授業実践記録
「新編数学 II 」第1章への取り組み
(名古屋)享栄学園高等学校
藤原基行
 
1.はじめに

 「新編数学 II 」第1章の主役は複素数の登場と,因数定理による高次方程式の解法ではないかと思う。
 「新数学 I 」では,2次方程式の解について2次関数のグラフを通し,x軸との共有点がない場合には,解のないことを想像させている。
 「新編数学 II 」第1章では,このスッキリしない暗部に対し,解を定め,さらに3次以上の方程式に対しても解法を明確にしてくれる。
 今回,中間テストまでの21時間を,以下のような,組立ての工夫をし,生徒の納得と,感動と充実,そして計算力向上を目指して,「新編数学 II 」第1章の授業を行った。
 
2.授業実践(普通科2年週4単位)

 実授業時間 4/12〜5/24 21時間

(1)第1,2時(復習その1,展開)
 「Focus Light 数学 I +A」の例題を利用し,少し忘れかけた展開の復習と定着の充実を図った。
 以下の問題を取り上げた。
 例題10,例題11,例題12,例題13
 本校では,1学年(総合コース)で,教科書は「新数学 I 」を使用しているため,1学年で扱わなかった問題もいくつかあり,ここで指導した。

(2)第3,4,5,6時(復習その2,因数分解)
 以下の問題を取り上げた。
 例題15,例題16,例題17,例題18,例題19,例題20,例題21,例題22,例題23
 やはり「新数学 I 」には登場しなかった内容が半分程あるが,普通科としてはぜひ学習しておいてほしい内容なので,ここで指導した。

(3)第7時(復習その3,√の計算)
 以下の問題を取り上げた。
 例題26,例題27,例題28,例題29,例題30
 特に例題29は,後から学ぶ,α,βの計算問題への準備として必要と考えた。

(4)第8時(さあ数学 II を学ぼう)
 教科書「新編数学 II 」P8〜10 整式の除法を指導し,P11からの分数式には,あえて入らず,学習した除法を使う剰余の定理へ進んだ。

(5)第9,10時(因数定理の登場だ)
 教科書P38〜40 剰余の定理から因数定理へ話を進めた。3乗公式や x2 の置き換えによらなくても因数分解ができることを,十分に時間を取って理解させた。一人ひとりに「3乗の因分が,自分で解けた」という充実感を与えるよう心がけた。ペースの早い生徒には傍用問題集「アベレージ数学 II 」P19,No42を行うよう指示し,各々のペースで演習をさせるようにした。

(6)第11時(高次方程式 その1)
 教科書P42例題17へ飛び,因数定理によって因数分解して,3次方程式の解が求められることを示した後,P42問38P43問題5−1(1)(2)を演習させた。ペースの早い生徒には「アベレージ数学 II 」P21,No47のうち(1)(2)(3)(6)(8)を指示した。(解が整数または分数で求められるもの)

(7)第12,13時(高次方程式 その2)
 「アベレージ数学 II 」No47(5)を前時の復習として取り上げ,(x+1)(x2−4x+2)=0を導き,因数分解できない場合は,解の公式を利用することを示した。次にNo47(4)を取り上げ(x+2)(x2x+2)=0を導いて,解の公式を使うと√の中が−7となり困ってしまうことを示した。
 そこで,教科書「新編数学 II 」P24を開き,「平方して−1になるような新しい数を1つ考えて,これをi と書き……」を紹介した。
  とすればよい,これによって解を表現できることを示した。
 iがどういう具体的な必要から生まれたかをぜひ感じてほしいと思い指導した。
 教科書P42練習4 P43問題5−1(3)(4)を演習させた後,P41例27,問36P42例題16,問37を順に解説し,演習させた。

(8)第14時(複素数の計算)
 教科書P25例9からP28問題までの計算問題を順に解説し,演習させた。

(9)第15時(複素数を使って)
 教科書P29例14からP31問23までの2次方程式を数の範囲を複素数まで拡げて解かせた。次にP32判別式を提示し,問24を演習させ,P33の解と係数の関係を紹介した。

(10)第16,17,18時(α+βとαβだ)
 教科書P33解と係数の関係を確認し,α+βとαβを利用するP33例19 問25 練習1を次に解説し演習させた。P34例題12から,P37問題4−2まで,比較的スローペースで授業展開し,生徒各々が,自身で解いて納得できるよう心がけて指導した。ペースの早い生徒には,「アベレージ数学 II 」P17,No35,36,38を指示し,演習させた。

(11)第19時(解の公式で因数分解)
 教科書P37問題4−1で2次方程式を解く問題を演習した後,P36の「解と因数分解の関係」を示し,公式を使って解を求め,それをはめ込んで因数分解する形を演習させた。

(12)第20時(総合問題だ)
 教科書P43問題5−2で複素数の範囲での因数分解を演習させた後,例題18に取りかかった。
 複素数の3乗計算や,実部・虚部から連立方程式を作って解く(P27例題11)の復習を含め,各々に計算を自身でさせるように指導した。

(13)第21時,(演習)
 教科書P43例題18を前時のノートをたどって,解法の流れを確認させ,問39に取り組ませた。次に,P44,P45の章末問題の演習に,各々のペースで取り組ませた。

 
3.おわりに

 1学年で扱っていない部分のフォローを含めると,中間テストまでに第1章を終えるのは時間的に無理と思った。そこで分数式から式と証明までをテスト後にまわし,扱い順序を入れ替えて授業を展開してみた。今後,テスト結果,生徒の理解,反応をよく検証した上で,さらに工夫を加え,よりわかりやすい授業をめざしていきたい。