授業実践記録
曲線と接線と面積
駒澤大学高等学校
濱田敏明
 
1.はじめに

 積分の単元では,放物線と直線や,放物線と放物線が囲む図形の面積の公式として,1/6公式はどの教科書にも問題集にも載っています。積分計算ができた上で,確認のための使用はとても有効です。これに関連して,放物線などの性質をちょっと話してあげることにしています。
 
2.展開

(1)放物線と直線
[1] 2次方程式 ax2+bx +c =0 の2解がαβ(以下簡単のためαβとします)であるとき, となります。これは,放物線 y =ax2+bx +c x 軸とαβで交わるとき,放物線と x 軸で囲まれた部分の面積が になることを表しています。

[2] x 軸は特殊な直線なので,直線を y =mx +n として放物線と直線で囲まれる面積を考えてみます。
 放物線 y =ax2+bx +c と直線 y =mx +n との交点のx 座標をαβとします。放物線と直線の差 (ax2+bx +c)−(mx +n) を考えてみます。これは放物線が直線からどれだけ離れているかを表している量ですから,図形的には直線をx 軸に移してその量をみているのです。その面積は上と同じ となります。

(2)放物線と接線
[3] 放物線 y =ax2+bx +c が,点A(α,0) で x 軸に接しているとします。放物線は y =a (x α)2 ということになります。この放物線が直線 x =β と交わる点を B とすると,B は (βa (β α)2) です。[2] から直線ABが放物線と囲む部分の面積は です。
 直線 x =β x 軸と交わる点を C とすると, ABC の面積は となりますから,放物線とx 軸に挟まれた部分の面積は, です。

[4] 放物線 y =ax2+bx +c と直線(接線)y =mx +n が点 A で接しているとして,A のx 座標をαとします。放物線と接線 y =mx +n と直線 x =β が囲む図形の面積を求めてみましょう。やはり, (ax2+bx +c)−(mx +n) を考えてやれば,接線が x 軸に移り,[3] と同じになりますから,その面積は です。

[5] 2つの放物線 y =ax2+bx +c y =ax2+b'x +c' とその共通接線に囲まれた部分の面積を求めてみましょう。
 共通接線を y =mx +n,2つの放物線との接点をそれぞれ A(α,*),B(β,*)とおき,2つの放物線の交点を C とします。再びその差, (ax2+bx +c)−(mx +n) , (ax2+b'x +c' )−(mx +n) を考えます。接線を x 軸に移しているので,これらはそれぞれ x 軸と A' (α,0),B' (β,0) で接している放物線になり,x2の係数が a なので,同じ形の放物線ですから,その対称性から2つの放物線の交点 C'x 座標は になります。したがって,求める面積は となります。

[6] (ア) 放物線 y =ax2+bx +c 上の2点 A(α,*),B(β,*) で接線を引き,2接線の交点を P とおきます。直線 AB を y =mx +n として,またその差 (ax2+bx +c)−(mx +n) を考えます。直線 AB を x 軸に移しているのですから,差の放物線はx 軸とA' (α,0),B' (β,0) で交わります。2点 A,B における接線は,2点 A' B' における接線に移ります。放物線の対称性から,この2接線の交点の x 座標は になります。よって,点 P の x 座標は であることがわかります。

(イ) 放物線と2点 A,B における2接線が囲む図形の面積を求めてみましょう。それは [4] より, です。この面積を S2 とし,放物線と直線 AB で囲まれた部分の面積をS1とすれば,2つの図形の面積比は  S1S2=2:1 になります。

(ウ) 点 P を通る x 軸に垂直な直線は各々の面積をきれいに2等分しています。
(ax2+bx +c)−(mx +n) を考えればわかります。S11S12S21S22

(エ) 面積だけでなく,線分にも面白い性質があります。放物線と直線 AB の差ではなく,点 A における接線との差を考えてやれば,この接線が x 軸に移ります。差の放物線はx 軸と点A' (α,0) で接するから y =a (x α)2 となります。点 P を通る x 軸に垂直な直線は変わらず です。点 B は B' (βa (β α)2) に移ります。直線 と,x 軸,直線 A'B' ,差の放物線との交点をそれぞれ P'Q'R' とおけば,P' Q' です。R' y 座標を計算すると だから,R' となります。
 したがって,P' R' =R' Q' = PR = RQ = が成り立ちます。すなわち放物線は PQ の中点 R を通っています。

(3)放物線と放物線
[7] 2つの放物線 y =ax2+bx +c y =dx2+ex +f が囲む図形の面積は になります。

(4)3次関数と接線
[8] 3次関数 y =ax3+bx2 +cx +d 上の点 A (α,*) における接線が,曲線と B(β,*)で再び交わっているとするとき,この曲線と接線で囲まれる図形の面積は になります。

(5)4次関数と接線
[9] 4次関数 y =ax4+bx3+cx2 +dx +e と直線 y =mx +n が2点 A(α,*) , B(β,*)で接しているとき,この曲線と接線で囲まれる図形の面積は になります。

(6)発展
[10] 分母の数が気になる人もいると思います。数学 III で漸化式をつくって次式が得られます。
    
 大学で学ぶベータ関数 を変数変換してもいいです。

 
3.おわりに

 放物線の面積に関することはアルキメデスの頃からわかっていて,いろいろな性質があり楽しめます。2008年の明治大学政治経済学部の入試問題でも楽しく出題されています。2009年の東京工業大学前期の最初の問題も放物線と直交する2つの接線の囲む面積の最小値でした。一昔前の受験テクニックのようですが,曲線の面白い性質を楽しんだ上に,役に立てばと思って上のような事柄に触れることにしています。授業では数学 II で扱うので,(6)の話をしたことはありません。