生物授業実践記録
身近な材料で作る簡易生物模型
−視覚に訴える授業の展開−
群馬県立渋川女子高等学校
片山 豪
 
1.はじめに

  理科教材を専門で扱っている業者の模型は巧妙にできていて、生徒の理解度を高めてくれる。しかし、こういった模型は高価なものも多く、必ずしも勤務している高校にあるわけではない。また、購入している高校に勤務していても、その模型のない高校に転勤することもある。そこで、私が今まで使用してきた身近な材料で作る簡易生物模型の作製方法と授業実践例を紹介する。
 
2.身近な材料で作る簡易生物模型の作製と授業実践例

(1)家庭用ラップの芯で作る染色体模型(2n=4の場合)
図1 家庭用ラップの芯で作製した染色体模型
[1] 単元 生物 I  第1部 生物体の構造と機能 第3章 細胞の増殖と生物体の構造 第1節 細胞分裂
 第2部 生命の連続性 第1章 生殖 第2節 減数分裂

[2] 材料 家庭用ラップの芯 4本、トイレットペーパーの芯 4本、色画用紙(赤、青)、糊

[3] 作製方法
 家庭用ラップの芯2本、トイレットペーパーの芯2本の周りに赤の色画用紙、残りの芯の周りに青の色画用紙を糊で貼る。

[4] 授業実践例
  下図の体細胞分裂と減数分裂を理解させるために家庭用ラップの芯で作る染色体模型を用いた。


  図2 体細胞分裂と減数分裂

ア 体細胞分裂
生徒8人を選び、図1の染色体模型を生徒に1本ずつ持たせる。同形同大同色の染色体を持った生徒のうち、どちらか1人を教壇に立たせる。これが、母細胞の染色体(2n=4)であることをクラス全員に告げる。(図3)
間期の時に何が起こるか生徒に質問する。DNAの複製及び染色体の複製が起こることが確認できたら、教壇に上がっていない生徒を教壇に上げ染色分体を作らせる。(図4)
前期、中期、後期、終期と生徒を動かしながら、染色体の動きを見ている生徒に確認させる。
生徒を教壇の左右に分け、細胞が分裂したことを告げる。そしてできた娘細胞は母細胞と染色体数及びDNA量ともに同様な染色体を持っていることも確認させる。(図5)
図3 元の染色体(母細胞) 図4 染色体の複製  図5 分裂後の染色体(娘細胞)

イ 減数分裂
体細胞分裂と同様、生徒8人を選び、母細胞の染色体(2n=4)を示す。そして、間期に染色体の複製が起こることを確認後、残りの生徒を使い染色分体も形成させる。(図6,7)
減数分裂第一分裂前期の時に何が起こるか生徒に質問する。相同染色体の対合が起こり二価染色体を形成することが確認できたら、生徒に二価染色体を作らせる。(図8)
第一分裂前期、中期、後期、終期と生徒を動かしながら、染色体の動きを見ている生徒に体細胞分裂の違いを確認させる。特に後期の時の染色体の分離は相同染色体の分離であることを強調する。これにより、染色体数が半数になることも確認させる。(図9)
第一分裂終了後、間期を経ずに第二分裂に入ることを確認させる。そして、第二分裂前期、中期、後期、終期と生徒を動かしながら、染色体の動きを見ている生徒に確認させる。これにより、母細胞より染色体数及びDNA量ともに半数の細胞が二種類できることを理解させる。(図9,10)
再度、第一分裂中期に戻り、後期での二価染色体の分配により、別の細胞を作ることができることも確認させる。第二分裂後にはさっきとは別の染色体数及びDNA量が半数の細胞が二種類できることを理解させる。これにより、母細胞の染色体が2n=4である時に合計四種類の生殖細胞が形成されることを理解させる。(染色体の乗換えが起こらない場合)(図11,12)
図6 元の染色体(母細胞) 図7 染色体の複製  図8 二価染色体
図9 第二分裂前期 図10 生殖細胞(二種類) 図11 第二分裂前期 図12 生殖細胞(二種類)

(2)発泡スチロールの球で作るイモリの原基分布図模型

[1] 単元 生物 I  第2部 生殖と発生 第3章 発生のしくみ B胚の予定運命と決定

[2] 材料 発泡スチロールの球、色マジック

[3] 作製方法
 発泡スチロールの球に予定運命を色マジックで色分けし、原基分布図を作製する。

[4] 授業実践例
 図14の模型を生徒に作製させる。または、作製したものを授業中に説明した後に回して観察させる。(図14)

図13 イモリの原基分布図 図14 発泡スチロールの球で作製したイモリの原基分布図模型

(3)赤色鉛筆とマジックペンで作る筋原繊維模型

[1] 単元 生物 I  第3部 環境と動物の反応 第1章 刺激の受容と反応 第3節 効果器 A筋肉

[2] 材料 赤色鉛筆 18本、マジックペン3本、輪ゴム(大) 3本

[3] 作製方法
 赤色鉛筆9本、マジック2本にはさみ、輪ゴムで巻く。同様にしてその隣に赤色鉛筆9本、マジック1本にはさみ、輪ゴムで巻く。

[4] 授業実践例
図15で筋原繊維の基本的な構造を教える。
赤色鉛筆がアクチンフィラメント、マジックペンがミオシンフィラメントであることを定義した後、ミオシンフィラメントがアクチンフィラメントを滑り込ませるように引き寄せることで、収縮が起こることを理解させる。ミオシンフィラメントが太いのでその部分が暗帯になることも確認させる。図16の模型を生徒に作製させ、弛緩収縮を体験させる。または、演示して説明する。

弛緩時
↓↑
収縮時

図15 骨格筋の筋収縮 図16 赤色鉛筆とマジックペンで作製した筋原繊維模型

(4)ペンシルバルーンで作る気孔模型

図17 気孔の開閉の仕組み
図18 ペンシルバルーンで作製した気孔模型
[1] 単元 生物 I  第6部 環境と植物の反応 第2章 植物の反応と調節 第1節 成長の調節 D成長と運動のしくみ

[2] 材料 ペンシルバルーン、セロテープ

[3] 作製方法
 ペンシルバルーンをふくらまし、真ん中をねじり二つ折りにする。両方の内側にセロテープを貼り付ける。

[4] 授業実践例
 孔辺細胞の内側の細胞壁が側より厚くなっているので、広がりにくいことを表すためにセロテープを貼ったことを生徒に告げる。吸水して細胞がふくらむと湾曲して気孔が開くことを演示する。または、生徒に作製させ、気孔の開閉を体験させる。(図18)

Eメール:Katayama-takeshi@staff.gsn.ed.jp