授業実践記録
場合の数の実践例
大阪府立長吉高等学校
藤井一正
 ある条件のもとで起こりうる場合を整理し,もれや重複のないようにその数を数え上げることを指導するのが「場合の数」の章である.その基本となる考えが和の法則,積の法則である.
 いろいろな場合の数を数えることは,日常でも大切なことであり,また,次章で学ぶ「確率」の計算の基礎としても大切である.

 身近な話題の中から,和の法則や積の法則を考えるものとして,取り組んでいただきたい.

(例1)自動券売機での切符購入を考えてみよう.

 「自動券売機で470円を支払うには,各硬貨を何枚ずつ使えばよいだろうか?」
 わざわざ,10円硬貨を47枚投入することは皆無であろう.
(ある一定の枚数を投入した段階で,自動券売機が受け付けてくれないかもしれません.また,そのような設定をしている自動券売機が多いと聞いている.)
 はじめからお釣りをもらうことを前提にして,千円札や500円硬貨を使用してお釣りをもらう,というようにすることも多いだろう.しかし,お釣りをもらうことで,財布が,もとの状態より重くなってしまう.
 消費税の導入後,計算が苦手・邪魔くさいとのことで,機械任せ・お店任せ(笑)で支払う人が多いようだ.

 少しだけ条件を付けて,「10円,50円,100円の硬貨を使って,自動券売機で470円を支払うには,各硬貨を何枚ずつ使えばよいだろうか.だだし,使用する硬貨は10枚以下とする.」(使用しない種類の硬貨があってもかまわない)を考えてみよう.

 まず,最初に思い浮かぶのが,「100円を4枚と,50円を1枚と,10円を2枚使用」である.でも,10円がいっぱいあるからといって,100円を4枚と,10円を7枚使用では・・・・合計11枚となってしまう.
 100円を3枚の場合は,
 100円を2枚の場合は,
 100円を1枚の場合は,
 100円を0枚の場合は,・・・・・
といろいろな場合がありそうだ.

(解答例)
 10円,50円,100円の硬貨をそれぞれX 枚,Y 枚,Z 枚とすると
    10X+50Y+100Z =470
    ∴ X+5Y+10Z =47 ………[1]
 また,   XYZ ≦10  ………[2]

 この [1] ,[2] を満たすXYZの整数解を求める.
 [1] より 10Z <47から,
        0≦Z ≦4
 そこで,Z について次のように分ける.
    Z =4のとき,X+5Y =7,
      [2] を満たすのは,Y =1,X =2の場合
    Z =3のとき,X+5Y =17,
      [2] を満たすのは,Y =3,X ・/i>2の場合
    Z =2のとき,X+5Y =27,
      [2] を満たすのは,Y =5,X =2の場合
    Z =1のとき,X+5Y =37,
      [2] を満たすのは,Y =7,X =2の場合
    Z =0のとき,X+5Y =47,
      [2] を満たさないから,適さない.
10円
50円
100円
2枚
1枚
4枚
2枚
3枚
3枚
2枚
5枚
2枚
2枚
7枚
1枚


[類題] 
 たいていの場合,自動券売機では,15枚ぐらいまでの投入は可能なようなので,次の問題を考えてみよう.

「10円,50円,100円の3種類の硬貨をどれも使って,自動券売機で580円を支払うには,各硬貨を何枚ずつ使えばよいだろうか.だだし,使用する硬貨は15枚以下とする.」

(例2)新聞や雑誌購入を考えてみよう.

 「新聞が5種類,週刊誌が7種類,月刊誌が4種類ある.その各種のものをそれぞれ1つずつ選びたいと思う.何通りの選び方があるだろうか?」
 日常生活では,食堂のメニュー,服装の選択,乗り物を乗り継いで旅行するなど,選択をようする場面がいくつか挙げられる.何種類かのものの中から,それぞれいくつかを選びたい場合を考えさせることは指導としてとても有効であろう.
 さらに,まとめの段階では,「〜または〜」と言い換えられる場合には「和の法則」,「〜して〜」と言い換えられる場合には「積の法則」というように一般化して使えるようにしておきたい.