授業実践記録
対数の指導法
−対数の性質および底の変換公式について−
兵庫県立宝塚北高等学校
山崎俊喜
 
1.はじめに

 数学の公式についてであるが,一般には文字の数式で書かれている。はじめて学ぶ生徒は,公式に具体的な数をあてはめて,慣れていくのであるが,うまくいかず苦手だと感じている生徒も多いように思う。
 私は極力、公式を文字で丸暗記するのではなく,具体的な数を連想させながら,イメージや図で理解させるよう努めている。だからといって全く文字を使っていないわけではない。
 数学は抽象的な学問だと言われる。しかし,抽象的であればあるほど定着しにくい。本質とは矛盾するが,具体性の高いもの,印象に残るものほど定着しやすいように思う。そこで,イメージを定着させるようさまざまな公式をあみだしてきた。
 これから述べる内容はその一部分である。
 
2.対数の定義について

 対数関数は指数関数の逆関数として定義される。

  am = M ならば m = loga M

 これについてであるが,次のような昔話をつくってみた。(ただし,話は未完成のままである。)

  a を親亀, M を子亀として,

「昔々あるところに,親亀と子亀が住んでいました。子亀はいつも親亀の背中に乗っていました。ある日,子亀が親亀に言いました。
 『お母さん,ぼくはいつもお母さんの背中にいてつまんないよ』
それを聞いた親亀は,次のように言いました。
 『それなら,お母さんの背中から降りていいよ』
 でも,親亀はとても心配になり,小さくなって,木の陰 (log)からそっと子亀を見守ることにしました。」

だから, a が小さくなっているんだよ。という感じで説明をした。話自体はとてもつまらないものではあるが,結構定着率がよい。
 そして,具体的な数として,32=9 ⇔ log3 9=2 をイメージさせると間違いが少ない。

 
3.対数の性質と底の変換
(ポロンポロンの公式)について

 対数の性質であるが,次のようなものがある。
 a > 0 , a ≠ 1 , M > 0 , N > 0 として

  (1)  loga MN = loga M + loga N
  (2)  loga = loga M ー loga N
  (3)  loga M r = r loga M

 底の変換公式として,a > 0 , b > 0 , c > 0 ,a ≠ 1 ,c ≠ 1 として

  loga b =

 が与えられているが,この公式と上の(3)を合わせて,次のような公式をつくった。

  loga n b m= loga b

 対数が an の形の場合は変換公式を用いてから計算するよりもスムーズにでき,定着がよいことがわかった。そして,具体例として

  log4 8 = log22 23 = log22=

 となることを示しておけば、十分である。
 そして、この性質を新たに公式として位置づけし、真数の肩からポロン,底の肩からポロンと落ちる様子から,ポロンポロンの公式と名付けた。
 狂言の話に蟹山伏というものがあり,そこの話の中で出てくる台詞の「ポロン,ポロン」がヒントにもなっている。
 実際の授業では,狂言風に「上からポロン,下からポロン」などと言いながら,矢印を交えながら説明している。退屈をさせないということと同時に,くだらないと思いながらでも,自然に頭に入ってしまうことを目標とした。成果もあり,対数の計算問題は意外と楽しく取り組んでもらえるように思う。

 
4.さいごに

 上の例はあくまでも一例である。その他いろいろな分野に変わった名前をつけ,図を交えながら公式の定着を図ることを目標としている。また、生徒の力量に合わせて,あくまで公式を文字で表さなかったりする場合もある(表す場合でも,最後のまとめとして用いる)。
 このような公式は,私が学生時代にお世話になった先生方が工夫されたものを参考にして,自分なりにアレンジしたものである(ものによってはそのまま使わせていただいているものもある)。
 新課程になり,計算力の低下が顕著になってきた現在,今後も生徒の定着を図るべく公式を生み出していきたいと考えている。