では,学習の目標や評価の“規準”は明確化されているものの,それらの到達度を評価する“基準”は学年や担当者にまかされているのが実情である。その基準が評価者の主観に頼らないように,そして,評価の公平性,信頼性を保つため「個人」ではなく「教科」として基準の設定が必要ではないかと考える。そこで「まとめプリント」を元に到達度を示した「青森南スタンダード」のようなものができないかと考えている。
 
6.おわりに

 「まとめプリント」は一言でいえば授業で指導した問題にいくつかの問題を加えたものである。「“その場限り”のものではなく“末永く”使って欲しい」そのような思いで作成した。内容的には多々問題点があると思うが,生徒の成長を願って作成したものは生徒の心に響くと思っている。「高校は学び方を教えるところ」この考えを貫きとおしてこれからも仕事に励みたい。

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 waku-hideki@m04.asn.ed.jp

※一部前任校での実践内容となります。