授業実践記録
「数と式」における展開例
東京都立小金井北高等学校
内田  清
 「数と式」においての式の加減乗除や因数分解の指導は,単なる計算練習に終始してしまいがちである。
 ここでは,式の加減乗除や因数分解における文字式のよさが実感できる教材を考えてみたい。
 たとえば,  x2−2x+2=(x−1)2+1
は,変数の数を一つに減らすことによって,x の値の変化による式の増減の状態を見やすいものにしている。
 まず,数学における文字式のよさについては,
    [1] 数の代表としての文字式
    [2] 事実を一般化するための文字式
    [3] 式を変形するときの文字式
    [4] 式の結果を解釈するときの文字式

などが考えられる。
 これらの文字式のよさを実感させるような教材の例をあげてみよう。

例1 地球とたすき

 半径 r =6400kmの地球の赤道に沿って隙間のないようにたすきをかける。
 そして,そのたすきを10m長くして等間隔に隙間ができるようにしてその地球に巻くと地球との間にどのくらいの間隔があくか。
 計算をしてみよう。間隔をhとすると,
     2πr +h)=2πr +10
 これより, h=10÷2π≒1.6m
 なんと,大人が立てるくらいの隙間ができることがわかる。
 しかも,これは,地球の半径によらないことがわかる。
 つまり,ピンポン玉でも地球でも,太陽でも同じことがいえる。

例2 奇数と偶数

 n を自然数(整数)とするとき,
   連続する自然数は,・・・,n−1,nn+1,・・・
   奇数は,2n−1,または,2n+1
   偶数は,2n
の形に表すことができる。こうすることによって,連続する自然数,奇数,偶数を文字式で表すことができる。
 [1] 展開式
       (2n−1)(2n+1)=4n2−1
   は,  (2n−1)(2n+1)+1=(2n2
   と変形することによって,連続する奇数の積に1を加えた数は,偶数の2乗になることがわかる。
 [2]  奇数の2乗 1,9,25,49,81,・・・
   から1を引くと,0,8,24,48,80,・・・
   となって,いずれも8の倍数になっている。
    このことは,次の式で示すことができる。
       (2n−1)2−1=4nn−1)  

例3 整数10n+5の2乗

   152=225, 252=625,  352=1225, 452=2025,・・・・・・
のように,下一桁が5である整数を2乗すると,下二桁が25になっているらしいことが予想される。
 このことを,証明するには次のようにすればよい。
 下一桁が5である整数は,10n+5と表せるから,それを2乗すると,

(10n+5)2 =100n2+100n+25
=100nn +1)+25

            となって,確かに,下二桁は25になっていることがわかる。
 それに,その2乗の簡単な仕方まで教えてくれる。
 つまり, 952=9・10・100+25=9025
      1052=10・11・100+25=11025 

 今度は,図形の例をあげてみよう。  

例4 二等辺三角形の底辺上の任意の点から二辺におろした垂線の長さの和は一定である。

 この二等辺三角形ABCの面積をS とすると,S は定数で,面積の関係から,
   △ABC=△ABD+△ACD
     2Saxay     
 これより, xy=2S÷a となり,垂線の和は一定であることがわかる。
 これが,正三角形であれば,同様にして,「正三角形の内部の任意の点から,3辺におろした垂線の長さの和は一定である」








例5 右図のように,AB,AC,CBを直径とする3つの円の周の長さをそれぞれ,12
とし,AC=a,CB=b とすると,
   πa +b),1πa2=πb
だから,
      12
となる。
 次に,根号を含む式の例を考えてみよう。
 これらの円の面積をそれぞれ,S,S1,S2とすると,
      
という関係が成り立つ。
 以上の関係は,円が3つの場合でも成り立っていることが,文字式を用いれば簡単に示すことができる。

例6 右図のように,半径ab の2つの円が外接している。その共通接線を引いて,その接点をA,Bとすると,
      AB=2
である。このとき,ABと2つの円の接する
円の半径を c とすると,
     AB=AC+CB
より,次の式が得られる。
     
で割ると,
     
となる。さらに円を外接する円を作っていくと面白い関係式が得られる。