授業実践記録
「面積を求めることを利用した定積分の説明」
について
神奈川県立綾瀬高等学校
室井英彦
 
1.はじめに

 定積分の説明において教科書では,次のように説明している。

「関数 f (x) の原始関数の1つを F (x) とすると,F (b) - F (a) は,C に無関係に決まる。この F (b) - F (a) を,f (x) の a から b までの定積分といい, と書く。そして,a をこの定積分の下端,b を上端という。関数 F (x) に対し,F (b) - F (a) を で表す。」

 生徒にとって,不定積分が終わった段階では,あまりにも唐突である。確認テスト等をやった時も,難しく定着ができていないことが多かった。そこで,面積を求めることを利用した次の展開をしてみた。

 
2.展開

 関数 において,右の図の面積を求めさせた。

[1] x = 0 から x = 4 までの面積を計算させる。

 面積を S として,

 例として,x = 0 から x = 5 までの面積を計算させる。
 x = 0 から x = 7 までの面積を計算させる。

[1]

[2] x = 0 から x = a までの面積を計算させる。

    

 このことから Sa の関数である。
 よって,SS (a) と書くことにする。

   

 例として,S (3) ,S (7) を計算させる。

    

[2]

 S (a) は,a の関数であることを慣例で,S (a) をS (x) で書くことを説明する。

    

 次に

[3] x = 1 から x = 3 までの面積を計算させる。

    

 例として,x = 1 から x = 5 までの面積を計算させる。
 x = 1 から x = 7 までの面積を計算させる。

[3]

[4] x = a から x = b までの面積を計算させる。

     

[4]

 ここで,x で微分すると,
 そこで, が何を表せているかを考えさせる。……少し時間を取る。

 より,S は, を積分することで求まる。x = a から x = b までの面積 S は,

    S = S (b) - S (a)   

 これを,上端 b,下端 a を書き入れて, と書き,a から b までの定積分という。
 計算方法として
  と表すので,
と説明する。

[5] 定積分の性質については

 

    を説明し,そこから

を説明する。

[5]

 次に定積分の計算を練習させ,面積の問題を説明する。

 
3.おわりに

 いきなり,「関数 f (x) の原始関数 F (x) の1つにおいて,x = a から x = b までの値の変化 F (b) - F (a) について考えてみよう。」といわれても,あまりピンと来ないのではないか。面積を求める説明の中に,もちろん

    も必要である。

 しかし,特に「数学 II 」だけで高校の数学を終わる生徒にとっては,具体的な面積を求める説明を利用した定積分の説明の方が,わかりやすいのではないか。
 定積分の計算方法については,わかりやすい定積分の説明の後に練習させればよいと思う。